【ゲームのお仕事!】アカツキゲームス アートディレクター 関勝仁インタビュー

アカツキゲームズ 関さんインタビュー

株式会社アカツキゲームスで『八月のシンデレラナイン』のアートディレクターとして活躍してきた、関勝仁さんにインタビュー!美術大学を志したきっかけ、画家業を経てゲーム会社に就職した経緯や、立ち上げからディレクション・コンセプトアートの制作をしているRPG『HYKE: Northern Light(s)』についてお伺いしました。

 

 

アカツキゲームズ アート/イラストディレクター・コンセプトアーティスト 関勝仁

 

プロフィール:
アートディレクター/コンセプトアーティスト 関 勝仁

 

1985年生まれ。
武蔵野美術大学油絵科を卒業後、ゲームグラフィック制作会社を経てアカツキゲームスに入社。
『八月のシンデレラナイン』『HYKE:Northern Light(s)』など様々なタイトルで、 アート/イラストディレクター・コンセプトアーティストとして活躍中。


アートの世界観を作り、皆に橋渡しをしていく

 

―お仕事の内容を教えてください。

 

現在担当するゲームタイトルでは、グラフィック全般におけるアートディレクション、開発期のコンセプトアートの作成を行っています。

通常はアートディレクションとコンセプトアートは別の方が担当することが多いのですが、「HYKE:Northern Light(s)」(以降HYKE)では企画の立ち上げから関わることができたため、自分自身の希望で両方を担当しています。

 

NERU_stage-concept_fifty-one

フィフティワンのストーリーコンセプト

 

―それぞれの詳細とこだわりも教えていただけますか?

 

アートディレクターはゲームという総合体験をユーザーの皆さんに提供するうえで、グラフィックの統一感や品質を保つための仕事です。

アートというある種答えのない主観に基づいた世界観や方向性を、分かりやすく開発スタッフやユーザーの皆さんに伝える橋渡しをする役割だと考えています。

そして、コンセプトアートはそのタイトルで表現したい世界観を絵にする仕事です。
開発メンバーをワクワクさせることで、一緒に制作していくためのエネルギーにしてもらえるようなイラストを生み出すことを意識して作っています。

 

エンジニア職や企画職などの開発スタッフのみんなからコメントをもらえたり、描き上げたものを発端に、世界観やゲーム性の議論が進んだときはとてもやりがいを感じます。

また、デザイン職の仲間から褒められたときは個人的にも嬉しいです!

 

 

一度筆を折った先でしがみ付いたゲーム業界への道

 

―「絵を描く」こととの出会いやきっかけを教えてください。

 

中学校2~3年生のころ、図書館でウジェーヌ・ドラクロワの画集に出会い「自分もこんな絵を描きたい」と強い衝動が湧いたことがきっかけです。

高校から美術部にも入り、美大進学を目指しました。

両親からの反対もありましたが、画塾費用を自らのバイト代で賄うなど行動を示すことで、説得することができました。

 

画塾時代は試験対策も苦にならないくらい楽しく取り組めたのですが、入学後からは「自分自身の表現」が見つからず、かなり苦しみました。

毎日「これが本当に自分の描きたい絵なのか?」と自問自答する葛藤の日々でしたね。

そしてやっと自分なりの答えが見えてきても、今度は「自分はこの力で周りと勝負しなければいけないのか」と、別の苦しみにぶち当たりました。

自分のできることが分かって来たときに、初めて戦うことの怖さを感じるものかもしれません。

 

NERU_jeep

ハイクの乗り物初期コンセプト

 

―ゲーム業界を志したときのエピソードを教えてください。

 

大学卒業後は子供絵画教室の講師など、アルバイトをしながら個展を開催する画家として活動をしていたのですが、非常にお金がかかることもあり、25歳ごろに将来への不安に駆られ、一度筆を折る決断をしました。

ただ、辞めたら辞めたで今度は絵から離れることが猛烈に寂しくなってしまって…。

ポジティブな理由でなく申し訳ないのですが、その寂しさから画家ではなくとも絵に関わる仕事をしようと考え、藁にも縋る思いでゲームグラフィックの制作会社に入社しました。

 

―ゲームの仕事で苦労したことや印象深いエピソードはありますか?

 

明確に求められるモノがない画家の世界とは違い、求められるモノが既にあるので「自分にもできるのではないか」と甘く考えていたのですが、入社してすぐに打ち砕かれました。
「求められているモノ」をまず掴むこと、それをしっかりと描けること。

言葉にするとシンプルですが、これが本当にできなくて打ちのめされましたね。

どんな形であれ、絵を作る仕事の難しさは今でも感じています。

 

 

チーム制作って面白い!

 

―アカツキゲームスに入社後のエピソードを教えてください。

 

ゲームグラフィック制作を続けていく中で、もっとユーザーの皆さんに近い環境でゲーム開発をしてみたいという思いが生まれ、それができそうだったアカツキゲームスに入社しました。

 

入社後の最初の担当は 「八月のシンデレラナイン」でした。

開発期のアートディレクションを担当させてもらった経験は今でも強く印象に残っています。
メンバーと毎日ディスカッションを重ねていく中で、各々が持つクリエイティブの種がどんどん練り上げられ、表現が突き詰められていくのを感じたとき、「チーム制作って面白い!」と思ったんです。

この経験は今でも創作の財産となっています。

 

現在開発しているHYKEの開発でも、アカツキゲームスや、ブラストエッジゲームズさん(開発会社さん)の仲間たちと、チームで協力してプロダクトを作り上げる過程からは、とても刺激をもらっています。

その環境を実現するには、クリエイター同士、年齢や経験ではなく、お互い刺激を与えあえる相手としてリスペクトを持つことが大切だと考えています。

思ったことを素直に伝える中で、ときには意見がぶつかることもあるのですが、そういったストレートに言い合えるチームのフラットさがアカツキゲームスの魅力です。

これができるのもコミュニケーションに時間というコストをしっかりかけ、オープンな社風を会社として醸成してくれていたおかげなんだと思います。

 

NERU_ノア_雪の平原

HYKE 雪の平原のコンセプトアート

 

 

大変さを押してでも、好きなことを仕事にできる幸せ

 

―アートディレクターやコンセプトアーティストとして活躍するために学生時代から意識できることはありますか?

 

気持ちの面では、まずはゲームが大好きであってほしいです。

ゲームという体験を通してユーザーの皆さんへ何を届けたいかという、クリエイター側の視点を持つためにも、好きだという気持ちが重要だと考えています。

 

そして、どんな環境でも表現をし続けることでしょうか。

悩みや不安も出てきますが、実はそれらが表現力を伸ばす原動力になっている事もあります。

時には「自分には才能がある!」と思い込むことも大切だと思います。実際には才能の有無はそこまで関係がなく、筆を走らせ続けないと進みたい道には進めません。

当時は若かったという部分もありますが、私が美大を志したきっかけもその思い込みからです。

 

―絵を描く仕事に就きたいと思っている学生へ、メッセージをお願いします。

 

私は一旦別の道に進みつつも、今こうやって絵を描く仕事ができている事を非常に幸せだと思っています。

表現することに対して相応の大変さはありますが、それを補って余りある楽しさがあります。

なので、臆せずにゲーム業界を目指すクリエイターが増えてくれたら嬉しいです。

 

それに加えて、デジタルが普及するにつれてクリエイティブが必要な環境が増えていますし、表現をする能力が仕事になる世の中になってきていると思います。

なんで20年前はこうじゃなかったんだろうと思うくらいです。

 

 

商業イラストで欠かせないツール

 

―CLIP STUDIO PAINT(クリスタ)の利用シーンを教えてください。

 

業務としては 2019 年ごろから使用しています。

今のタイトルですと、コンセプトアートを描く際のほぼ全ての工程、映像用の絵コンテ、ドット絵の作画と幅広く使用しています。

 

特に複数ページを同時に編集できることで絵コンテの効率が各段に上がっており、重宝しています。

一緒に開発しているアーティストの皆さんもCLIP STUDIO PAINT(クリスタ)ユーザーであったため、線の太さや塗りの表現などの仕様を決める際に環境構築がすんなりといきました。

 

NERU_PV絵コンテ

HYKE 映像用の絵コンテ

 

―お気に入りの機能を教えてください。

 

「複数レイヤーの同時編集」はイラストを仕上げるにあたって欠かせない機能だなと思っています。

制作スピードや効率が段違いです!

これを知ったときは鼻血が出るくらい興奮しました(笑)

また、ポーズや構図の参考にできる3Dデッサン人形が、3Dの知識がなくても直感的に使えることは非常に効率が良いです。

 

関さんおすすめ!複数レイヤーの同時編集機能

 

[レイヤー]パレットのレイヤー描画可・不可欄にチェックを入れることで、複数レイヤーを選択した状態になります。
レイヤー順が連続してなくても、任意のレイヤーを選んでまとめて編集できます!

たとえば、以下のようなことができます。
・選択している複数のレイヤーに[ゆがみ]ツールが使用できる
・選択している複数のレイヤーに選択範囲を作成して同時に移動・変形できる
・選択している複数のレイヤーの描画を貫通して消せる

 

3Dデッサン人形の使い方については、 こちらの記事もご覧ください。

 

3Dデッサン人形で脱スランプ!ポーズ素材を使って色んなポーズを描こう

 

HYKE キービジュアル

HYKE:Northern Light(s)

■対応OS(プラットフォーム):未定
■ジャンル:2D見下ろし型アクションRPG
■価格:未定
■公式サイト: https://hyke-northernlights.com/
■公式X(旧Twitter): https://x.com/project_HYKE
■企画・プロデュース:アカツキゲームス
■開発:ブラストエッジゲームズ
■販売:アカツキゲームス、Aniplex
■コピーライト:©Aniplex Inc. Akatsuki Games Inc.

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