【ゲームのお仕事!】アカツキゲームス コンセプトアーティスト ザビインタビュー
グラフィック制作会社を経てアカツキゲームスに入社し、『HYKE: Northern Light(s)』などで2Dイラストレーター・コンセプトアーティストとして活躍するザビさんにインタビュー!イラストとコンセプトアートの違いや、ゲーム業界に転職したきっかけ、プロとしてのイラスト制作の注意点についてお話を伺いました。
目次
プロフィール:ザビ
1996年生まれ。グラフィック制作会社を経て、アカツキゲームスに入社。
『HYKE: Northern Light(s)』(以降HYKE)など様々なタイトルで、2Dイラストレーター・コンセプトアーティストとして活躍中。
X(旧Twitter):@ZabiMasurao
イラストレーターはワクワク作りのチャンピオン!
HYKEのコンセプトアート フィフティワンの街
―お仕事の内容を教えてください
現在は新規開発中のタイトルで2Dイラストレーターを担当しています。
得意分野は背景美術ですが、背景以外でもモンスターや武器デザインをすることもあり、2Dイラストを幅広く描いています。
イラストレーターの仕事を一言で表すと、高揚感を先導するワクワク作りのチャンピオンだと思っています。
ワクワクを形にすることが得意なのがクリエイターであり、イラストレーターだと思っています。
―イラストレーターとコンセプトアーティストそれぞれの特徴を教えてください
まず、共通点は絵を届ける相手がいることを意識して描く点です。
自分の絵が各場面で必要とされている理由を考えることが大事だと思います。
異なる点は、イラストレーターは「描く過程よりも結果」を求められるため、完成形のイラストに対する評価が重要視されます。
コンセプトアートは逆で、「結果より完成までの過程が大切」だと思っています。
チームでゲームアートの世界観を作り上げるには、表現を突き詰めて完成させる前に、絵の方向性を皆に示し、一旦そこで考えていく必要があります。
あえてディティールの少ない絵にすることで制作メンバーのイメージが膨らむようにし、連想ゲームのように新しいイメージに繋げ、話を膨らませていきやすいよう意識しています。
なので、時にはイラストの完成度やクオリティよりスピードが重視されることもありますね。
採用されないアイディアも出てきますが、「その方向ではない」という新たな情報を手に入れられたとプラス思考に捉えています。
進路を明確化したデジタルアートとの出会い
―いつからゲーム業界への進路を意識し始めましたか?
絵が得意な父の影響で物心ついたときから絵は身近にあり、友達が外で遊んでいる間もお絵描きしている子供でした。
その分勉強には苦手意識があり、絵以外で進学することに不安を覚えていました。
家族と話し合う中で、「絵を仕事にする」という約束で美大への進学をOKしてもらえましたね。
もともとゲーム好きというのもあり、ゲーム業界の就職を志していましたが、当時はまだ自分の絵が仕事としてどんな役に立つのか具体的なイメージなど全くできておらず…。
そんな自分がコンセプトアーティストを意識し始めたのは、某有名ダークファンタジーゲームとの出会いです。
デジタルならではの表現で描き上げられたコンセプトアートに衝撃を受け、「デジタルを勉強しなければ!」と。
ここが明確にゲーム系のデジタルアートへ進む転機となっています。
デジタルへの移行は少し手間取りましたが、アナログも最初から上手く描けたわけではないですし、「描き続けていれば上手くなっていくだろう」、とあまり気にせず取り組みました。
HYKEのコンセプトアート フィフティワン倉庫内
―ゲーム業界に入ってからのエピソードを教えてください
新卒ではアカツキゲームスとは別の制作会社に入社しました。
背景やコンセプトアートを担当していましたが、担当タイトルが変わったタイミングで絵コンテを描く事になり苦しんだのは今でもよく覚えています。
今まで描いてきたイラストと違い、絵コンテには時間軸があり、動きを伝えるものを作らなければならず、人生で一番勉強しながら取り組んだ日々だったと思います。
アカツキゲームスとの出会いは、絵コンテの仕事を始めてから1年後くらいの時です。
ふと自分が培ってきた背景の技術はこのままだとどうなっていくのだろうかと考えがよぎり、当時登録していたポートフォリオサイトでスカウトをいただきました。
背景イラスト制作に戻る形になったのですが、絵コンテを描いた経験は無駄になっていないと感じています。
時間軸についての知識がついたことで、1枚のイラストを描く際にもその前後を考えられるようになり、表現力の幅が格段に上がりました。
絵コンテをやりきったからこそ、身についたことだと思います。
開発初期から関われるからこそ、自由な提案もできる
HYKEのコンセプトアート 荒野のキャンプ地
―アカツキゲームスで印象的だったお仕事を教えてください
『HYKE: Northern Light(s)』でのコンセプトアートは特に思い入れ深いです。
まだメインイメージ以外が定まっていないタイミングで参加し、アートディレクターやシナリオライターと打ち合わせを重ねながらコンセプトアートを作り上げていきました。
ドットイラストが『HYKE』の特徴となるのですが、リアルタッチのコンセプトアートを元に作っています。
詳細に描き込むことができるリアルタッチイラストの強味を活かし、1枚のアートから様々なドットイラストが表現できるように、モニュメントを描き込む等、複数のワクワクポイントを散りばめて作りました。
―アカツキゲームスに所属したからこそできたことはありますか?
アカツキゲームスの制作環境は、各々が意見を出しあって、より良いものや好きなものを作っていこうという姿勢があり非常に居心地が良いです。
なにか発言をした際にもポジティブに受け止めてくれますし、だからこそ臆することなく自分の意見を発言できます。
手をあげればチャレンジさせてもらえる環境で、現在の担当タイトルでも色々挑戦させてもらっています。
上司から「挑戦を恐れずに未知の世界へ先頭で飛び込んでゆくファーストペンギンになってほしい」と言われていて、未経験なことも前向きに楽しんでチャレンジしてきた姿勢を評価してもらえていると感じます。
―「ご自身の画風」と「仕事として求められるイラスト」にギャップを感じたことはありますか?
めちゃくちゃあります!
ゲームアートは自分一人の力だけでなく、チームで作り上げています。
そのため、作家としての個性が薄くなってしまう難しさはありますね。
自分の場合は、仕事では、ユーザーの皆さんから求められるものを描くことは、自身の表現の引き出しを増やすことにつながると思っています。
一方、プライベートでは、思いっきり自分自身の絵を披露することで、それぞれの場所を使い分けています。
なので、自分の癖を抑えたものを求められた時も、「描ける絵の幅を広げるチャンス」と捉えて、前向きな気持ちで取り組んでいます。
長くイラストを描き続けるために
HYKEのコンセプトアート フィフティワン空港跡地
―イラストレーターとして活躍するにあたって役に立った経験があれば教えてください
創作イベントへの参加でしょうか。
自分と同じく創作をしている人とコミュニケーションを取り、好きなことを語り合える相手と出会え、心の拠り所にもできますしモチベーションにも繋がると感じています。
流行っている作品やイラストのトレンド感も知ることができます。
イベントへの参加が難しい場合はインターネットに投稿するのも良いと思います。
イラストの仕事は見られることが大切なので、耐性をつけるためにもクリエイターとしての自分をネット上で表現する経験はやっておいて損はないかと思います。
―「絵を描く(関わる)」仕事に就きたい高校生(学生)に、メッセージをお願いします
チャレンジ精神を持ってどんなものでも描いてみてほしいです。
上手く描けなくとも、誰かに何かを言われたとしても、気にせずに見返すような気持ちでやってほしいです。
それに、いろんなものが描けるとその分多くの打席に立てるので、お仕事としても活躍の場が広がると思います。
また、色々なものに興味を持つことで、一つの物事に依存しすぎず長く描き続けられるのではと思っています。
お仕事で絵を描くということは、ある程度長くやっていくことだと思うので、一つのことに疲れたら、興味がある別のことを試してみたり、自分のケアを大切にしてあげてほしいです。
多くのクリエイターが活用している魅力
―CLIP STUDIO PAINT(クリスタ)はどんな場面でご利用いただいているのでしょうか?
全てです!
企画段階のアイディア出しから、ラフ、清書まで欲しい機能が揃っていると思います。
―いつ頃からご利用をいただいていますでしょうか?
大学入学後、2016年頃でしょうか。
自分の周りでもCLIP STUDIO PAINT(クリスタ)ユーザーも多くて、かつ、好きな絵師や商業イラストでも活用されている部分が魅力で選びました。
―お気に入りの機能があれば、教えてください
良く使うブラシは[Gペン]です。
はっきりした線が描けるので重宝しています。
あとは[ゆがみ]ツールでしょうか、完成したあとも顔や等身のバランスを微調整ができるのがいいなと思っています。
アナログでは絶対できない表現だと思います!
[ゆがみ]ツールの詳しい使い方はこちらで紹介しています。
ゆがみサブツールでイラストを簡単補正
https://tips.clip-studio.com/ja-jp/articles/5811
[Gペン]を始めとしたブラシの使い方は、こちらの記事をご覧ください。
HYKE: Northern Light(s)
■対応OS(プラットフォーム):未定
■ジャンル:2D見下ろし型アクションRPG
■価格:未定
■公式サイト:https://hyke-northernlights.com/
■公式X(旧Twitter):https://x.com/project_HYKE
■企画・プロデュース会社:アカツキゲームス
■開発会社:ブラストエッジゲームズ
■販売:アカツキゲームス、Aniplex
■コピーライト:©Aniplex Inc. Akatsuki Games Inc.