アオリ構図とライティングで視線誘導!【線画+ブラシ塗りイラストメイキング】
人気イラストレーター・村カルキさんによる、青色をテーマにしたイラストの描き方講座です。ブラシ塗りで色のコントラストをはっきりと出すコツや、パースを意識したアオリ構図での視線誘導のコツを解説しています。人気のイラスト技法書『7色のテーマイラストで学ぶ 塗りテクニック 人物から花・空・水・星まで』からの特別掲載。
イラストで色の統一感が出なかったり、背景をうまく描けなかったりと悩むことがありますよね。
そんなときは、まずテーマカラーを決めることをおすすめします!
この記事では、村カルキさんの著書『7色のテーマイラストで学ぶ 塗りテクニック 人物から花・空・水・星まで』から、青をテーマにしたメイキングを紹介します。
1.ラフ~線画~下塗り
今回のイラストでは線画を描いて、水彩塗りで進めていきます。
水彩塗りの場合は、ラフの段階でしっかり色までつけておきましょう。
カラーラフの作成
サイバーっぽいイラストを目指したかったので、夜の街にしました。
あと、これまでフカンのイラストが多かったので(※1)、下から見上げるアオリ構図にしています。
※1『7色のテーマイラストで学ぶ 塗りテクニック 人物から花・空・水・星まで』に掲載されているほかのイラスト
ラフの試行錯誤
ラフ完成まで、いろいろ試行錯誤しています。
アオリにしようということだけ決まっていたので、まずは人体を描いてから服を着せるようにします。
線画
線画は[濃い水彩]ツールを使っています。背景は直接描いていくので、キャラクターのみ線画を描きます。
※今回線画で使用している[濃い水彩]ツールは、下記のCLIP STUDIO ASSETSからダウンロードできます。
https://assets.clip-studio.com/ja-jp/detail?id=1842019
下塗り
パーツごとにレイヤーを分けて、下塗りしました。
今回は、通常の光源で塗ってあとから効果で色を変えるのではなく、最初から夜の街のキャラクターという前提で肌色をおいています。
ラフのときに色まで塗っているので、その色をスポイトするだけです。
2.肌・目・髪を塗る
グラデーションをかける
それぞれのパーツで、下塗りレイヤーの上に新規レイヤーを作り、グラデーションを入れています。下のほうを明るく、上のほうを濃くしています。
肌を塗る
肌にカゲをつけます。グラデーションのレイヤーの上に新規レイヤーを作り、合成モード[乗算]にしてカゲをつけます。(ほかのパーツも同様です)。
目の周り、髪の落ちカゲなどをはっきりと塗っていきます。
下から暗めのグラデをつけて、ハイライトを入れました。
目を塗る
目の周りは、赤いラインで縁取りしています。
白目が真っ白にならないように気を付けましょう。
アイラインの中に黄色を加えて、より目を目立たせます。
髪を塗る
髪を塗っていきます。
顔を明るく見せたいので、顔にかかる髪はエアブラシで明るくします。
カゲを塗っていきます。
ふんわりした髪の空気感を出したかったので、髪の流れに沿いつつ、明るい房と暗い房を意識しています。
ハイライトを入れて完成です。フードの落ちカゲも濃いめに入れています。
3.パーカーとズボンを塗る
続いて服を塗っていきます。全体的にモノトーンの服装なので、グラデを活用しながら、単調にならないようにカゲにメリハリをつけていきます。
パーカーを塗る
パーカーを塗ります。一段階目のカゲを付けます。
服のシワを意識しながら、カゲを追加します。
カゲの中にも明るい色を入れて質感を表現したり、ハイライトを追加します。
ズボンと靴を塗る
ズボンと靴を塗ります。ズボンは質感を出すように、明るい箇所と暗い箇所がはっきりと分かれるように塗りました。
カゲの中に明るい色を入れることでセルフ水彩境界みたいなものを作っています。
POINT
水彩境界とは、水彩画で色がにじんだり重なったりする際にできる色の境目のことです。
この境目がくっきりしている部分があると、全体の印象をより強くする効果があります。
モノトーンの服装なので、ハイライトは強めに入れています。
靴にジャケットのインナーと同じ色を使って、衣装に統一感を出しています。
4.アクセサリーを塗る
シルバーアクセサリーを塗っていきます。
金属の質感が出せるように、コントラスト強めに塗っていくのがポイントです。
濃いめにカゲをつけていきます。
※質感別のカゲの塗り方については書籍で詳しく解説されています。
ハイライトも濃いめにつけます。
金属の質感の出し方
金属の質感の出し方の詳細については、こちらをご覧ください。
5.ジャケットを塗る
アウターのジャケットを塗っていきます。
表と裏で生地が違う感じを出しつつ、テクスチャで模様をつけます。
まずは一段階目のカゲをつけます。シワがわかるように細かくつけています。
ハイライトを入れます。光を反射するように、ジャケットの形に合わせたハイライトになっています。
カゲがきつくなったので、ジャケットの下のほうに明るいグラデを入れて空気感を出しています。
今回ジャケットの柄に使うテクスチャは、私が過去に撮った街中の写真になります。今回はこの写真をたくさん使って絵を描いていきます。
レイヤー構成はこんな感じです。右袖と左袖は別々にテクスチャを貼るようにしています。
ベタっと貼ってしまうと服のシワに合わなかったりするので気をつけましょう。
テクスチャをグレーに変更してから、ジャケットの下塗りレイヤーにクリッピングして、合成モード[オーバーレイ]に変換します。
そのあと不透明度を46%まで落としました。
同じテクスチャでも、違う部分を使ったり、角度を変えるだけでも違った模様にできます。
ハイライトを入れたところにまで模様がついてしまったので、改めてハイライトを入れ直します。
上から再度カゲをつけます。
塗りこみすぎに注意!
人物の完成です。
背景を細かく描くときは、キャラの密度(装飾など)をたくさんつけずにシンプルにすることでキャラと背景で密度差を出し、絵の見やすさと、キャラと背景の差別化を図ります。
6.フェンスを描く
人物が塗り終わったら、いよいよ背景になります。まずは、少年が座っているフェンスを描きます。一見難しそうに見えますが、コピペを駆使しながら、あまり労力のかからないように描いていきたいと思います。
フェンスの柵は、直線ツールを使います。人工物を描くときは直線ツールを多用します。
まずは直線ツールで白いラインを描きます。若干の遠近感が出るように、左側を太くしています。
白い帯の下にグレーの帯を直線ツールで描き足します。これで棒ができました。
同様に、縦にも帯を作っていきます。どちらも直線ツールです。
パースはあくまで目安であり、絶対ではないと考えており、パッと見おかしくなければOKと思っているので、私は基本的にほぼパースはとりません。
感覚パースでいけるという人もいれば、きちっとパースをとりたいという人もいますので、自分のやりやすい方法で背景を描きましょう。
なんとなくこんな感じのパースです(厳密に描いたらもっと違うかもしれませんが)。
パースはとても重要な要素ですが、パースだけではいい絵はできません。
魅力的なライティングや構図、色合い、あらゆる部分がすべてあわさっていい絵になります。
学生さんから背景が描けないというご相談をよく受けますが、ほとんどがパースがわからなすぎて挫折するというものです。
いきなり背景を描いてパースのかっこいい絵を描くのはほぼほぼ不可能と言っていいでしょう。
パースは目安程度に考えて、ライティングや色合いなど違う部分も視野に入れながら描くことをおススメします。
フェンスの網目部分を描いていきます。
資料を見ながら形をとります。引きで見るとそこまで見えない部分なので、厳密にきれいには描いていません。
フェンス自体にも後々カゲをつけるので、最終的にはきれいに描いたときと変わらない仕上がりになります。
線をつけていきます。これが網の1セットになります。
下にコピペしていきます。つなぎ部分だけは手描きで調整していきます。
色のまとめ方
今回のイラストのテーマカラーは青色です。
紫色よりの青色、もしくはその中間の青色を使っています。
全体を暗めの青色でまとめ、アクセントにターコイズブルーをキャラの周りやキャラの視線誘導の部分に入れて、キャラを目立たせたり、夜景の光や看板で黄色や橙色、赤色などを入れて、夜景のかっこよさと美しさを表現しました。
キャラに向かう建物に派手な色を入れて視覚誘導しています。(赤色の矢印)
キャラ以外にも看板にターコイズブルーを入れていますが、これはキャラへの視線誘導ができる看板であるということもあり、わざと派手な色にしています。
ターコイズブルーをアクセントに使わない場合、キャラが沈んでしまったのがわかると思います。
が背景に埋もれてしまうのがわかると思います。このように、アクセントカラーを使わない場合と比較すると、キャラの周りやキャラの視線誘導できる部分にビビッドな色を置いて目立たせる方法は有効です。
構図について
キャラクター(キャラ)を目立たせるために構図を工夫しています。色の使い方でキャラを目立たせるのは大事ですが、それだけではなく、構図でも視線誘導の効果を巧みに使ってみましょう。
タバコの煙がS字を描いて、通過線上のキャラに視線誘導しています。
人物の上方にはビルをあえて描かず空間を作ることで、目線がキャラにいくようにしています。
完成イラスト
※本記事は『7色のテーマイラストで学ぶ 塗りテクニック 人物から花・空・水・星まで』(ホビージャパン)からの特別抜粋記事です。