【ゲームのお仕事！】f4samuraiリードイラストレーター　鮠水ちかインタビュー

 

 

 

 

 

自分の素直な気持ちを原動力に乗り越えられた

 

―どんなお仕事をされていますか？

 

f4samuraiで開発しているタイトルのリードイラストレーターを担当しています。
具体的な業務内容としてカードイラストのコンセプト設定、キャラクター設定・デザイン、カードイラストの制作・仕上げ、その他に監修・管理といったリーダー業務があります。
現在のプロジェクトでは、クオリティと統一感を重視してイラストを多く描く必要があるため、チーム内で分業しています。
チームのメンバーが作業でつまずくことがないように、道しるべとなるような制作ルールを作ることもあります。
同作のイラスト制作をチームとして担当しているので、関わる方々はもちろん、ユーザーの方から求められることをアウトプットできるよう尽力しています。

現在の担当業務を紹介しましたが、イラストレーターとして最初から難なく良い結果を残してきた、というわけではありません。
むしろ順風満帆とは真逆で、 この業界に足を踏み入れてから挫折を何度も味わいました。

 

 

―どんな挫折があったのでしょうか？

 

最初の3年くらいは何を描いてもリテイクの嵐でした。

当時は自分の絵柄を捨てきれないところがあり……。

 

例えば女の子を描く場合、身体を薄く描いたほうがかわいくなるのですが、筋肉質な骨格で描いてしまい、先輩からよく「女の子のイラストがかわいくない」と指摘され、度々心が折れていました。

何度も悩んでイラストレーターを諦めようと苦しむ日々でした。

 

そこで、自分の絵柄を一度捨て、人気があるイラストのトレースを繰り返し練習することで癖がとれていきました。

そのあとは幅広い画風にも対応できるようになったと感じています。

 

どんなオーダーにも対応できるようになってきたかも、と感じ始めたのは入社から5年経ったころです。

 

―数年間の苦しい時期を乗り越えることができた“原動力”は何でしたか？

 

とにかく「褒められる絵を描きたい」という気持ちが強くありました。

もっと上手い人がたくさんいる中で、それを言えず遠慮してしまう時期がありましたが、その気持ちをバネとして持ち続けたことで、どんなに辛いことがあっても踏ん張れたと思います。

 

実際に「このイラストいいですね」とプロデューサーや社外の方から褒めていただいたときは飛び上がるほど嬉しくて、「もっと褒めていただけるように頑張ろう」と奮起できました。

自分らしい絵を描くことと、会社で求められるイラストレーターであることの差に悩み辛かった時期もありました。

 

しかし、「まずは1年、頑張ろう」と細かく期間を区切りながら自分を奮い立たせているうちに、少しずつ経験値が上がり辛い状況から抜け出すことができました。

 

 

キャラクターが生きている瞬間を映し出す

 

―「絵を描く仕事の喜び」は何ですか？

 

ありきたりですが、ユーザーの皆さまが自分のイラストを手に取ってくださり、喜んでいる姿を見ることです。
さらに、「鮠水ちか」という名前を出して活動できるようになったときは嬉しかったですね。
また、「オルタンシア・サーガ」で自身が手掛けたロイ・バッシュロというキャラクターをグッズ化していただいたときはとても感慨深かったですし、TVアニメにも同キャラクターを出していただきました。
サイン会で「鮠水さんの描いたカードを全部持っています！」「鮠水さんが描いたキャラクターだから好きになりました」など、来てくださった方から直接あたたかい声をいただいたことも、モチベーションアップに繋がりました。
「絵を描く仕事」で喜びを感じられるようになったのは、制作に関わるすべての方に支えられたこと、自分の絵を指摘してもらえる環境があったこと、そして作品を愛してくださるユーザーの皆さまのおかげだと強く感じています。

 

↑TVアニメ「オルタンシア・サーガ」のエンドカードとして描いたロイ・バッシュロ

 

―お仕事で大切にしていることを教えてください。

 

イラストでは「絵を描こう」とするのではなく「キャラクターが生きている瞬間をスクリーンに映し出す」という感覚を持つようにしています。
キャラクターがそこに立っていると感じられる臨場感を生み出すことに繋がるので大切にしている感覚です。

 

キャラクターデザインを担当する際はキャラ設定や仕様書をもとに、そのキャラらしさを考えていきます。
以前、「マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝」に登場する双子の天音姉妹をデザインしました。
その際、衣装デザインを姉妹で共通させて、そっくりでありながら2人の個性が出るように細かな差を出しました。

 

月夜はセクシーでおしとやかな印象を心がけ、長いスカートから見える脚や、束ねた髪が美しく広がって靡くようなデザインにすることでお姉さんらしく見えるように、月咲はアクティブな印象になるようにスカートを短くし、束ねた髪がツインテール風になるようシルエットを工夫し、元気な妹に見えるようにデザインしました。

 

 

↑天音姉妹　左：天音月夜　右：天音月咲

 

また、リーダーとしては制作過程のなかでチームメンバーを置いていかないよう、認識を合わせながら進めていくことを重要視しています。
強い責任感を持ち深く考えて仕事に取り組んでいるメンバーばかりなので、1つのテーマに対し全く違った意見が生じることもあります。
そんなときは、それぞれの意見を尊重してカードイラストとして実現できるように調整し、一番良く見えるようにまとめています。

さらに、口頭説明だけではなく、時には実際にポーズを取ったり、一緒に描いたりもしながら、丁寧にすり合わせていくようにしています。
特にカードイラスト進行前の認識合わせはその後の作業に影響するため、どんなに忙しくても必ず打ち合わせの時間を取るよう心がけています。
日頃からチーム内でコミュニケーションを取り、誰かが迷ったときに声をかけやすい環境をメンバーと共に作ることで、チームとしてのアウトプットを高めています。

 

 

自分と向き合いながら絵を描き続ける道へ

 

―学生時代の話も伺いたいです。美大へ進学した理由を教えてください。

 

絵を描く業界に身を置きたいとずっと考えていました。
それ以外考えられなかったので、迷わず美術大学を受験しました。

大学では1年目に絵画コースを専攻。平面画は趣味でもずっと描いていたので考え方や描き方が凝り固まってくると思い、2年生のタイミングで彫刻にチャレンジしました。
彫刻の授業はとても勉強になりました！
360度の角度で考える立体を理解することで、どんな角度からの構図もイメージできるようになりました。
このとき学んだ知識は現在の仕事に相当活きています。

現在学生である皆さんは絵に触れる機会が多く、描く技術がかなり備わっていると感じています。
より早く現場で活躍するイラストレーターになるには、自分が就職先で活躍することをイメージトレーニングしてみたり、“人に求めてもらえる絵”を考えて描く練習をしたりすると良いと思います。

 

―絵の進路を目指す学生へメッセージをお願いします。

 

僭越ながら、「あなたは絶対に活躍できます！」と伝えたいです。

私は20代のすべてをf4samuraiのイラストレーターとして過ごしてきましたが、前述の通りずっと挫折続きでした。
そんなとき、先輩や同僚は悩み苦しんでいた私が孤立しない環境を作ってくれました。
また、課題をしっかり指摘したうえでどう克服していくか親身になって教えてくれました。

社内だけでなく、一緒にお仕事をしてくださる皆さまのおかけで成長し、今は楽しく働いています。
困難な状況に陥ることもあるかもしれませんが、周りにサポートしてくれる方が必ずいるはずです。
常に焦らず冷静に自己分析をして、自分ができることとできないことを知り対策していけば大丈夫です。

 

 

CLIP STUDIO PAINT(クリスタ）なら誰でも絵が描ける

 

―CLIP STUDIO PAINT（クリスタ）はいつごろから使われていますか？

 

2013年ごろから使用しています。
f4samuraiのカードイラスト制作のほとんどはCLIP STUDIO PAINTを使って作業しています。
このアプリさえあれば構想から完成まで対応できます。

ブラシは[水多め]ブラシが大好きです！
このためだけに CLIPSTUDIO PAINTを使う価値があると思っています！

 

 

―制作現場で役に立っている機能を教えてください。

 

3Dツールは、パースから人物の角度まで何にでも使えて、1枚のカードイラストへの指示がわかりやすく決まるので重宝しています。
これがあったら誰でも絵がうまく描けるのでは……と思っています。

キャララフやパースの確認、小物の3Dオブジェクトも使っていて、腕の角度や、持っているアイテムの角度などのフィードバック時に使用しています。