【ゲームのお仕事!】SSS by applibot イラストレーター タイキインタビュー
株式会社スクウェア・エニックスを経て、SSS by applibotでゲームのメインビジュアルやキャラクターデザインの分野で活躍しているクリエイター、タイキさんにインタビュー!現在の活動に至るまでの経緯、プロとしてイラストを描くときに大切にしていること、絵の上達に必要な心構えについてお伺いしました。
キャラクター専門からゲームアート全般を手掛けるデザイナーへ
―どんなお仕事をされていますか?
主にコンシューマーゲームやソーシャルゲームのメインビジュアルやイラストワークス、キャラクターデザインを担当しています。
ソーシャルゲームは既にあるコンセプトをもとにしたキャラクターデザインや立ち絵イラストが中心ですが、コンシューマーゲームは、開発初期のコンセプトワークスから携わる場面も多いです。
そのゲームの世界観を決めるコンセプトアート、キャラクターデザイン、ガジェットデザインやバックグラフィックデザインなど、自らの手で全般的に作っていくことも稀にあります。
制作過程 ©SSS by Applibot, Inc.
―作品ごとに作風やテイストを合わせて描く必要があるかと思いますが、元々どんなものでも描くことがお好きだったんですか?
そんなことはなく、キャラ絵ばかりでそんなにパターンも多くない人間でした。
スクウェア・エニックス入社時は社内中の制作ラインから来る依頼に対応する、なんでも屋のような部署に配属となったのですが、即戦力とは言い難く…。
「引き出しを増やそう」といつも指導されていましたね。
デジタルこそ自分の「武器」
―いつ頃から絵を描くことを仕事にしたいと思われたのでしょうか。
物心つく前から絵は描いていましたが、ゲームばかりやっている学生時代だったので、家族にはすごく心配されていました。
中学の進路相談で両親から「絵が得意なら、なんでもいいからそれを仕事にすれば」と言われたことが、絵の仕事を意識した最初のきっかけです。
ただ、中学生の自分にとっては「イラストレーター」がどんなことをしているのか分からず、働くイメージをほとんど持てていませんでした。
そんな状態で進路に困っていたところ、高校3年生の2学期くらいにスクウェア・エニックスのインターンシップ制度を見かけて応募しました。
4ヶ月程度の期間中に課題を与えられて、アドバイスをいただけるという内容です。
大学生や専門学校生が対象でしたが、デジタルイラストやお絵描きチャット掲示板で交流し、互いにイラストを見せ合う経験を積んでいたので、可能性を感じて飛び込みました。
―専門的な進学を経ずにお仕事の世界へ進むことに不安はありませんでしたか?
中学校3年生の時にパソコンを手に入れてから、僕の創作体験はほぼデジタルイラストでした。
自分の作風として戦える武器がデジタルであり、ありがたいことにインターネット上で既に評価を頂けていたことが、1つの自信になっていたと思います。
とはいえ、自分の絵で食べていける自信があったかと言われると微妙で、あまり深く考えていなかったのが正直なところです(笑)。
制作過程 ©SSS by Applibot, Inc.
相手を思いやりながら自分の想いも伝える
―研修室時代の課題訓練はどのようなものをされていたのでしょうか。
最初はなんでもいいから描いて、それを説明するというものでした。
描きたいことが何で、それを表現できているか、何度もフィードバックと修正を繰り返しました。
当初の自分は感覚で描いていたので、うまく説明ができずによく指導されていました。
「その意図は伝わらない」「描けていない」など、厳しいアドバイスをいただく中でデザインワークやユーザーに伝える方法を教え込まれました。
―これまでのお仕事で最も「今の自分に活きている」と感じる経験は何でしょうか。
スクウェア・エニックスを退社後、イラストレーターhukeさん(https://twitter.com/hukeweb)のアシスタントとして活動していた時代です。
hukeさんの下ではクリエイターとして大切なことをたくさん学ばせてもらいました。
絵の描き方はもちろん、イラストレーターとしての立ち振る舞いなど、今の働き方に繋がっていることも多いです。
その中でも特に印象に残っているのは、サービス精神の大切さを教えていただいたことです。
学生時代とスクウェア・エニックス時代はどこか斜に構えていた部分もあり、「絵で媚びる」ことが苦手だったんです。
そんな自分でしたが、相手が何を欲しているか考え、その要素を付け加える視点をhukeさんから学びました。
―「自分が描きたいもの」が定まっていったのはいつごろでしょうか。
まだやりきったと感じたことはなく、もう少し良くすることができたのではと日々反省しています。
ただ、5年前にSSSに入社し、展示会企画に携わってから自分の中で「自分が描きたいもの」をすごく意識するようになりました。
イラストレーターさんとお話する機会があまりなかったのですが、想像以上にみなさん好き放題な表現で自由に取り組まれていることが刺激になりました。
自分の学生時代も自由にものづくりをしていたし、そのくらいのほうが素直に表現を出力できるのではと考えるようになりました。
自分が描きたいものとクライアントへの思いやりはバランスが難しいですが、両立や棲み分けをうまくできれば良い方向へ進むと思っています。
SSS by applibot オフィス
伝統産業とデジタルイラストのコラボレーションを実現
―SSSとの出会いはどのようなものでしたか。
きっかけは同じくSSSに所属するセブンゼル(https://twitter.com/Sevnzel)さんです。
SSSへお誘いいただいた当時はフリーとしてやっていこうと決意していたので、実はお断りしようと思っていました。
ですが、その打ち合わせの場にセブンゼルさんがいらっしゃったことで、ぐっと興味関心を持ちました。
セブンゼルさんとは在社時代から個人的に交流があり、自分にとっては学生時代から憧れていたイラストレーターなんです。その方が参加されるチームなら、と。
さらに詳しく聞くと、米山舞さんやPALOW.さんなど才能溢れるイラストレーターが多く集まることを知り、一緒に切磋琢磨していきたいという気持ちで参加を決めました。
―今回の『Re\arise』において自分の中で作りたかったもの、一貫しているテーマはありますか?
『Re\arise』はグループ展なので、それぞれが自分の独自性を出せるテーマを決めています。
僕はUVプリントにホワイトインクを積層させて、凹凸を出す技術を利用してアナログっぽい質感と古典絵画を意識したモダナイズ的な表現を選択しました。
今回の京都展では、京都の伝統産業事業者「楽芸工房」という箔屋さんとコラボレーションさせていただいています。
300年以上前に開発された引箔という技術で、複数種類の金属箔を重ねて焼いたりいろんな加工をすると綺麗な斑模様になるんです。
それを支持体にして、UVプリントで印刷をしています。
支持体にするのがもったいないほど下地の箔が美しいので、これをうまく魅せられないか工夫しました。ぜひ見ていただきたいです。
展覧会出展作品
固定観念を捨て、広い視野で自由な表現を
展覧会出展作品
―学生時代から出来る絵の上達方法などあれば教えてください。
自分が表現したいことをちゃんと考え続けることと、固定観念や思い込みを捨てることです。
学生時代には思い込みから表現の幅を狭めてしまったことが多々あったので、常にやりたい表現に挑戦していって良いと感じます。
他には3Dなどイラスト以外の技術に触れることも有用だと思います。これは僕も最近気づいたところです。
―絵の仕事に挑む際に大切にされていることはありますか?
ユーザーやクライアントに対して思いやる気持ちを大切にしています。
仕事なので当然つらいこともありますが、自分が作品を作り世に出すことによって、何かを感じ取ってくれる、何かを得ようとしてくれる人がいることを思い浮かべることで、つらいシーンでも最後まで乗り切れると感じています。
―いつ頃からCLIP STUDIO PAINTを活用されていましたか?
2017年頃からですね。それまでは他のツールを活用していたのですが、CLIP STUDIO PAINTを使用してみたらペンなどの描き味がより自分好みでした。
それからは、ほとんどの作業をCLIP STUDIO PAINTで完結させています。
―お気に入りの機能はありますか?
デコレーションブラシは今回の展示会でも大活躍でした。
特に模様表現が多かったので、どう構成を作るか考えるのに活用しています。
他にも編集中のファイルに別のファイルを読み込んで配置できるファイルオブジェクト機能も嬉しいですね。
参照元を修正すれば読み込み先にも反映されるので、ファイルの切り貼りをする必要がなくなります。
最近はキャラクターの表情差分などを描く時に役立っています。
プロフィール:タイキ
1988年生まれ。
2007-2009スクウェア・エニックスにてアートデザイナーとして勤務後、2010年-フリーランスとして活動開始。2019年クリエイターチーム SSS by applibotに加入。
代表作:ロードオブヴァーミリオンRe:2 Ⅲ Ⅳ メインビジュアル メインキャラクターデザイン、fate/grand order 一部サーヴァント デザイン・イラスト等
Twitter:https://twitter.com/taiki99
■開催概要
・展示会:Re\arise #1.5 EXHIBITION KYOTO
・開催日程:2023年2月18日(土)~4月2日(日) 10:00-20:00
・開催場所:ホテル アンテルーム 京都
(〒150-8044 京都府京都市南区東九条明田町7番)
・入場料:無料 ※予約不要
▼Re\arise #1.5 EXHIBITION KYOTO特設サイト
https://rearise.sss.applibot.co.jp/1_5kyoto/
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