覚えておきたい「涙」の描き方!アニメ塗り&厚塗りで感情を表現しよう
キャラクターの感情表現に欠かせない「涙」。涙は、高ぶった感情を、はっきりと絵として見せることができる要素です。上手く描ければ、感情に揺れるキャラの印象をより強めることができるでしょう。では涙はどんな線で、どんな色で、どんな光と影にすれば、上手に描けるのでしょうか? 今回は、カラーイラストでの涙の描き方を解説します。
1.基本的な液体の描き方
涙は液体です。
涙を描くには、まず液体の描き方を知っておくとよいです。
液体を描ければ、涙だけでなく「汗」もリアルに描くことができるようになるでしょう。
では液体はどんなふうに描くとよいのでしょうか。
色をつけるときは、どんなふうに光を反射し、どんな影をつくるのでしょうか。
簡単な図で解説してみます。
水滴は底の方が広く、まんじゅうのような形をしています。
これが自然な水滴の基本の形になります。輪郭はなめらかな曲線で描きます。
そして、色をつけるときのポイントは、以下のふたつです。
- ハイライトの周りに暗い部分を作る(光源側を暗くする)。
- 光源の反対側にある影の中に、明るい部分を作る(光源の反対側に明るい部分を作る)。
光を透過しない物体であれば、直接光が当たる光源側が明るくなり、反対側に影ができます。
しかし光を透過する液体の場合、透過した光が地面などに当たり、周りを明るくするために、光源の反対側が明るくなります。
光源側を少し暗くし、光源の反対側は液体を通った光が反射して明るくなっているようなイメージで描くとよいです。
これが液体を描くときの基本です。
2.涙のメイキング-線画-
ここからは、涙を流すキャラクターのイラストができるまでを解説します。
まずはキャラの線画からみていきましょう。
①目
うるんだ瞳にするため、ゆらゆらと揺れた線で瞳のりんかくを描きます。
今回はこのように線画で瞳を歪ませましたが、少し大げさな表現ではあるので、作風によっては普通に瞳を描くのでもかまいません。
涙で瞳がにじんだ感じをだすには、着彩でぼかすのもよいと思います。
②眉
眉は眉尻を下げて困ったような表情にします。
逆に、眉尻を上げると、強がっているような印象になります。
眉は表情が決まりやすいパーツなので、表現したい感情に合わせて注意深く線を決めるとよいでしょう。
③頬
頬などに赤みの線を描きます。
泣くと肌が赤くなる状態を表現しています。肌の赤みについては後ほどまた解説します。
これで線画は完了です!これに着彩して涙のイラストを仕上げていきます。
3.涙のメイキング-アニメ塗り-
ここからは、カラーで涙を塗っていきます。
まずは、アニメっぽいフラットな塗りで涙を表現します!
①涙の描き込み
着彩が済んだ顔に涙を描き込んでいきます。
まずは解説をわかりやすくするために黒い線画で描きました。
目頭、目じりに涙が溜まっているように描きます。
「1.基本的な液体の描き方」で解説したのは1滴の水滴でしたが、ここでは複数の「ねばりのある」水滴が「連なった」ように描きます。
また、顔を立体的にとらえ、頬の盛り上がりを意識しながら涙が流れる線を描きます。
涙がスタートする場所は下まぶたの端のほうからとイメージします。
加えて、あごにこぼれ落ちる涙を描くと、動きが出ます。
②涙の線の色を白に変更
白い線で描くと透明感を出しやすいです。
③涙の下塗り
肌の影と同じ色を使い、涙で濡れた部分を塗ります。
これが涙のベースの色になります。
少し暗い色を使うことで、白いりんかく線やこの後に入れるハイライトとのコントラストが強くなり、透明感のある涙になります。
④影の塗り
影を塗ります。肌の影より少しだけ暗い色を使います。
涙のりんかくを強調するようなイメージです。
⑤ハイライト
ハイライトを描きます。
楕円形に描き、ぷっくりとした球面を表現します。
ハイライトを入れると、ぐっと透明感が増したような印象になります。
⑥ハイライト周りの影
ハイライト周りの影を暗く塗ります。
基本的な液体の描き方で解説したように、このハイライトそばの暗い部分が、液体らしく見せるポイントです。
アニメ塗りで描く涙の完成です!
アニメ塗りはすっきりした印象に見せたいときに向いています。
作例ではやや大げさにデフォルメして涙を描いていますが、アニメ塗りだとくどくならないように思います。
4.涙のメイキング-厚塗り-
次は、少し違う塗り方で解説します。濃淡のある厚塗り風に描きます。
①シルエットを描く
涙のシルエットを描きます。
※作例のように下のレイヤーが透けて見えるようにするには[乗算]や[焼き込み(リニア)]などの合成モードのレイヤーに塗ります。
②消しゴムで削る
エッジがボケた[消しゴム]で、ところどころ薄くし、濃淡を出します。
③フチを白く塗る
フチを明るくするように白で塗ります。
少しボケのあるブラシで塗るか、塗ったあとでボケの強い[消しゴム]で端を消してぼかします。
④りんかくを描く
立体感を出したいときは、暗い色でりんかくを強調するように影を入れます。
⑤影を塗る
少し[消しゴム]で消して、影の一部を明るくします。
基本的な液体の描き方でも解説した、光が透過され影に明るい部分ができる状態を表現するとリアルな液体の感じが出ます。
⑥反射色を描き足す
ピンクや青、黄色などをボケたブラシで描き加えます。
光が屈折してさまざまな色がうっすら見えるようなイメージです。
作例では描き加えた色と下地を自然になじませたいので、上に合成モード[オーバーレイ]のレイヤーのレイヤーを作成して塗っています。
⑦ハイライトを描く
白でハイライトを描きます。目の付近は小さく細かく入れると綺麗です。
これで厚塗り風の涙の完成です!
アニメ塗りの涙と比べると、濃淡があるためか、より感情の高ぶりが感じられるような出来になったのではないでしょうか。
表現したいテーマや作風に合わせて、表現を変えていくとよいと思います。
5.目の周辺
人は涙が出るとき、涙腺のあたりの肌が赤くなります。
これは、涙を流すために血流が増加して血管が拡張するためだそうです。
涙の材料が血液であることを思うと、なるほどという感じがします。
イラストでは、頬が赤くなるように塗ります。
マンガ・イラストの記号的な表現として頬に線を描いて顔が赤くなることを表すことができます。
それに加え、涙腺のある目じりの周りや、鼻の上あたりも赤く描いています。
涙が出そうなとき、鼻がツンとする感じがするものですが、鼻のあたりには涙道という、涙が通る道があるのだそうです。
肌の赤みを表現するために、ピンク系の色を描画色にし、ブラシは、エアブラシのようなボケの強いものを使います。
完成しました!
6.おまけ-エフェクトやおすすめのブラシ-
最後に涙を描くときに使えるエフェクトや、ブラシを紹介します。
■エフェクト
涙を感動的な美しいものとして表現する場合、光を強調するグロー(輝き)のエフェクトを使ってもよいでしょう。
CLIP STUDIO PAINTにある[覆い焼き(発光)]や[加算]、Photoshopの[覆い焼きカラー]など、光を強調しやすいレイヤーのモードを使って、[エアブラシ]ツールなどのボケの強いブラシで明るい色を乗せることで、ハイライトの光を強調できます。
グロー効果について詳しくはこちらの記事もご覧ください。
簡単にイラストをランクアップ!ぼかしを使った仕上げ技[グロー効果]
■ブラシ
今回の作例のように描く場合は、下記のようなブラシがおすすめです。
CLIP STUDIO PAINTにプリインストールされているブラシで紹介します。
■[ペン]ツール→[カブラペン]
均一に塗りたいときに使います。ここでは作例に使った[カブラペン]を挙げましたが、[ペン]ツールであれば[Gペン]や[丸ペン]でも問題ありません。
■[消しゴム]→[軟らかめ]
塗った部分をぼんやりと消したり、薄くしたりするのに使います。
■[色混ぜ]ツール→[ぼかし]
色の境界をぼかしたいときに使います。
■[エアブラシ]ツール→[柔らか]
肌の赤みには、ぼんやりと塗ることができるブラシが向いています。
ブラシ設定について詳しくはこちらの記事もご覧ください。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今回は、涙の描き方を解説させていただきました。
涙がうまく描けると、キャラクターの感情を、印象強く表現できると思います。
皆さまのイラスト制作の一助になれば幸いです。
(制作:株式会社サイドランチ)
(イラスト:山田しぶ)