艶のある白髪の塗り方【厚塗りキャラクターメイキング】
イラストレーター・神慶(じんけい)さんによる、白髪の描き方メイキングです!陰影のつけ方や透け感、頭の形を意識した髪の毛の描き方など、白髪が映える塗りのテクニックを、CLIP STUDIO PAINT(クリスタ)を使って紹介します。 人気のイラスト技法書『神慶がしっかり教える「厚塗り」の秘訣』からの特別掲載です。
白髪は、繊細なグラデーションや陰影の描き込みを入念に行なうことによって、髪の艶が表現されます。
納得がいく質感となるまで、しつこく描き込みましょう!
本記事は『神慶がしっかり教える「厚塗り」の秘訣』(SBクリエイティブ刊)からの特別抜粋記事です。
※講座内に登場する「厚塗り平筆」は神慶さんが作成したカスタムブラシです。書籍を購入するとダウンロードできます。
1.髪型のイメージを固める
レイヤー結合前の着彩は、ざっくりと影を描き込みながら、髪の細部の形状のイメージを固める作業です。
レイヤー結合後の加筆でほぼ塗りつぶしてしまうので、細かく考えずに全体感優先で筆を動かしましょう。
①照明の設計からざっくり影を入れる
線画の下に作成した「髪_下塗り」レイヤーの上に、「髪_影1」レイヤーを作成し、[下のレイヤーでクリッピング]します。
[厚塗り平筆]で、ざっくり大きな影を描き込みます。影やハイライトの形を整えたいときは、透明色にしたペンやブラシで塗りを削ります。
下絵では正面から強い光を当てた照明設計にしていましたが、より自然な印象になるように、画面左上斜めからの照明に変更して光も弱めました。
②大きな房から落ちる影を描く
さらに「髪_影2」レイヤーを作成し、[下のレイヤーでクリッピング]します。
工程1で塗った影色よりも明度を下げた色を使い、大きな毛束同士の重なり部分から落ちる濃い影を[ペン]ツール→[丸ペン]で描き足します。
▽加筆した部分を強調
③房ごとの立体感を出す
クリッピングした「髪_影3」レイヤーを作成します。
[丸ペン]でつむじ部分など、細かい毛の房が落とす影を描き込み、髪に立体感を出します。
大きな影は透明色にした[エアブラシ(柔らか)]でなぞり、グラデーションを作ります。
▽加筆した部分を強調
④背景色と同化しないように輪郭を強調する
クリッピングした「髪_影4」レイヤーを作成し、[丸ペン]で髪の輪郭部分に濃い影を描き込みます。
これは写実的な描写というより、髪の輪郭の色がグレーの背景に溶け込んでしまわないようにするための、一種のデフォルメです。
もし背景が黒系の色合いならば、逆に輪郭を明るく(白く)します。
▽加筆した部分を強調
2.加筆によって髪型を具体化する
他のパーツの着彩を進めた後、人物の作業レイヤーを結合します(「人物_結合1」レイヤー)。
ここまでの描き込みをガイドに、[スポイト]ツールで中間色を取りながら丹念に髪を加筆していきます。
①これまでの塗りをつぶすように、ディテールを描き足す
影を加筆する前に「人物_結合1」レイヤー上で[ゆがみ]ツールを使用して、髪の両サイドのボリュームを少しだけ削りました。
修正前と修正後の画像を重ねて、やっとわかるくらいの小さな修正です。
シルエットの微調整を終えたら、クリッピングした[髪_加筆1]レイヤーを作成します。
[デッサン鉛筆]でタッチを残しながら、影やハイライトをよりディテールアップします。
※[デッサン鉛筆]はこちらからダウンロードできます。
②流れの異なる房を加え、髪の存在感と立体感を増す
さらにクリッピングした「髪_加筆2」レイヤーを作成、ブラシサイズを小さくした [丸ペン]を使い、より細かな加筆をします。
また、つむじから伸びる、全体の毛の流れからそれた房も描き足しました。
髪の毛すべてが綺麗に流れに沿っていると、見る人の視線が引っかかる部分がなく、せっかく描き込んだ髪が目立たないため、流れの異なる房をアクセントにしています。
また、つむじを描き込んで立体感を出すことでも髪を強調しました。
この後、衣服などを描き込み再び人物の作業レイヤーを結合します(「人物_結合2」レイヤー)。
3.メガネの上の前髪を描く
「人物_結合2」レイヤーの上に「メガネ」フォルダーを作成し、メガネを描き足しました。
さらにその「メガネ」フォルダーの上に「前髪」フォルダーを作成して、メガネの上にかかる前髪を加筆します。
①不透明度を調整し、前髪に透け感を出す
「前髪」フォルダー内に「前髪1」レイヤーを作成し、[丸ペン]でメガネの下に隠れてしまった髪をなぞるように前髪を加筆します。
描画色は、すでに塗った髪の色から[スポイト]ツールで抽出したものを使います。
描き終えたら、レイヤーの不透明度を85%に下げ、髪の透け感を表現します。
②透け感にムラを作り、自然な前髪を表現する
「前髪1」レイヤーの上に「前髪2」レイヤーを作成、[丸ペン]でさらに房を加筆します。
(「前髪1」レイヤーで描画した部分以外にも加筆するため、クリッピングはしません)。
この「前髪2」レイヤーは不透明度を調整しません。透けない房と透ける房を作ることで房ごとの毛量の違いを表現し、自然な前髪にします。
③前髪から落ちる影を描く
「前髪_影」レイヤーを作成し、加筆した前髪から顔やメガネ、レンズに落ちる影を[丸ペン]で描き加えます。
描画色は、顔やメガネ、レンズの影から[スポイト]ツールで抽出しました。
下の図は、慶太(メイキングで登場している神慶さんのオリジナルキャラクター)の髪型の構造を示したものです。人の髪はつむじを起点に前髪、横髪、後ろ髪の3つに分割できます。
慶太はシンプルな髪型で、カバーイラストも正面からの構図ですので、髪の構造図を準備する必要はあまりありません。
しかし複雑な髪型やアングルでイラストを描く場合は、こうした図を用意すると迷いにくくできます。▽慶太の髪の構造図(斜め俯瞰)
▽慶太の髪の構造図(側面)
4.入念に形を整えていく
①髪のシルエットを調整する
髪のボリュームが少し多いと感じたので、頭のシルエットを調整します。
「人物_結合2」レイヤーを複製し、「人物_変形・加筆」レイヤーを作成します。
レイヤーを複製するのは、修正前と修正後を手軽に見比べられるようにするためです。
「人物_変形・加筆」レイヤーで[投げなわ選択]ツールを使い髪のシルエットを選択し、[変形]→[自由変形]で少し小さくしました。
▽ 変形前(黄でマーキングした部分)と変形後を重ねた図
②細かなハイライトを根気よく描き込み、明暗にメリハリを作る
「人物_変形・加筆」レイヤーの上に[髪_加筆3]レイヤーを作成します(クリッピングはしません)。
ここから先の加筆は、根気の必要な作業となります。自分が満足いくまで、ひたすら細かい毛の影やハイライトを加筆します。
明暗のコントラストが弱くなっていたので、特にハイライトを集中して描き込みます。
髪以外のパーツの着彩の場合、合成モード[オーバーレイ]のレイヤーなどを重ねてから[エアブラシ(柔らか)]を使うことで、面で大きく明暗を作ります。
しかし髪の場合は、細い毛が寄り集まった繊細な質感を表現したいので、描画色を白にした[丸ペン]で細かくハイライトを描き込みます。
③遊び毛を加筆して、髪のリアリティを出す
「髪_加筆4」レイヤーを作成します(こちらもクリッピングはしません)。最後に遊び毛(髪の流れからそれた毛)を加筆します。
工程6で加筆した流れの異なる房と同じように、髪の流れに沿わない遊び毛を加筆することで、アクセントを作り、立体感を表現します。
より繊細に影やハイライトを描き込んで、白髪男子の塗りが完成しました!
※本記事は『神慶がしっかり教える「厚塗り」の秘訣』(SBクリエイティブ刊)からの特別抜粋記事です。
『神慶がしっかり教える「厚塗り」の秘訣』(SBクリエイティブ刊)
色気をまとう美麗な男子キャライラストをTwitterで多数発表し話題のイラストレーター神慶が、何を考えどのように描いているか、神慶流の厚塗りの基本からこだわりまでをしっかり教えます。
CLIP STUDIO PAIINT PRO/EXを用いた神慶の作画がまるごとわかります。
神慶の基本ブラシ「厚塗り平筆」と、アクセサリを描くときに役立つ「チェーンブラシ」や、作例のレイヤー付きCLIPファイル、厚塗りの基本がわかる作例動画などがダウンロードできます。
作者プロフィール:神慶(じんけい)
イラストレーター。
色気をまとう美麗な男子キャライラストをTwitterで多数発表し、白髪男子キャラ・慶太をモチーフとした一連のイラスト作品が人気となる。VTuberのキャラクターデザインや技法書執筆なども務めている。