【ゲームのお仕事!】SSS by applibot イラストレーター 一才インタビュー
株式会社スクウェア・エニックスを経て、SSS by applibotでキャラクターデザインやゲーム企画などで活躍しているクリエイター、一才さんにインタビュー!学生時代から現在のお仕事に就くまでの経験や、キャラクターデザインにおける「イラスト」と「デザイン」の違い、自分の好きなことを大切にする心構えについて伺いました。
その世界に「生きる」キャラクターを生み出す
―一才さんのお仕事を教えてください。
主にはゲーム内に登場するキャラクターをデザインしたり、作品タイトルと共に発表されるキービジュアルの制作をよく行います。
ゲームの企画段階から参加させていただく際には、世界観の設定から考え、コンセプトアートを描かせていただく事もあります。
ゲームとしてユーザーに感じてほしい心情、例えば幸せな気持ちを共有したいのか、ここでしか得られない切なさを表現したいのか、といった開発側としてのコンセプトが伝わるよう心がけています。
ゲーム案件でなくても、キャラクター一体を描くにあたって、その世界の中で生きる命が環境や文化的側面からも意志を持って生きているかを、とにかく考えぬいて表現するのが僕のスタイルです。
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―ご自身の創作表現で常に意識されている事は何ですか。
他社様からお声がけ頂く案件では、「一才としての切り口やフィルターを通したデザイン」を求めて発注してくださっていると思うので、市場トレンド等ではなく、「自分自身が何をいいと思っているのか」に嘘をつかない事を一番大切にしています。
既に世界観が出来上がってる場合は、ユーザーが思い描いている世界観を崩さずに深め、広げていけるようにする事も必要です。
相反するようにも聞こえますが、この二つを両立させることこそが僕の一番の武器です。
絵を描く事に没頭した学生時代
―絵を描く事は子供の頃からお好きだったんですか。
本格的に絵の道を目指したのは高校入学後なんです。元々ゲームが大好きでゲームプログラマーの道に進みたかったのですが、父親が大のゲーム嫌いでした。
その夢が消えない進路を模索する中で、父が工業系の設計士だった事もあり工業系の資格も取れる豊島学院高等学校の電気科に進学しました。
父は自分と同じ道に進むんだろうと安心してましたが、僕自身はプログラミングを学ぶ事が目的でした(笑)。
絵に関してはそこで漫画研究会に入部したのが出会いです。
めちゃくちゃ活動的な部活で、毎日アニメ雑誌内のイラストを片っ端から模写しまくるんですね。
先輩からもその場で添削されたり、OBをはじめプロの方とも交流でき、絵を描く事に没頭できる毎日が本当に楽しかったです。
そこから「絵でゲームの道に進もう!」と決意しました。
その後、育英工業高等専門学校のアート& デザイン学科に4 年生から編入し、卒業後は現役クリエイター講師が多く在籍する現バンタン・ゲームアカデミーに進学しました。父の説得が人生で一番の修羅場でしたけど…(笑)。
父が認める大手ゲーム会社への就職を勝ち取る事と、今は制度がないのですが、学費免除の特待生になる事が絶対条件で進学のOKをもらいました。
―最も印象的だった授業は何ですか。
バンタン時代の「グレーの5.5を作る」授業は一番覚えていますね。
ポスターカラーを使いカラーガイドと寸分違わぬ色を作るんですが、ただ白と黒を混ぜても同じ色にならないので、他に何色が必要か、乾くとどう変化するか、肉眼では見えない色をイメージして正解に近づけていく…というものでした。
文字通り見える世界が一変し、僕らが見ている世界は知覚できるものから何百倍もの色で溢れていることを知りました。
この美しい世界を伝えられるクリエイターになりたいと考えるようになったきっかけでした。
制作過程
「イラスト」から「デザイン」へ
―卒業後はスクウェア・エニックス社に就職をされますが、どんな新人時代だったんでしょうか。
入社当初チームリーダーから一番言われていたのはデザインをする時に「手癖で描くな」でした。
当初は積み上げてきたもの全てを捨てろと言われている気がして、何が良いもので何が悪いものなのかわからない迷走状態にいました。
そんな中、とあるゲームで昆虫モンスターを作る案件があり、悩みの渦中にある僕の案を基にチームリーダーが幼虫時代を作ってくれたんです。
それが私のデザイン案を完璧にまとめ上げて、違和感なく世界に存在できるように構築されていました。
画力とは別の「デザイン力」という視点での見える世界の違いに衝撃を受けたのを今でもはっきりと覚えています。
そういった経験を通じ、僕がキャラクターデザインだと思って描いていた絵は紙の中だけで成立すればいいだけの「イラスト」で、3Dになったとき、動かしたときにどう魅力的に映えるか、世界観の中でどう働くのか、ユーザーにどんな印象を与えるのか等、「デザイン」としての考えが抜けていた事に気づく事ができました。
この気づきを経てデザインの奥行きとそこに含まれている意味がはっきりと見えるようになりました。
入社後自分の何を評価してくれたのか聞く機会があったのですが、僕の面接時のポートフォリオは背景メインでキャラはそこに生息するモンスター数体のみ、しかもラフ画だったんですが、そのほんの一コマを見てくれていたらしくて。
「世界観を作る事にリアリティをもって臨もうとしていた」姿勢を感じ取ってくれていたのかなと今では思います。
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絶対の自信から生まれる「未知の価値」
― SSS by applibot の第一印象やこれからの展望をお聞かせください。
SSS by applibot は一人でも力のあるクリエイターが皆で集まり、互いの感性をぶつけ合いながら「未知の価値」と呼ぶ今までにない作品を作っていく事を目指すアーティスト集団です。
代表の高木がバンタン時代からお世話になっている先輩で、声をかけてもらいました。
フリーのクリエイターさんは外注のお仕事が多いので、実は企画の中核を担う事が少ないんですよね。
頑張って作品を作っても、色々な理由で世に出せなくなったという事が度々あります。
SSS は「クリエイターがコンセプトからモノを作る」ので、企画段階から面白い事ができそうだと思い参加しました。
互いの制作中の作品に自分の意見を言い合うのですが、皆自分に「絶対の自信」を持っているので、基本ブレない。
でも貰ったアドバイスを自分の中で消化し、思いつきもしなかったより良い形を創り上げていくので、日常の中で物凄い刺激を貰っています。
SSS by applibot カフェ
―SSS by applibot を通じてどんな事をやっていきたいですか。
「自分の見たいものを作って、自分の遊びたいゲームを作る!」ゲームは一人では作れませんので、多くの人に自分の思いを共感してもらえるよう表現、カタチにできる、ゲーム業界の風になりたいなと思っています。
胸を張って描き続ける
―絵を描き続ける進路に進みたいという学生に大切にしてほしい事を教えてください。
一つ目は、自分の好きなモノ、好きな事に胸を張れるといいなと思います。
ネット上などでは、自分の好きなモノを嫌いだという意見を見かけることもあるかもしれませんが、皆がいいというから好きになるのではなく、自分が好きだから好きだと思えるものを見つけると、それが本当の個性に結びついていきます。
もちろん、多くの人と同じものが好きでも、それはむしろ喜ばしいことだなあと思いますのであしからず。
もう一つは「夢を描き続けること」です。
どんなに絵がうまくても、辞めてしまえば希望の道には進めません。たくさんの方が色々な要因で諦めてしまう業界ですので、続けられる事も才能の一つです。
たとえ一番の志望先に進めなくても、全く違う道で、誰も経験しない事ができるのはとてもポジティブな事だと思います。
全然違う分野からクリエイターになった方はごまんといますし、僕も高校入学時は電気科でしたからね(笑)。
どんな形になっても「自信」を持って前に進んでください。
©2022 uni-mafumafu.jp , © A-Sketch
―CLIP STUDIO PAINTで作画する際のこだわりは何でしょうか。
CLIP STUDIO PAINTはブラシ一つひとつに細かな筆圧調整ができるのが嬉しいです。
僕は筆圧強めですが、かかり具合も最強にしています。ぐっと押し込んだ時にしっかりとした線が描けるようにしています。
―イラスト制作でよく使われるツールは何ですか。
塗りつぶし系のツールの使いやすさは段違いです。
隙間閉じで一気に塗りこんだり、囲い塗りでピンポイントに塗ったり、とても効率的に作業できます。
あとはテクスチャのブラシを透明色にして消しゴムとして使えるのもならではの機能で面白いです。
プロフィール:一才
イラストレーター
豊島学院高等学校、育英工業高等専門学校(現サレジオ工業高等専門学校)、バンタン電脳情報学院(現バンタン・ゲームアカデミー)を経て、2005年株式会社スクウェア・エニックス入社、その後フリーランスとして活動し、2019年SSS by applibotに所属。
和の文化的思考を応用し、ゲーム・映像・企画・キャラクターデザイン、教育など幅広い分野で活躍する。
twitter : @ i_sss_ai
一才さんが参加する、SSS by applibot主催の展示会「Re\arise」が6月11日より開催!
SSS by applibot「Re\arise」
■期間:2022/06/11(sat) ~ 6/19 (sun)
■時間:10: 00~21:00 ※最終日は18:00までになります。
■場所:MORIO STUDIO 南青山
■住所:〒107-0062 東京都港区南青山6 丁目5- 45
■参加クリエイター
・プロデューサー:PALOW.
・ディレクター:米山舞
・参加クリエイター:一才、BUNBUN、セブンゼル、タイキ、NAJI 柳田、PALOW.、米山舞
▼Re\arise公式サイト
https://rearise.sss.applibot.co.jp/1st-tokyo/
▼SSS by applibot公式サイト
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