コミッションサービスでイラストを仕事にしよう!
皆さんは「コミッション」という言葉を聞いたことはありますか?「COMMISSION(コミッション)」とは、イラストを個人に有料で依頼する海外の文化のことです。 この記事では、コミッションのやり方やポイントについて、実際にコミッションをされているvesperさんが、イラストの製作工程を交えてわかりやすく解説します。
コミッションを始めるには
コミッションサービスに登録し、出品する必要があります。
ここでは出品までの流れをご説明します。
1)コミッションサービスに登録する
コミッションを始めるには、コミッションサービスへ登録しなければなりません。
まずはコミッションができるサービスを見ていきましょう。現在では国内でもいくつかのコミッションサービスがあります。
この記事では、その中のひとつSKIMAを例に紹介していきます。SKIMAは、イラスト関連の商品がとても多く出品されていてイラストレーターの利用者が多いコミッションサービスサイトのひとつです。
■どうしてコミッションサービスを利用するの?
コミッションサービスを利用する必要性についてですが、2つあります。
それは「集客」と「リスク回避」です。
集客
各コミッションサービスでは、さまざまな方法で利用者を増やすために広報活動が行われています。私たちのような依頼を受けたいイラストレーターにとっては大変ありがたいことですね。
依頼を受けたくてもなかなか個人の力だけで集客することは難しいです。
このようなプラットフォームを経由・活用することでイラストを描いて欲しいと思っているお客様とのマッチングがしやすくなります。
リスクの回避
決裁システムの利用、報酬の回収やサポートがあります。
イラストレーターが依頼をこなしたのにお客様がお金を払ってくれない、お客様が依頼をしたのにイラストレーターから何の連絡も無い……などのトラブルがあります。
コミッションサービスなら、トラブル時に活用できるガイドラインがありますし、あらかじめ報酬を回収するシステムや、サービス運営側のサポート……などといった様々なメリットがあります。
そのような理由から、初心者はコミッションサービスを活用した方が、個人で依頼を受けるよりも、少ないリスクでイラストのお仕事をはじめることができます。
■登録に必要なものは?
メールアドレス
コミッションサービスでは、アカウント登録にメールアドレスは必須です。
銀行口座
コミッションサービスは、イラストレーターにとってお客様である依頼者から有料で仕事を受けるサービスです。
コミッション完了後にお金を受け取る銀行口座が必須となりますので、登録する前にあらかじめ銀行口座を準備しておきましょう。
口座番号や名義などが間違っていると報酬を受け取ることができませんので、しっかり事前に確認しましょう。
銀行口座の準備ができたら、コミッションサービスに登録しておきましょう。
本人認証
コミッションサービスによっては、電話番号などを使用した本人認証機能もあります。
こちらは必須ではありませんが、あった方がお客様から見た信用度があがります。なるべくチェックしておくのがおすすめです。
2)商品を作って出品しよう
アカウント登録がおわったら、お客様に見つけて貰うために自分の商品を作成・設定しましょう。
コミッションサービスでは自分で商品を設定します。商品は、公開後でも変更や更新が可能ですので、まずは必要なものを記入して公開してみましょう。
お客様に信頼いただくには、プロフィールや商品説明にしっかり文章を書いたり、サンプルを掲載することが大切です。
▲SKIMAの出品画面
たとえばSNSアイコンの依頼を受けたい場合は下記のようになると思います。
タイトル
「SNSアイコンイラストを描きます!」「かわいい女の子のイラストを描きます」
画像
サンプルのイラスト、自分で描いたイラストのサンプル
商品の説明
対応するサイズやデータのフォーマット、背景のありなし、こんなイラストを描きますなど、商品の説明を詳しく書きましょう。
納期
何日くらいで納品できるかを書きます。イラストが完成してお客様にチェックしていただき、OKを貰えるまでの期間と考えてください。
そのためお客様とのコミュニケーションにかかる時間も含まれます。単なる〆切りではないですので注意しましょう。
価格
自分で適切な価格を決めることができます。
各コミッションサービスでは最低価格が決まっています。また、売上から所定の手数料が引かれます。説明をよく読んで価格を決めてください。
価格が決められない人は、まずは時給で計算して考えてみると良いでしょう。
イラスト制作にかかる時間とは
実際にイラストを描く時間はもちろんのこと、お客様とのやりとり、修正の時間も考慮しましょう。
時給は、よくわからない場合はお住まいの各都道府県の最低時給などを検索して参考にすると良いです。
他の人が出品している商品の価格を参考にすると失敗することも多いので、自分なりの値段をあらかじめ決めておくと良いでしょう。
また、1度値段を決めたあと、変更できないわけではないですので、自分のスキルや生活に合わせて見直し、定期的に更新していくと良いです。
■プロフィールの設定をしよう
さて、早く商品が売れたら良いなと思っている人も多いと思うのですが、はじめのうちは、なかなか購入者(お客様)が現れないという人も多いでしょう。
コミッションサービスでは、商品以外に自分のプロフィールを入力する事ができます。
プロフィールは、商品を選んでもらう際にお客様が参考にする大切なページですので、しっかり入力しましょう。プロフィールの内容で信用度があがり、お客様に選んでもらいやすくなります。
■見積相談に対応しよう
コミッションサービスによっては、お客様がクリエイターに見積もりを相談できる機能があります。見積相談を受け付けるように設定しておきましょう。
商品やプロフィールを見たり読んだりして、お客様ははじめて「このイラストが良いな、依頼を検討しようかな」「この人にこの依頼が頼めるか聞いてみようかな?」と考えます。
ほとんどのお客様はいきなり購入してくれないと思います。
会ったこともない人にいきなりお金を払うなんてできないですよね。
購入の前に相談ができれば、お客様も安心です。
それから、購入の前に見積相談を受けることで、依頼の内容を確認できます。自分の持つスキルで可能な作業内容なのかを確認しましょう。
また、事前に確認することで、「本当はこうして欲しかった」「聞いていたことや思っていたのと違う」などといったトラブルを防ぐことに繋がります。
依頼から納品まで
お客様から見積もりの相談を受けてから、完成したイラストを納品するまでに気を付けておくと良い事を紹介します。
1)見積相談や問合せを受ける
さて、問い合わせがきたら、どのような依頼をしたいかをしっかり聞きましょう。
お客様が依頼したい作業の内容を把握して、作業内容を金額で見積りをするという事ですね。
見積りに必要な情報として、例えば下記の点などを聞いておくと良いでしょう。
納期
いつまでにあれば良いのか
予算
いくらまでの予算があるか(見積りが欲しいと言われることもあります)
サイズとフォーマット
イラストの大きさ(ピクセル数など)、フォーマット(JPGやPNG等)
依頼したいイラストの内容
どのような内容のイラストなのか
- どのような媒体に使用するのか
- 人数、背景の希望
- 人物の設定(髪型、髪色や目の色、顔つき、年齢、性別、衣装、ポーズ)
……など
筆者の場合は上記に加えて、トラブル防止のために実績の公開について必ず確認するようにしています。(SNS等での公開を不可とされているお客様もいらっしゃるため)
なお、大体のコミッションサービスサイトは、基本的にお客様はシステムに先払いをし、納品後クリエイターが報酬を受け取ります。
こういったシステムの流れもあらかじめ確認しておき、お客様に説明できるようにしておくとより親切です。
2)作業中のチェックポイント
見積りが終わり、実際に作業に入ったら、後はイラストを描くだけ!……ではありません。
納品前に注意することもあります。
■ラフを提出しよう
いきなり最後まで仕上げて完成した状態でお客様にチェックして貰うのではなく、ラフや下書きの時点で内容に問題がないか、お客様にチェックして貰いましょう。
そうすることで、認識違いや間違いが無いかあらかじめ確認できます。
イラストがすべて完成した後で修正すると大変なことが多いですよね。
例えば歩くポーズだと思っていたら、実際は走るポーズだったなど大きなイメージの齟齬があった場合、初めから描き直しになってしまうことがあります。
そのためラフを提出し、お客様に確認して貰い、イメージの違いが無いようにしましょう。お客様側もどんなイラストが仕上がるのか作業経過を確認できて安心できます。
■スケジュールを連絡しよう
筆者の場合、必ずお客様に何月何日にラフを提出するか、清書はいつ頃終わるかなどを発注が確定した時点でお客様に連絡しています。
そうすることでお客様も安心できます。また自分自身にとってもタスクと期限を明確にすることで、だらだらと作業することなく、スケジュールを立てて進められるでしょう。
■必ず納期は守ろう
「納品」ですが、単なる〆切りではありません。納品日ギリギリまで作業して良いという事ではありません。
納品というのは、最後にお客様にチェックしていただき、そのOKが出て、イラストのデータをお送りしたら完了となる状態です。
決して自分の作業が終わればいい日ではないですので、気をつけてください。
納品の2~3日前には大きな作業が終わるようにスケジュールを立てるなど、余裕を持った対応が大切です。
風邪などの病気にかかってしまう、パソコンや機材が壊れてしまうなどのトラブルの可能性も考えて、余裕のある納期を設定しておきましょう。
お客様がすぐに確認や返信できないことも考えられます。
ギリギリでは何かあったとき困るのは自分自身ですので、あらかじめ余裕を持った制作スケジュールを立てましょう。
■コミュニケーションはしっかり取ろう
定期的に進捗報告をお客様に連絡しましょう。納期が遅れることはもってのほかですが、万が一遅れる場合も、早めに連絡するのがお客様への礼儀です。
誠実な対応をすればお客様に喜んでいただけて、次の依頼にも繋がります。
ネット上のビジネスで一番大事なのはコミュニケーションです。顔が見えない、直接会えない分、コミュニケーションはしっかりとする心がけが大切です。
基本的にコミッションサービスでは、サービス内の機能でコミュニケーションを行います。
外部でのやりとりは禁止されていることが多いです。
このように、コミッションサービスは、やりとりに関するルールを設けています。
事前にガイドラインを読み、チェックしておきましょう。
イラストメイキング
イラストの製作工程と合わせて、コミッションサービスで必要なポイントを紹介します。
今回は、下記のSNSアイコンの依頼を受けたことを想定して描いてみたいと思います。
【依頼内容】
- SNSで使用するアイコンの依頼
- 納品サイズ 1500×1500ピクセル(正方形)
- カラーイラスト
- 絵を描くことが好きな女の子で、セーラー服が希望。髪色は茶色をお願いします。他はお任せします。
今回はグリザイユ画法を活用してイラストを描いてみます。グリザイユ画法は中級者以上向けの描き方のため、難しいと感じる人も多くいらっしゃると思いますが、練習してコツを覚えればとても便利です。
また、ひとくちにグリザイユ画法と言っても、描き手によって様々な方法で描かれています。
そのため「コレが正解」という工程はありません。自分のイラストや画風にあった方法や手順を選ぶことが大切です。
※本記事の中では、CLIP STUDIO PAINTを使用しています。
1)下書き・ラフ
コミッションでは、お客様に見ていただく仮の色がついた状態のラフを描きます。
納品サイズに合わせてキャンバスサイズを作成しラフ(下書き)を描いていきましょう。
思うままイメージを描いていただくのが一番いいと思いますので、ご自身の一番描きやすい方法で描くのが一番です。
ラフができたら、お客様に提出してチェックして貰いましょう。
2)下準備
線画を描く
OKが出たら清書していきましょう。
筆者の場合、ある程度線画あった方が描きやすいので、ラフの線画をもう少しまとめていきながらパーツ分けをします。
着色の際の上下関係を考え、今回は下記のように分けています。
- 帽子
- 前髪
- 顔のパーツ類(目、鼻、口、頬など)
- 後ろ髪
- スケッチブック
- 右手
- 左手
- 体
POINT
線画の段階でチェックしてもらいたいな、と思う場合もあると思います。筆者はこの段階ではあまりチェックして貰うことはありません。
理由はコミッションのお客様はあまりイラストの作画に詳しくない方がほとんどで、線画のみだとイメージがしにくいためです。(企業などと取引する場合は指定されると思いますのでこの限りではありません)
もし線画を提出する場合は、単色で下塗りした状態にした方が良いと思います。
チェックが多い方がお客様は安心すると思いますので、チェックの回数はお客様と交渉してみても良いでしょう。
下塗り
下塗りをしていきます。
あらかじめパレットに、グレーの段階を準備しておくと便利です。
線画レイヤーを参照レイヤーにし、塗りつぶしツールで塗りつぶしていきます。色は、白と黒のちょうど中間のグレーを選びます。カラースライダーを「HSV」にし、Vの値を50%にすればちょうど中間のグレーです。パレットに登録すると便利です。
背景を塗りつぶす
新規レイヤーを1つ作成しましょう。レイヤーを一番下の階層に移動します。このレイヤーを背景にします。
3)陰影をつける
下準備がおわったら大きく陰影をつけていきます。絵の中のパーツで明暗がハッキリする部分から選んでパーツ毎に明度をつけていきましょう。まずは白いブラウスや、肌を明るめのグレーで塗りつぶします。
次により色の濃いパーツを選び、それぞれのレイヤーで塗りつぶします。今度は暗めグレーを選びましょう。今回は30%のグレーを選びました。セーラー服のえり、スカーフ止め、髪の毛を塗りつぶしました。
パーツ分けがだいたい終わったら、乗算レイヤーで陰影をつけていきます。
新規レイヤーを作成し、レイヤー効果を「乗算」に設定します。下塗りしたレイヤーで選択範囲を作成し、レイヤーマスクをつくり、はみ出しが見えないようにします。
色を薄めのグレーを選択して影をつけていきます。今回はVの値が80%の明るめのグレーにしました。ブラシはお好みのもので良いので、ざっくり全体に影をつけたあと塗り込んでいきます。
新規レイヤーを作成して、明るいグレーで、髪のツヤを入れていきます。さらに新規レイヤーを作成して、瞳の輝きを白で描き足します。
影色をもっと足したくなったら、乗算レイヤーをさらに作成しマスクを作って描き足していく作業を繰り返していきます。
レイヤーマスクを使わず、クリッピングする方法や、もしくはレイヤー分けが面倒なら下塗りで分けたレイヤーに直接影を塗っていく方法もあります。このあたりはお好みで良いでしょう。
4)色を置いていく
ある程度陰影ができたら色をつけていきます。色味はまずは一番つかいやすくわかりやすいため、オーバーレイでのせていってみましょう。
適当に肌色を選んで、レイヤー効果をオーバーレイに変更した新規レイヤーを作成し、全てのレイヤーの一番上に置きましょう。こちらは肌色で塗りつぶしましょう。
好みのブラシで、そのレイヤーに色味をのせてみましょう。今回は同じレイヤーにどんどん色を塗っていきました。
色味が足り無いと感じる場所に、さらに新規オーバーレイレイヤーで色味を足していきます。
基本的にはある程度陰影ができてしまえばあとはそれほど難しい作業はありません。
色味が足り無いと感じる場所にオーバーレイで色味を追加していくことを繰り返します。場所によって乗算やスクリーンのレイヤー効果もつかってみました。
レイヤーの不透明度を変えて、追加した色味を調整してもよいでしょう。
5)仕上げ
描き込みが終わったら、全体の見直しなどをしていきます。色味が足り無いと感じる場所や描き込みが足り無い箇所などを見つけたら描き足しましょう。
この絵では、次のように描き足して、色味などを調整しています。
描き足したレイヤー
色味を調整すると、次のように雰囲気が変わります。
色がまとまってきたらトーンカーブ、カラーバランス、グラデーションマップなどで全体の色味調整をします。
全体の色味調整がおわったら、レイヤーをひとつにまとめます。
最後に描き込みの足り無い箇所をチェックし描き込んでいきます。顔のパーツ、髪や線を書き込みました。
6)完成
最後に背景を描き足して、イラストの完成です。
イラストが完成しましたが、これで終わりではありません。コミッションでは、お客様に完成したイラストをチェックしていただく必要があります。
お客様にイラストをお送りして、修正がないか確認して貰いましょう。OKが出たら、イラストの完成です。
納品サイズやフォーマットをチェックして、該当のサイズとフォーマットの画像を作成し、お客様にお送りしたら納品完了となります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
以上がコミッションの依頼を受けてから納品するまでの流れとなります。
コミッションサービスは、Web上で様々なプラットフォームができたことで、非常に利用しやすくなりました。
イラストレーターとして活躍していきたいと考えている人は、はじめてみてはいかがでしょうか。
ゲーム好きイラストレーター。ゲーム業界でグラフィックデザイナー、アートディレクター、プロデューサーなどを経験し独立。キラキラしたカラフルな美少女イラストが得意でコミッションでも人気があり、Vtuber(Live2D)等の制作にも10件以上携わるなど多方面で活躍中。
■SKIMAとは
SKIMAはクリエイターと個人を繋げるコミッションサービスです。全てのイラストにその価値があり、そのイラストを必要としている人がいます。
SKIMAは日本でもこの文化を広めることを一つの目標にしています。
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