作品を魅力的にする5つの方法【イラストの構図・上達】

作品を魅力的にする5つの方法

絵の技術を磨くことは簡単ではありません。ですが、基本的なポイントを押さえて練習することで、目標を達成できるはずです。この講座では、アーティストのMehdi Abdiさんが作品を魅力的にするための5つの方法を紹介します。

はじめに

 

それでは、最初に構図の練習と準備について紹介します。

この手順を追って進めていけば、素敵なイラストを制作するのに役立つだけでなく、『空白不安症候群』を回避することもできます。

 

その次に、下描きの構成プロセスを紹介します。また、遠近法になれるための簡単な練習方法を提示します。

 

最後に、より良いアーティストになるために覚えておきたい基本的なポイントでまとめます。

 


完成イラスト

 

線画

 

1. ブレインストーミング

 

依頼人があなたに一枚の依頼書を持ってきたとします。

そこには漠然としたアイディア(例えば「一人の戦士」のような)、または明確なアイディア(例えば「金色の鎧をまとい、悪魔の剣を持ち緑色の目をした闇の戦士」)が書かれています。

 

漠然としたアイディアと明確なアイディア、どちらにも長所と短所があります。

ともあれ、プロであれば真っ白なキャンバスを前に固まってはいけません。イラストレーターは言葉とアイディアをイラストにするのが仕事です。

ここで使える強力な手段が、「ブレインストーミング」です。

 

まず紙の中央にメインとなる言葉を書き、線で囲います。

そこから出発し、関連するアイディア、連想されるアイディアをすべて書き出していきます。

 

上から下へと書き連ねていくことでアイディアを忘れることを防げるので、描きたいものの地図を作ることができます。

 

ここでは例として、「シカの魔法使い」という題を選んでみます。

 

この言葉をまず分解していきます。分解していったひとつひとつの言葉が、インスピレーションを与えるアイディアになります。

また、言葉を繋げていくことによって物語が立ち上がり、テーマが広がっていきます。

 

言葉の要素が十分にそろったら、スケッチを始めていきましょう!

 


▲ブレインストーミングの例

 

私は、スケッチブックを絵の実験室として使うことをおすすめしています。
楽しみながら、ルールに縛られることなく、生き生きと描くこと……これが、私が教える第一のアドバイスだからです。

 

何を描くときでも、それを心から描きたいと思っていることが重要です。

いつも通りかかる道、レストランでたまたま目の前のふたつの席に座っていた男女、身近にある日用品、そしてもちろん、今まさに描いているスケッチそのものを描きたいと思うことです。

 

今回の場合、後ほど見ていく「シカの魔法使い」の構図のスケッチがそれにあたります。

 

準備段階では同様に、参考資料の収集を行います。

作品のクオリティを高めるため、アイディアにマッチする画像をインターネットで探します。

この下調べの目的は、模倣ではなく発想にあります

 

たとえば、「シカの魔法使い」を写真や絵から複製することはできません。

本物のシカや司祭の写真は、このキャラクターの造形には役立ちません。

また、影響を受け過ぎることを避けるため、基本的に私は絵ではなく写真を参考資料にしています。

 

2. 構図の考え方

 

私たちが「構図」と呼んでいるものは、絵を見る人の視線を画面内で誘導し、ある種の感情を喚起するための導線のことを指します。

 

たとえば、絵の学校では多くの学生たちが「三分割法」という技法を学びます。これを題材としたオンライン講座も、インターネット上でたくさん目にします。

 

しかし、この技法は万能であるとはいえず、構図づくりの遠回しな方法だ……と私は思っています。

その代わりに私が提案するのは、「コントラスト」、「ディテール」、「アクションライン」の3つの概念です。

 

 

▲アクションラインの例

 

コントラストは、要素間の違いを強調します。違いが大きいほど、観賞者の注意をより強く引き寄せることができます。

 

たとえば、黒いページの白い点は視線をすぐに引き寄せます。

真っ暗な環境にある光も同じです。もしその場所に光があふれていたら、私たちは黒い部分を探すでしょう。

 

この原則は人間の集団にも当てはまります。

大人だらけのシーンではたった一人の子どもに目が行くし、幼稚園に行けば大人の方に目が行きます。

今回の私の絵は暗いので、皆さんの視線は明るいポイントに向かっていく、というわけです。

 

鑑賞者の目を引くのに使えるもう一つの技法が、ディテールです。

これもまたコントラストと関係します。

 

キャラクターの顔を浮き上がらせるためには、キャラクターの眼差しに注目が集まるようにしなければなりません。

画面のいたる所にディテールがある時は、視線を集めたい場所の周辺を片付けて綺麗にしてみてください。

 

そして最後にアクションラインは、仮想の線のことを指します。

もし多くのアクションラインが、一点の同じ方向へ向かっていたら、視線は自然にそこへ引き寄せられていきます。

私のイラストを例とすると、雲の流れとパースペクティブが魔法の源に向かっていることに気が付くでしょうか。

 

これらの3つの概念を学ぶためには、画面構成が良いと感じる作品(イラスト、コミック、絵コンテなど)を観察し、以下のように自問してみてください。

 

  • どの部分がコントラストを作り出しているか?
  • どこにディテールが集中しているか?
  • アクションラインはどこにあるか?

 

好きなアーティストの作品を分析することで、あなた自身の表現力も高めることができます。

あなたが自分のプロジェクトを進めている間も、これらの問いを投げかけることをぜひ習慣にしてみてください。

 

また、観賞者の視線を想像し、人物は近すぎないか、遠すぎないか、他の角度から見るとどうなるだろうかと考えてみてください。

 

構図の例

 

ここでまた、5センチ大の構図用カットを作っておくと、より効率的に作業を進めることができます。

小さい画面で構図が正しければ、画面が大きくなっても正しいというわけです。

 

今回の作品例では、魔法の源の力を彼から感じられるよう、魔法使いをより近づける構図にしました。

 

アイディアそのものには良いも悪いも存在しません。

構図が要求書に十分応えているかどうか、そしてあなたの美意識に従っているかどうかがアイディアにおいては重要なのです。

 

 

3. スケッチの具体化

 

スケッチの具体化は決定的なステップの一つです。
最初の構図をもとに、アクションライン、そしてボリュームを通じて画面を作り上げていきます。

 

このステップのために、遠近法の練習が重要となります。

 

遠近法は一行で説明できるものではありませんが、みなさんのスケッチブックを活用し、練習してみてください。

 

椅子やマグカップやその他の家具など、身近にある日用品を使ってみましょう。

簡単な物体に慣れたら、今度は道路にある電灯やビデオゲームのコントローラーなど複雑な物体に挑戦しましょう。

 

この練習の目的は、物体を基本的な幾何形体に分解することです。

一つの物体をいくつもの方向から描いてみましょう。物体を単純化して描くには特に注意が必要です。

 

ともあれ、立方体や直方体、四角錐、円柱そして球形を使い、簡単に物体を描いてみましょう。

 

ステップ1

 

ステップ2

 

この練習を繰り返し積み重ねていくことで、構図と遠近法のコツが掴めてくるはずです。

 

 

4. 解剖学を学ぶ

 

構成が上手くできたら、あとは描き始めるだけです。ここで役立つのが解剖学とデザインの知識です。

 

ここで言う「デザイン」とは、物体の成り立ちや他の要素との相互関係を意味します。

 

たとえば、ドアがどのように取り付けられるかを知っていることで、描き始めの際のミスや、キャラクターに対するスケール設定のミスを防ぐことができます。

 

そして解剖学は、イラストの練習のなかでももっとも重要かつ面白味のある領域です。

人体解剖学を理解すれば、最終的には動物造形や擬人化やクリーチャーデザインにも繋がります。

 

解剖学的に描いてみる

 

まず、人間の骨格や動き方の分析から始めると良いでしょう。

頭蓋骨と下あごから始めて、一つ一つの骨とその動き方をよく観察してみてください。

 

人間の頭部をどんな方向からでも正しいプロポーションで描くことができるようになれば、残りの骨を描くことも簡単にできるはずです。

 

しかし骨盤は甘く見てはいけません。

というのも、骨盤は性的二形(性別による個体差)が最も表れる部位だからです。

 

性器を除けば、男女間の最大の違いは骨格のプロポーションに現れます。

骨についてはじっくり勉強してみてください。ひとたび骨の知識を習得すれば、筋肉の勉強もより分かりやすく、そしてより楽しくなるでしょう。

 

筋肉は、骨のメカニズムを駆動させる糸のようなものをイメージしてみてください。

そうすると、骨のメカニズムを理解することで特定の筋肉がなぜそこにあるかを説明できるようになるはずです。

 

身体構造やキャラクターデザインを描くときは、正しいプロポーションになるよう強く意識してください。

プロポーションが正しければ、あなたのキャラクターの存在感も確かになるでしょう。

 

線画

 

 

5. 光源や質感を意識した着色

 

着色に取り掛かろうとすると、今度は「光源はどこにあるのか?」という疑問が生じるかと思います。

この疑問はネット・ミームになるほどに普遍的で、ありとあらゆる場面で出てきます。

 

ベースカラー

 

さきほど紹介した、遠近法で物体を描く練習を覚えていますか?
この練習の仕上げに、光源としてスマートフォンや懐中電灯を使ってみてください。

 

参考資料とする物体を光源に近づけて、光を観察してみましょう。

物体は、どのように光源に対して面するかによって光り方が変わります。

 

たとえば、まっ平らな平面では光は均等に広がりますが、丸い物体の上ではグラデーションを形成します。

 

色彩理論の理解もまた欠かすことができません。

二つの絵を見比べたとき、目が引きつけられるのはより色彩豊かな絵の方です。

 

色彩に関しては、それだけで一つの図書館が埋め尽くされるほど様々なことが語られてきました。

そのため、本講座で色彩理論の要約をするつもりはありません。

 

とはいえ、私のイラスト制作プロセスはみなさんの参考になるはずです。

 

私はまず、夜であることを表現するために、すべての形状を暗い色で塗りつぶします。

 

次に、強い光(レイヤーの合成モード:通常)と影(レイヤーの合成モード:乗算)を描きます。
光と影を追加するとき、二つの目的を持つ必要があります。

 

一つ目は、雰囲気を作り出すという目的です。

今回の例では絵のなかに神秘的な雰囲気を作らなければなりません。

二つ目は、画面内にある要素の質感を表現するという目的です。

初心者にとっては、このステップは手探りで進むしかないように感じられるかもしれません。

 

最初から画面全体に取り掛かるのではなく小さな個別要素から始めることで、より早く進めることができるはずです。

 

練習を重ねていけば、この着色ステップはベテランアーティストが感じるのと同じように、みなさんのお気に入りの作業工程になることでしょう。

 

完成

 

まとめ

たくさんお伝えすることがあったので、ここまでに紹介した練習方法をまとめます。

 

  • いきなり絵筆を持たないように。わくわくするアイディアを広げるために、ブレインストーミングの時間を取りましょう。テーマに関する参考資料を必ず集めてください。

 

  • スケッチブックを持ち、習慣的に描くこと。楽しみながら練習することで、絵の技術も早く伸ばすことができるでしょう。

 

  • 構図の練習のために、お気に入りの作品を観察し、細かく分解してみること。模倣によって多くのことを学ぶことができます。

 

  • ひとつの物体を色々な方向から描き、遠近法を練習すること。まず、基本的な幾何形体を用いて物体を単純化する。それができたら、より細かく組み立てていく。これにも慣れたら、物体に影と光を足していく。

 

  • 解剖学を勉強すること。骨格を観察し、それから筋肉を観察する。

 

スケッチやアートは私たちを、終わりのない、生涯続く魅力的な旅路へと導いてくれます。
ねばり強く、謙虚にいることが大切です。毎日少しずつ、自分を高めていってください。

 

もっとも重要な最後のアドバイスになりますが、あなたの作品を人に見せましょう

できる限り多くの批評を受けることが、成長に繋がります。どんな辛辣なコメントであっても恐れないように。

それはみなさんがより良いアーティストになるための助けとなるからです。

 

アーティストとしての旅を楽しんでください。

 

プロフィール:Mehdi Abdi

フリーランスとしてゲームのイラストレーターをしています。フランス、アヌシーのブラサール学院で、デッサン、解剖学、キャラクターデザインを教えてもいます。私の作品はポートフォリオサイトやSNSでご覧いただけます。

Instagram : https://www.instagram.com/mehdiabdiart/
Artstation : https://www.artstation.com/mehdiabdi

 

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