漫画家を目指すキミへ~真島ヒロ先生インタビュー~
『FAIRY TAIL』や現在連載中の『EDENS ZERO』の作者である真島ヒロ先生に直撃インタビュー! 新人時代のお話から、魅力あふれるキャラクター作りの秘訣までお伺いしました! 週刊少年マガジンの人気企画「漫画家への花道」からの特別掲載!
デビューから21年目を迎えた真島ヒロ先生に、新人時代のお話と、魅力あるキャラクター作りの秘訣をお聞きしました!!
キャラクター作りが苦手な君も、今日からはもう大丈夫!
作家としての第一歩
―プロへの第一歩は、編集部への“持ち込み”や新人賞への”投稿”から始まることが多いと思います。真島ヒロ先生が週刊少年マガジン編集部に持ち込まれた当時の状況をお聞かせください。
真島:漫画を描くために上京して2年目、19歳の頃に持ち込みをしました。
その時に持ち込んだ先は週刊少年マガジン編集部だけだったのですが、それでもどこに持ち込みをするかは迷いましたね。
決め手はいくつかあって、その頃の週刊少年マガジンは勢いが凄かったということと、新人賞の作品ページ数が自由だったというのが最終的に選ぶ大きな理由となりました。
―真島先生というと、「RAVE」と「FAIRY TAIL」といった、ファンタジー作品を描かれる印象があります。持ち込みをされた時の作品はどのようなものだったのでしょうか?
真島:その時の作品もファンタジー色のある漫画でした。
当時の週刊少年マガジンは不良やスポーツを題材にした硬派な作品が多かったんです。
それだけに、僕の持ち込んだ作品は少し異色だったかもしれません。
ただ、珍しいからあえてファンタジーを持ち込んでみようという発想だったわけではなくて、まず自分の描きたいものがあり、その気持ちに正直に描いたものがファンタジー作品だったということです。
その結果としてですが、マガジンにファンタジーがあまりなかったので、売りになったのではないかとも思っていました。いわゆる隙間産業というやつですかね(笑)。
持ち込みが世界を広げる!
―持ち込みをされて、自分の原稿にコメントをもらった際の心境はいかがでしたか?
真島:自分の作品に対して、初めて真剣にこういう理由でここが面白くないと言ってくれる人に出会ったと感じました。
それまで友人などにも漫画を見せてはいたのですが、周囲の人たちは基本的に面白いとしか言ってくれないんですよね。
それに加えて、僕はそのころ専門学校に通っていたのですが、当時の先生にアドバイスをもらっても納得ができないこともあったんです。
それだけに初めてですかね、“的確なアドバイスをもらえた”という印象は今も残っています。
―持ち込みでもらったアドバイスで、今も覚えていることはありますか?
真島:全部覚えています。線は綺麗に引こう。女の子は可愛く描こう。構成はしっかりしよう。定規は使おうとか。
色んな事を全部言われて、正直悔しかったです。
指摘されたことは全部正しかったのですが、それでも悔しくてたまらなくて。
言われたことを全部直して、すぐにまた持ち込みに行ったことを覚えています。
課題を見つけて対策を!
―持ち込みをされる以前、自身の作品で課題だと感じていた部分はありましたか?
真島:それがなかったんですよ。持ち込みするまでは自分の作品に自信がありましたから。
ダメな部分なんてないと思っていた。
自分の欠点なんてわかっていなくて、持ち込みをしてアドバイスを受けたことで初めて自分の欠点が見えてきました。その頃に担当編集からずっと言われていた課題は、もっと絵をうまく描こうということでした。
特に「女の子が可愛くないから、もっと可愛く描いて」って言われたのがすごく印象に残っていますね。
―可愛く描くようにと言われて、すぐに改善できるものではないと思います。課題を克服するために、どのような練習をされましたか?
真島:僕は自分が可愛いなと思う女の子のキャラを模写していました。
課題として言われる前から模写をしてはいたのですが、言われてからはより世間一般に可愛いと言われている女の子を練習するように意識しました。
新人さんで何が課題かが見えた際、それを克服する方法に迷ったら担当編集に聞くとしっかりアドバイスをもらえると思いますよ。
ペンに慣れるためにもっとペンで描く機会を増やそうとか。何をすればいいのか分からないという新人さんは、しっかり担当編集に聞いてみることをお勧めします。
真島先生ヒロイン地図!
真島先生の描く女の子絵を時代別に振り返ってみよう!
画力の向上は勿論だが、髪形や服装など、時代に合わせたデザインが取り入れられているぞ!
描きたいことのために読者を意識する!
―新人賞を意識して漫画を執筆されていた際に気を付けていたことをお聞かせください。
真島:読者の目線を意識したネームを作るということです。
特に盛り上がって来た場面での大ゴマ、いわゆる自分の一番見せたいシーンをどうすればより効果的に見せられるかということを意識していました。
新人さんにありがちなのが、自分の描きたい・見せたいシーンが先行しすぎてしまい、その前後との辻褄が合わないということ。そのシーンに至るまでの導線、つまり読者が自然と見せ場のシーンに入り込んでくれる流れ作りがうまくできていなかったりするんです。
だから自分の描きたいシーンは伝わるけれども、そこまで読者の心が乗っていかない。
これは僕も当時の担当に言われたことです。
―当時の打ち合わせではどういったことを主に話されていたのでしょうか?
真島:作家さんによると思いますが、その時の僕は見せたいシーンが先にあって、そのシーンを描くためにお話を作り込んでいくというネームの作り方だったんです。
結果として、見せたいシーンを面白く描こうと考えるほど、読者の目線を意識することが重要なのだと実感していました。
“読者の目線を意識する”ということを前提に、「僕が見せたいシーンがあるからここはこう直そう」、「こういう展開があるとより大ゴマに向けて読者の気分が乗ってくるはず」、などの話をよくしていました。
読者がどう喜んでくれるか、どう驚いてくれるかを考えることが漫画作りの楽しみでもあるので、この時に身に着けた“読者がどう見ているか”という意識は、長く作家生活を続けてきた今でも変わらず守っています。
秘訣は愛と意地!?
―真島先生と言えば速筆という印象があるのですが、安定したペースでお話を作っていける秘訣などはありますか?
真島:基本的なことかもしれませんが、打ち合わせの曜日を決めることですね。
どうしてもネームの内容で納得のいくものが思いつかないということもあると思います。
それでも必ず定められた曜日にはネームをあげる。それだけは守っています。
あと、今日はここまでやろうと決めたことの、ちょっと先までやることが多いです。
今日10ページ上げれば明日楽になるぞって思うんですけど、10ページあげたときに、「あれ?もうちょっと頑張れば明日もっと楽になるぞ」って思えるのが好きなんです。
それが積み重なって、気が付いたら早く終わっていたりします。
ただ、正直早く描こうということはあまり意識してないんです。
そもそも締め切りは守るものと、僕は思っていますから。だって、僕は漫画が好きです。
学生時代は宿題とかあまり好きではなかったですけど、大人になってやる好きなことぐらい真面目にやらなくてどうすると。その好きなものに対する意地が大事なのかなと思います。
真島先生に聞く!一問一答!! ①
―漫画を作る作業で一番好きなことは何ですか?
真島:ネームですね。ひたすらネームのことだけ考えていたいです。
下書き描いてる頃にはもう早く次のネーム描きたいって思ってます(笑)。
―もし現在の自分が、新人時代の自分にアドバイスを遅れたら何を伝えたいですか?
真島:もう少し構図を頑張ればよかった、ということです。色んなシーンを手癖で描いて楽をしている。
特に意識しなければこう描いてしまうという構図が誰しもあるとは思います。
これを減らそうと伝えたいです。
―新人時代から始まり今に至るまで、自分自身で変わったと思う個所と変わっていないと思う個所はありますか?
真島:変わったというと、体力は落ちました(笑)。昔はいくらでも徹夜できましたけど、今はそうはいかないです。
変わっていないことは、今でもヒット作を出したいと思っている所です。
キャラクター作りの秘訣①
“映える絵”を意識せよ!
―真島先生の作品には、豊富な種類のキャラクターが登場しますが、外見などのデザインで気を付けていることはありますか?
真島:メインキャラクターについては、特にシルエットで分かるように気を付けています。
例えばキャラクターをマベタ、髪から服から肌から全て黒くしたときに、そのキャラクターであるとわかるようなデザインを心掛けています。
「FAIRY TAIL」のナツだと、マフラーが特徴ですね。
ナツは動き回る、アクションをするキャラクターだと決めてあったので、何かなびく物があれば、そうした際に絵が映えるだろうなと思ってデザインしました。
ルーシィは作品が長く続いたので服装や髪形も色々と変化はしましたが、最初は当時にそこまでなかったサイドポニーという髪形にしました。珍しいかなと思いまして。
ナツとルーシィのシルエットをチェック!
▲ナツの動きに合わせてたなびくマフラー
▲ルーシィを象徴するサイドポニーの髪形
―キャラクターはシルエットから考え始めるということでしょうか?
真島:いえ、シルエットは最後の調整です。
まずは物語上の立ち位置や、こういう設定のキャラクターがほしいなどから考え始めます。
ただデザインが先にあって思いつくキャラクターも多いです。
思いついたキャラクターを描いている落書き帳みたいなのがあるのですが、その中のキャラクターは大体絵が先にあるんですよ。
そのキャラクターからちょっと面白そうだなと思うやつを使ってみたりしています。
キャラクター作りの秘訣②
漫画だけが全てじゃない
―新人作家さんだとキャラクターのデザインが苦手で、似たキャラクターばかりになってしまう人もいると思います。真島先生のように多彩なアイディアを思いつくには、どうすればいいのでしょうか?
真島:作品の内容ごとに設定が違えば、新人さんは同じようなデザインのキャラクターになってもいいと思います。
皆それぞれ、「自分の中での主人公像はこれ!」という強いイメージがあるはずなので。
しかし、もしキャラクターの種類を増やしたいのでしたら、色々なメディアに手を出してみることをお勧めします。
漫画だけでなく、小説、映画、ゲームなど感性を刺激してくれるものは多くあるはずなので、まずはそういったものに触れるようにしてみるべきだと思います。
また、それだけでなく、現実で友人と遊んだり、人と会うなどの社会経験も重要です。
個人的な印象ではありますが、今の新人作家さんは漫画だけが好きという人が多い気がします。
それも、自分の好きなジャンルの作品だけ読んでしまう人。
それが悪いことであるとは言いませんが、せっかくなので漫画以外で様々な体験をしてみてほしいです。そこから色んなキャラクターが生まれてくるはずですから。
勘違いしないでほしいのは、漫画をしっかり読んだうえでの話ということですよ。
―真島先生は漫画を多く読まれていたのですか?
真島:デビュー前はかなり読んでいました。
それこそ少年漫画だけでなく、青年向けから成人向け、少女漫画まで。
漫画が好きでしたからね。だから漫画家になったわけですし。
デビューしてからは読む全体量は減りましたが、代わりに研究目的で読む漫画が増えました。
手塚治虫先生の作品とか、いわゆる古典と言えるものです。
先ほど漫画以外のメディアに触れることをお勧めしましたが、やはり漫画の構成や演出などは、漫画を読むことでしか学べません。
だからこそ、新人作家さんたちには漫画をよく読むことで漫画的感性を養うと同時に、様々なメディアに触れることでアイディアの幅を広げていってほしいです。
キャラクター作りの秘訣③
キャラクターの魅力は絵だけにあらず!
―「FAIRY TAIL」の第一話を参考にお話をお聞きしたいです。主人公を好きになってもらうために、お話の構成で意識したことはありますか?
真島:主人公に弱点を作ることです。
「何だかダメな奴だな」と読者が思った主人公が、最後にピシッと決める。
これは少年漫画としてよくある構成ですから、僕が説明するのも恥ずかしいんですけど、主人公をカッコよく描く鉄板なので、新人作家さんも真似してみると良いと思います。
ナツの場合だと、乗り物に弱いという描写から始まるというのが、まさにその弱点として分かりやすい例です。
キャラクターをカッコよく見せる鉄板の構成!
物語の冒頭では弱そうなナツだが…
カッコよく決める!
―後半の展開でクライマックスが迫ると、大ゴマや見開きが増えていきます。そうしたコマを描くにあたって気をつけていることはありますか?
真島:キャラクターの力強い目が、読者の方へと向くように気をつけています。
“読者目線”とよく言うんですけど、キャラクターが読者の方を力強い目で見ていると、引き込まれるものがあるのではないかと思うんです。
少なくとも僕は、少年漫画というのは主人公の顔あってのものだと思っています。
背中で語るっていうのは、脇役であったり青年漫画であったりでやるものかなと。
そのため、構図でも主人公の顔や目が見えるようにということは気をつけています。
―真島先生の作品は主人公だけでなく、ライバルやヒロイン、敵など魅力的なキャラクターが多いです。そうしたキャラクターたちを描く上で意識していることはありますか?
真島:まず、僕はヒロインというものはビジュアル重視だと考えています。
もちろん性格も大事なのですが、いかにパッと見で読者の目を引けるかということを意識していますね。可愛かったりセクシーだったり、そういった魅力を意識して、誌面に載ったときに読者がパッと目を止めてくれるような女の子を描けると良いなと思っています。
悪役に関しては、読者が主人公たちに「こいつらを早くこらしめてやってくれ!」と思うような悪役が理想だと考えています。
ライバルに関してはよくある考え方ですが、主人公とは正反対にすることですね。
主人公が努力型だったら天才型にする。
「FAIRY TAIL」だとナツが炎だったので、グレイは氷にしました。
シンプルではありますが、主人公との対比としては重要な事だと思います。
真島先生に聞く!一問一答!! ②
―真島先生が影響を受けた映画を一つお聞かせください。
真島:「ブレイブハート」です。
当時映画を見た際の映像美や、主人公の強い意志は、僕の作品に受け継がれていると思います。※1995年公開のメル・ギブソン主演監督映画
―真島先生が「FAIRY TAIL」でお気に入りのキャラクターをお聞かせください。
真島:たくさんいますが、エルザは印象深いですね。
最初に登場した時はあまり設定も固まっていなかったのですが、物語が進むにつれ、自分の想像以上に成長してくれて、作品でも屈指の人気キャラクターになってくれました。
シーンで言うと、「天狼島編」ですかね。敵が現れて、仲間と一緒に協力してそいつと戦う。
「FAIRY TAIL」という作品を象徴するものだったと思います。
求む!少年漫画!!
―マガジンを目指す新人作家さんに対して、どういった作品を期待していますか?
真島:やっぱり熱い作品ですね。
前に特別審査委員長をしたときにも思ったのですが、最近はオシャレな作品が多いです。
そういった作品はもちろん大歓迎ですけど、熱い話を期待しています。
それも自分が満足する作品ではなく、中学生だったころの自分が満足できる、ワクワクする作品が読みたいです。
最近の作品の傾向を見ていると、今だとむしろバリバリの少年漫画を描いてきた方が逆に目立つかもしれないですね(笑)。
少年漫画の必須条件といえば、起承転結があり、主人公が成長すること。
ただし気をつけないといけないのは、その作品が決して独りよがりな内容にならないことです。
新人賞に関しては、自分の描きたいものだけ描きましたという漫画が多い。
だからそういう描きたいシーンや展開を、どうすれば読者に楽しんでもらえるかを計算してみてほしいです。
熱い作品を期待していると言いましたが、自分の熱さをただ押し付けられただけでは、読者も楽しくありません。こういう風にすれば読者も熱くなってくれるだろうって考えられるようになれば、作家として一段階成長できると思います。
<作家プロフィール>
真島ヒロ
1998年、『MAGICIAN』で第60回新人漫画賞入選を獲得。同年にデビューを果たす。
2017年に『FAIRY TAIL』が完結。
2018年6月より『週刊少年マガジン』にて『EDENS ZERO』を連載中。
(C)真島ヒロ/講談社
※本記事は講談社「週刊少年マガジン」公式HP「マガメガ」内の新人賞企画「漫画家への花道」から特別掲載しています。