『もぐささん』から学ぶ!マンガのネームの作り方
作品の魅力を誰よりも知り尽くしている編集者が、作品の「ここがすごい!」を解き明かす!今回は『もぐささんは食欲と闘う』の著者である大竹利朋先生にネームの作り方をお聞きしました!ヤンジャン新人漫画賞「シンマン賞」人気企画から特別掲載!!
これが大竹流!ネームの作り方
―ネームの作り方を教えてください!
『もぐささん』を恋愛マンガに置き換えると、「食べ物」が「異性」なんですよね。
つまり、ネームは毎回新しい異性キャラを出す作業に近いんです。
▲もぐささんが新しい「食べ物」=「異性」に出会う瞬間。
今話では「異性」に「ハンバーグ」をチョイスしている。
当然、新キャラが出たらキャラの説明をしなければいけないし、その異性をどう面白くオトすか(食べるか)、を考えなくてはなりません。
▲「どう食べるか」は気になる異性を浮かべて、“告白のシチュエーション”や“その子とする理想のデート”を考える行為と似ている。
毎度ネーム作業は「その新しい異性とどう戦わせるか」という感じですね。
人は動きますが、食べ物は動かない。喋りもしない。
なので、相対している主人公をとにかくひたすら喋らせる! そして動かしまくる!
▲当然と言えば当然、食べ物に“表情”や“動作”など無い!
となれば、いかに主人公・もぐささんの心情の変化やテンションを描き出せるか。
ここが面白さの鍵を握る。
―なるほど…。確かに異性で考えるとピンときます。このネームを作り上げるに至った、大竹先生の“思考の順番”を教えてください!
まず「負け」の絵を浮かべますね。
ハンバーグを食べているこの絵を浮かべて、ハンバーグをお皿に移すまでの中段部分。
で、導入部分の自炊の絵かな?メイン→大筋の順番で必要なものを先に置いています。
要らないものを消すというよりは、「必要な大筋」だけを残して、残ったところで遊ぶ、という感じでしょうか。
【大竹先生の脳内】
―「必要な大筋」とは…?
主人公の気持ちを最大限伝えられる軸ですかね。
「こういうのが好き・良い」と思うものを先に考える前提です が。
楽しいことしか考えない主人公なので、ポジティブな主人公になりきって、彼女の気持ちの大筋を残すようにしています。
▲もぐささんの「ポジティブな性格」は必ず残す。
彼女になりきり、負けたとしても前向きに。明るく、楽しく、幸せに。
―ネタ探ししてますか?
なかなか行けないんですけど、たとえば 8話の天丼の回は自分も食べに行きましたね。
行くのはとても大事です。
結果的に、全部取材した方がアシスタントさんへの指示出しも含めて効率的なんです。
あと、自分で撮らないと角度とか納得がいかなくて…。
そういえば、吉祥寺もかなり歩きました。(笑)
▲時間を惜しまず、足を使うべし!
美味しく見える量のバランス、角度など写真から手に入れられるものは大きい。
そして自分で食べたり、飲んだりした感覚を大切にしよう!
大竹流!ネーム術まとめ
①動かないものと対戦する場合は…
とにかく主人公を動かす!喋らせる!
②ストーリーラインは…
メイン(のカット)から大筋を!
③主人公の気持ちになりきろう!
〈作者紹介〉
栃木県足利市出身。
2013年週刊ヤングジャンプに掲載された読切作『ハガネの温度』でデビュー。
2014年より『もぐささん』を連載。コミックス全10巻を刊行。今作が連載2作目。
※本記事は集英社週刊ヤングジャンプ公式サイト内の月例新人漫画賞【シンマン賞】特別企画、『編集者Presents連載作品のここがすごい!!』「もぐささんは食欲と闘う」の第1週「ネームと闘う」を特別掲載しました。
第2週~第5週でも引き続き担当編集者が「もぐささんは食欲と闘うのここがすごい!!」を解説します。気になる続きは(http://youngjump.jp/shinman/)をチェック!
シンマン賞特別企画 『編集者Presents連載作品のここがすごい!!』
(第45回 審査員:大竹利朋)
(C)大竹利朋/集英社