【パース講座】マンガの背景~斜め方向の消失点の取り方~
「なんとなく透視図法を使っても描けないものがある」「せっかくソフトを買ったのにパース定規を使いこなせない!」そんな悩みはありませんか? 今回は一度覚えると便利な斜め方向の消失点の取り方を、絵を描く人に広く使われているソフト「CLIP STUDIO PAINT」を使って紹介します!
CLIP STUDIO PAINTのパース定規を使えば、地面に平行なものは簡単に描くことができますが、坂道や屋根など、地面(アイレベル)に平行でないものは、どう描いたらいいのでしょうか?
斜めはどこに消失する?
まず箱を描いてから斜めに切ってやれば描けますね。
では坂道を考えてみましょう。一本道はアイレベル上に消失します。
途中から坂になったら、消失点はどこにできると思いますか?
坂道の消失点は、平らなときの消失点を通る高さの線上にあります。
上り坂なら上に、下り坂なら下に、そして坂が急になるほどアイレベルから離れます。
パース定規を使って描こう
パース定規を使って坂道を描く場合を見てみましょう。
一点透視のパース定規を作って一本道を描きます。
一点透視と二点透視のときにパース定規にできている「アイレベルに垂直に交わる線」は、消失点を通ってはいません。
傾斜(坂道)の消失点を決めるときはこの線上に取らないように注意しましょう。
「消失点を通る高さの線」にはガイドを使うと便利です。
ガイドを一本作って消失点に交わるように置きます。
定規作成ツールでパース定規を選んで用意したガイド上に消失点がくるようにパース定規を作ります。
このときツールプロパティで「透視図法の変更」のチェックが外れていることを確認してください。
チェックを外さないと一点透視のパース定規が二点透視のパース定規になってしまうので、アイレベルの位置が変わってしまいます。
外して消失点を追加することで、一点透視に別の消失点(傾斜)が追加された状態になります。
二点透視の傾斜の場合。
坂道は消失点の方向がわかりやすいですが、ほかのものだとどうでしょう。
こんな三角屋根のような形では消失点はそれぞれどっちにあるのでしょうか。
傾斜の消失点は、絵によってはどちらの方向に消失するのか迷ってしまうこともあります。
そんな時はこの絵の中で遠くに向かうのはどちらの方向かを考えてみてください。
CよりB、BよりAが遠くに位置します。
パース定規を使って描こう
パース定規を使って描いていきましょう。
あらかじめ二点透視で箱を描いておきます。
ガイドを消失点の位置に作って「消失点を通る高さの線」にしたら、そのガイド上の任意の位置に傾斜の消失点を取ります。
傾斜の消失点を箱の消失点から上下に同距離に取れば、箱の向こう側とこちら側で同じ角度の傾斜が描けます。
左側の「消失点を通る高さの線」上に傾斜の消失点を取った箱も描いてみました。
消失点はどこ!?
傾斜は描きなれている人でもうっかり間違えて反対の方向に消失点を取ってしまうことがありがちなので注意が必要です。
ここで問題です。
間違いの例と正解の例の違いがわかるでしょうか?
間違いの例はAの方向に傾斜の消失点を取っているのがわかるでしょうか。
これでは絵を見ている人の手前の方に消失点があることになってしまいます。
正解の例は遠くへ向かうBの方向に傾斜の消失点を取っています。
迷ったときは「消失点は遠い方にある」ということを思い出しましょう。
作例
●脚立
脚立の傾斜は手前側と奥側が同じ角度です。
この絵の場合、手前は上に奥は下に消失しています。
●すべり台
すべり台は、登るところと滑るところの傾斜の角度が違います。
この絵の場合、登るところは下に、滑るところは上に消失しています。
※本記事は、「CLIP STUDIO PAINTで描く背景講座 デジタルパース塾 (廣済堂マンガ工房)」からの特別版抜粋記事です。
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