【目指せ!漫画家】徹底解剖!数字で読み解く新人賞!!!
マガジンの新人賞過去10回分をの新人賞を舐めるように隅々まで読み込み、導き出したデータ(取得日数:約30日)から徹底数値化!新人賞の傾向を暴き出す!新人賞でどんな作品が受賞したのか、その傾向が分かる…かも!?週刊少年マガジンの人気企画「漫画家への花道」からの特別掲載!
この記事では、過去5年間、計10回の新人賞で佳作以上(佳作、入選、特選)を獲得した作品、計66作品のデータを基に、新人賞マスターNが多分に主観を交えた解説を行っていく。
これを読めば、キミも賞が取れる……こともあるかもしれない!!
マガジン編集部員すら知らないデータの世界へ、いざ出発!!!
※本記事内のデータは、2016年16号雑誌掲載当時の情報を掲載しています。
10回分66作品の受賞ジャンルはこれだ!
新人賞では佳作以上を取ると雑誌でのデビューが確約されていて、毎回5本~10本程度の作品が佳作以上に選ばれている。
ジャンルなど絶対的ではないものはNが独断と偏見で判断した。
①ファンタジー 38%
やはりと言うべきか、ファンタジーが1/3以上を占める結果となった。
非日常の要素を加えると物語を描きやすいのかもしれない。
しかし、最も多いジャンルだからこそキャラクターの個性や見たこともない世界観が求められる。
キミだけの世界を見せてくれ!
②SF 14%
ロボットなどが登場する近未来的世界観で描かれている作品をSFとした。
ファンタジーと同じく見たこともない世界観が求められるSFだが、それに加えてロボットや機械といったメカの圧倒的なリアリティを追求してほしい!
③青春ドラマ 12%
キャラクター同士の繫がりを描く青春ドラマ。
友情であったり家族愛であったり、ともすればベタになりがちなジャンルだからこそ、キミだけの演出で読者を感動させてくれ!
④スポーツ 12%
スポーツマンガの多いマガジンでは意外と少なめの結果。
限られたページ数で、登場キャラクターから試合の勝敗まで描ききるのはなかなかできるものではない。
だからこそ、それができたら高評価だ!
⑤ラブコメ 9%
今回はラブコメにしか分類できない作品をラブコメとしたが、それにしても割合が小さい。
しかし、少年漫画の王道の一つであることには変わりないので、カワイイヒロインを描ければ受賞のチャンスが!
⑥その他 15% こんなジャンルもありました!
読んでるだけでよだれが出そう……。 料理マンガ。
謎を解き明かす名探偵になれ! ミステリーマンガ。
雄大な歴史の風を感じろ! 歴史マンガ。
その道では誰にも負けない! 職業マンガ。
マガジンであればオールジャンルOK!
他では絶対に見られないデータ大公開!!
■受賞年齢
受賞者の過半数を20代が占め、17歳での受賞がこの5年だけで5人もいる。
しかし、31歳での受賞者がいることを考えると、若いということは受賞の十分条件ではないことがわかる。
やはり最も重要なことは作品の面白さであるのだ。
■ページ数
40P台の作品が最も多い結果となった。
しかし、短いものでは15Pで佳作受賞という作品もあり、長ければいいというワケではないようである。
※現在の応募要項では50P以内という制限があります。
新人賞マスターNが選ぶ、気になるデータあれこれ!
全66作品中、以下の要素を持つ作品の割合を徹底調査した。
■ラブコメ要素
ヒロイン不在の作品が40%もあることは驚きだ。
新人賞においては、ヒロインの存在よりも主人公のキャラ立ちの方がより大事ということだろう。
読者に好きになってもらえるような魅力ある主人公を描いてほしい。
■お色気要素
ラブコメ要素アリが60%しかないことを考えると当然の結果だろう。
しかし逆に考えると、思わず見てしまうような魅力的なおっぱいやお尻を描くことができたなら、それはキミだけの武器になる。
■ハッピーエンド
ハッピーエンドで終わる作品がほとんどだ。
しかし、だからといってありきたりになってはいけない。
キミにしかできないひねりを加えてこそ、オリジナリティのある作品をつくることができるのだ。
■見開きページ
見開きはクライマックスに使われることが多い。
だが、見開きを使いさえすれば盛り上がるというワケではない。
そこに合わせて主人公の感情や物語の展開など、すべてのピークをもってきてこそ、真の力が発揮される。
■吹き出しの無いコマ
1個(1P平均)
吹き出しの無いコマはただの風景コマではない。
物語のリズムを整えるために加えたりキャラの表情をみせるために使ったり、かなり有益な働きをしてくれる。使いこなせばキミも漫画上級者だ!
■コマの数
5.3コマ(1P平均)
1Pあたり5~6コマの作品が多いようだ。
コマの数はもちろんだが、どんな風にコマを配置するのかを工夫することによって、ストレスなく読者に読んでもらうことができる。
どこが違うの?スポーツとラブコメ、徹底比較!
かなり対照的なスポーツとラブコメ。
でも実際何がどう違うのか、新人賞のデータから徹底的に比較してみました!
<比較データ>
※全体平均/スポーツ/ラブコメ
場面転換の数:8.86回/7.38回/10.16回
登場人物数:3.65人/4.50人/3.00人
吹き出しの数(1P平均):7.79個/8.13個/7.43個
コマの数(1P平均):5.30コマ/5.85コマ/4.99コマ
■スポーツ
主人公のタイプ:成長型63%
場面転換が少ない理由の一つに、物語終盤に試合があることが多いからというのがある。
作中一番の盛り上がりどころである試合こそ最もページ数を割くべきシーンであり、そうすると自然に場転の数が減ってくるのでないだろうか。
また、登場人物数が多いのは団体スポーツを描いた作品が多いからだと考えられる。
さらに成長型の主人公が多いことを考慮すると、スポーツ漫画において重要なことは試合の中での成長だと結論付けることができる。
仲間と共に苦難を乗り越え、成長する主人公にこそ読者は感動するのだ。
■ラブコメ
主人公のタイプ:一般人型67%
まず目を引くのが登場人物の少なさである。
ラブコメは通常1 組の男女の物語であり、2 人の間の関係性に注目してもらうためにキャラ数が少ないのだと考えられる。
また、吹き出しの数・コマ数が少ないのは、好きだけど近づけないとか、悲しいけど嬉しいといったような多面的な感情を読者に伝えるために、キャラの表情をより大きくはっきりと描いているためだと思う。
つまり、ラブコメにおいて最も重要視されるのは、主人公とヒロインの関係性であり、お互いに相手のことをどう思っているのかということこそが最重要事項なのだ。
物語のどの部分に重点を置くかで作品の描き方が大きく異なるということが分かった。
マガジンの新人賞は高確率で連載に繫がる!!!!
■連載獲得率
直近2回の新人賞を除いた佳作以上55本のうち、マガジン編集部にて連載を獲得した作家は37人。
佳作以上受賞者の実に67%が連載まで漕ぎ着けているのだ。
これは非常に高い数値であり、新人賞が連載に繫がることを示している。
つまり、マガジンの新人賞は魅力的な賞なのだ!!
■各回の連載獲得率
また、遡れば遡るほど連載の獲得作家の割合が高いことが分かる。
第86回に至っては受賞者の100%が連載を経験している。
つまり、現状は連載経験のない33%も、今後連載を獲得する可能性が高いと推測される。
つまり、マガジンの新人賞は魅力的なのだ!!
最期に
今回、数字で新人賞の全貌を明らかにしようと試みたが、その全てを解き明かせたわけではないように思う。
なんとなくの傾向はつかめても、数字がその作品の面白さを語ってくれるわけではないのだ。
数字から見えてきたのは、漫画という巨大な氷山のほんの一角に過ぎず、依然として僕らは漫画の真理にたどり着けていない。
だからこそ漫画は面白い。
だからこそ僕らは読むことをやめられない。
ぜひ面白い漫画を、あなたの考える面白い漫画を、マガジンの新人賞に投稿していただきたい。
お待ちしております!
(C)安田剛士/講談社 (C)瀬尾公治/講談社
※本記事は講談社「週刊少年マガジン」公式HP「マガメガ」内の新人賞企画「漫画家への花道」から特別掲載しています。