【大公開!】アートディレクターのお仕事内容vol.3 着色のチェックポイント
なかなか知ることのないイラスト制作現場の”アートディレクター”の仕事内容大公開!! 普段、あまり見ることのない作業内容を3回に渡って詳しくお送りします。今回は第3弾、着色工程をご紹介します!
※本記事は、イラストの仕事に役立つメディア『GIKUTAS Magazin』(https://gikutas.jp/magazine)からご提供いただきました。
【大公開!】アートディレクターのお仕事内容シリーズでは、『GIKUTAS』のADに突撃取材をして、なかなか知ることのない”アートディレクター”のお仕事内容や魅力をお伝えします!
第三回の今回の記事では、 「着色工程」で押さえておきたい4つのポイントを解説します!
初稿着色稿〜着色完成まで詳細に説明させて頂きます。
『GIKUTAS』のADと今シリーズのためにイラストをご制作頂いたVioletshitさんが実際に使っているテクニックもご紹介します!
弊社ADの業務内容だけでなく、イラスト制作のヒントにもなるかと思いますので作家さんも必見です!
前回の線画完成図がこちら!
▲線画完成図
そして今回制作いただいた「着色初稿」と「着色修正後」が下記です。
どんな点に注目してチェックしていたのでしょうか?
▲着色初稿
▲着色修正後
光源のチェック
とても重要になってくるのが光源設定かと思います。
ADの方でも着彩をチェックさせて頂くときは、第一にファーストインパクトとともに光源が合っているか、イラストにあった光源設定がされているかを確認します。
どこから光があたっているか曖昧だと、影がバラバラの方向からついてしまい立体感を出す事が難しくなってしまいます。
どの段階から光源を意識するのかは人それぞれかと思いますが、光と影の演出でよりキャラを魅力的に見せる事が出来たり、どういった状況かの説明になったりしてとても大切なのでラフの時からそれとなく考えておくことをオススメします!
<チェックポイント>
・光源はどこに設定されているか
・状況設定とあっているか
・強調したい部分に効果的か
・立体的に見えるか
・素材にあった光のあたりかたをしているか
<コツ>
・光源の目印をつけておくと、自分(作家さん)もADも分かりやすい
・形に惑わされず、見落としがちな「落ち影」に注意
では、上記を踏まえて実際に頂いた着色初稿チェックしていきます。
色味等の修正をお願いしつつ光源の設定をお願いする事になりました。
今回の光源に関して弊社ADはどのような修正点を上げているでしょうか?
<作家さんへのFBコメント>
全体的に物の立体感やハリを出すことで質感が綺麗に表現できていると思います。
部分的にみていくととても丁寧に塗られているのですが、大きな陰影がわかりずらくなっている印象です。
また、光が身体にさえぎられて袖に落ち影がつくと思いますので、そちらも合わせてのご調整お願いいたします。
▲陰影の位置設定
この様にすると影が足りない部分や光源に沿っていないと思う部分がわかりやすくなります。
また、小さなものによっては陰影が反転してしまっている部分があるのでそちらの修正をお願いします。
彩度コントラストのチェック
着色には彩度も大事ですよね!
イラストを描くとき、なんとなく影色などを選んでいませんか?
そのときの気分で影色を決めていると、可愛い絵にしたいのに重厚感ある雰囲気になったり、今風のきらきらした雰囲気のイラストにならなかったりと、意図した表現が出来なくなってしまいます。
「この色の影はこの色!」といった固定観念や、影色を明るくしようとして彩度を上げすぎてしまうなど、陥りがちな点も気を付けたいところです。
<チェックポイント>
・影色の設定がくすみになっていないか
・補色を使う場合、周りの色との関係性があっているか
<コツ>
・参考画像や同ゲームイラストを横に置きながら作業する
・ちょこちょこ客観的にみる癖をつける
<作家さんへのFBコメント>
現在の色を見てみると、黄、赤の影色や空気遠近の部分に青が使われているため、全体的に色がくすんで見えるので青味をとってください。
影色にベース色の補色となる色を乗算でのせると特にくすんで見えるので気をつけて頂きたいポイントになります。
また、白の部分に緑〜紫の色味が多く使って頂いているのですが、紫味のある色に統一して頂いた方が主張する色味の多いイラストの場合はいいかと思います。
質感のチェック
現在流行のスマホゲームイラストは、装飾が多い傾向にありますよね?
物体にはそれぞれ質感の違いがあります。
例えば金属と布だと、反射の仕方も正反射光や拡散光で違いますし、柔らかさも大きく変わってきます。
質感は光があって初めて視覚的に認識できるので、ここでも「光源」を念頭に置きながら塗り込んでいきます。質感をイラストで説明できるようになったら、スキルとしてとても心強い武器になります。
<チェックポイント>
・金属・布・髪など、それぞれの質感があっているか
・軽やかさや重厚さが表現できているか
・一つ一つの質感に集中しすぎて、光源が曖昧になっていないか
<コツ>
・物の質感に合わせた、ハイライトや影のバランス
・自分の中で質感設定をしっかり決める
<作家さんへのFBコメント>
少しだけ金属部分の装飾や刀の質感が分かりにくい印象です。
また反対に脛部分の光沢の表現のコントラストが強いため金属の質感に見えている箇所がありますので、ハイライトと影の強さをご調整お願い致します。
上記の参考画像のように金属は光のあたっている所のハイライトが強く、シャープに入ります。
質感によってハイライト、影の入りかたに特徴があると思いますのでその部分を気をつけて頂くといいかと思います!
遠近感のチェック
遠近感も世界観を表現するうえで、欠かせない部分ですね。
決まった大きさの中でどれだけ空間を広く使えるか、躍動感を出せるかが腕の見せ所です!
良く使われる技法のひとつに「空気遠近法」があります。
遠景の対象物はうっすらと青みがかり霞んで見えますが、近づくにつれて輪郭がはっきりし、色も鮮やかになっていきます。これが「空気を描く」ということです。
煽りや俯瞰に比べ、真正面からのアングルだと差をつけにくくなるので、見えてくる順番を意識しましょう。
<チェックポイント>
・強調したい場所が魅力的に見えているか
・最大限に空間を使えているか
<コツ>
・空気遠近法を使う
・見えてくる順番を意識する
<作家さんへのFBコメント>
影色の所でご指摘させて頂いた部分と重複してしまいますが、現在全体的に青味を使われていて、前後感を出す為の空気遠近の意味があるかと思いますが、立ち絵のイラストの場合ですと色味が強くなりすぎるので少し違和感が残るため、もう少し抑えて下さい。
また質感を出すために腰の紐部分を細かく描いて頂いているのですが、遠い所にあるものなので、描き込みの情報量を少し減らして頂いてもいいかも知れません。
【まとめ】
いかがでしたでしょうか?
塗り方は作家様の数ほどあるかと思いますが、基本的な技法をしっかりと理解することでより技術の幅が広がりそうですね!
作家さんは描かれるキャラに愛着を持つ方が多いと思います。
そのため、部分的な細かい作業に走って大きな陰影を作る事を躊躇してしまうかたもいるかと思うので、その部分を修正画像などでお伝えして修正して頂く事がADの仕事でもあります。
ADは作家さんの作品を客観的に見て僭越ながら助言をさせていただき、力を合わせて制作をするという役割を担っていると思います。
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