【創作資料】キャラクターに感情を宿す「表情」の描き方
イラストやマンガを描くうえで、キャラクターが何を考えているのか、どういった感情なのか伝えるためにとても重要な「表情」。今回は基本的な笑った顔と怒った顔の描き方と、強弱のついた魅力的な表情の描き方など分かりやすくご紹介します!
喜ぶ〈基本〉
「喜ぶ」表情は、嬉しいことや楽しいことがあったときに出る表情です。
「喜ぶ」表情の基本でもある「笑顔」は頬に力が入り、口角が持ち上がります。
コミュニケーションの中でも好意、敵対心のなさや安心感を相手に与える表情です。
▼正面
「笑顔」と聞いて思い浮かべるのは、にっこりとした三日月型の目と半月型の口の表情です。
まずはこの表情を「喜ぶ」表情の基本の1 つとして解説します。
▼斜め・横
▼デフォルメ表現
「喜ぶ」表情の流れ
STEP1:
頬に力が入ると、下まぶたと口角が持ち上がります。
頬に押されて下まぶたが持ち上がるイメージです。
通常のまばたきは、上下のまぶたが同時に近づくので笑顔のときとは動きが異なります。
- 眉毛はあまり動かない
- 下まぶたが持ち上がる
STEP2:
さらに頬が持ち上がって下まぶたと口角が持ち上げられます。
ここまで口角が上がると、口を開いた方が表情の動きとしては楽になります。
STEP3:
目をつぶると眉尻が下がり、笑顔になります。
キャラのイメージが崩れないよう形に気をつけながら口を大きく開くと明るい表情になります。
笑みと笑い
笑顔の中には「笑み(Smile)」と「笑い(Laugh)」があります。
笑み(Smile)の表現
人とのコミュニケーションのために、敵対心のなさや安心感を与える笑顔が「笑み」です。
にっこりとほほえみかける表情は、相手の警戒心を解く表情ともいえます。
- 頬に引っ張られて口の形も三日月に見えます。
- 眉尻と目尻が下に引っぱられるような三日月の形にすると表情が柔らかく見えます。
笑い(Laugh)の表現
おかしくて吹き出してしまう「笑い」は笑う対象があって出てくる表情です。
息を吐き続け苦しくなり、苦悶の表情になることも。
お腹を抱えて前屈みになったり、体の動きを入れるとより効果的に表現できます。
- 眉間に力が入って眉はハの字や左右非対称になったりします。
- 頬が持ち上がりますが、自分の意志では止められないときほど頬に力が入り痙攣のようになります。
さまざまな「喜ぶ」表情
ひとくくりに「喜ぶ」表情といってもさまざまなシチュエーションがあります。
一例ですが「ゆっくりと感情がこみ上げる表情」と「不敵な笑み」を解説します。
ゆっくり感情がこみ上げる表情
嬉しいことを認知するまでに数秒、間があったときの笑顔の表現です。
- 目を見開くとき、眉も上がります。
- 「嬉しいこと」が何なのか情報を得ようと、目を大きく開いています。
- 少しずつ頬が持ち上がって笑顔の表情に変わっていきます。
- 目を見開くとき、息を吸い込むために口も開きます。
不敵な笑み
相手を見据えて威勢を張るとき、自分の自信を見せつける笑顔の表現です。
- この表情は上目遣いが効果的です。本来は動かない眉をぴっと上げることで自信があるイメージを伝わりやすくしています。
- 頬は上げるというよりは横に広げるイメージです。
怒る〈基本〉
「怒る」は威嚇でもあるので、相手に感情をぶつける表情です。
感情をわかりやすくするためにデフォルメや漫符で強調することもよくあります。
▼正面
「怒る」表情は各パーツが沈み込みます。
眉間に力が入り、目尻がつり上がった表情は「怒る」表情の基本の1 つです。
▼斜め・横
▼デフォルメ表現
「怒る」表情の流れ
STEP1:
少し不機嫌な程度だと、素の顔とあまり変わりがありません。つまり、力を抜いた顔は不機嫌な表情と紙一重ともいえます。
力を抜いているので、目もぱっちりと見開きません。
STEP2:
眉間と眉の部分に力が入ってくると怒りのボルテージが上がっていることがわかります。
奥歯にも力がはいるため、口角は下がりはじめます。
STEP3:
本来、眉に力が入ると目を大きく開くことはできません。
しかし、目を見開くと黒目が小さく見えて「怒っている感」が増すので、目を見開いて怒る表現も効果的です。
- 鼻腔の横が上がって鼻の穴がよく見えるようになりますが、描かなくてもOK です。
- 奥歯を食いしばっているのがわかるように、口角を下げます。
シチュエーションの違いによる「怒る」表情の見せ方
シチュエーションによって「怒る」表情の表現もさまざまです。
ここではデフォルメした目や漫符を使った「怒る」表情を紹介します。
▼ムッとする
- 敵意などネガティブな感情のときは瞳孔(または黒目全体)を小さく描くと効果的です。人間の黒目の大きさは変わりません。あくまでデフォルメです。
- 眉は眉間に引っ張られ、下に沈み込みます。その影響で上まぶたも一緒に沈みます。
- 口元は脱力状態で、素のままです。
▼怒りをあらわにする
- 眉の形を極端に逆ハの字にして、目もそれに合わせてつり目にします。実際には目尻が上がっているのではなく、眉間が沈み込んで下がるのでそう見えているだけです。その形を誇張して、目尻が持ち上がるようにデフォルメすると効果的です。
- 口の形も左右非対称にすると、歯を食いしばっている感じがでます。
▼怒りをおさえる
- 血管の浮き出る様子やネガティブな感情を表現する青ざめの縦線は、半世紀以上使われている有名な漫符です。
- 目をつぶると怒りの感情がわかりにくくなりますが、漫符を使うことで怒りをおさえて無理をしている状態を表現しています。
- 歯を食いしばりながら口角だけを無理に上げています。とても屈折した表情になります。
▼怒り爆発
すべてのパーツを誇張した表現です。
怒りの表情はやり過ぎるとギャグのようになるので、程度が難しい所です。
- 瞳をほとんど点にすることで「我を見失う」ほどの状態を表現しています。
- 顔からはみ出した口はギャグ的には定番の表現です。
体のパーツを活用する
感情の表現は表情だけではありません。
手や肩などの体のパーツを使うことで、感情をより強く表現することができます。
さらに「髪」を使い感情を表現することもあります。
実際に髪は感情によって動きませんが、そこは絵ならではの演出として活用してみましょう。
表現方法
「驚く」表情を例に見てみましょう。同じ表情でも、「髪」「手」「肩」を使うことでより感情を強くしたりニュアンスを追加したりできます。
▼通常
眉を上げ目を見開きます。口も大げさに開け表情だけでも十分驚きを表現できています。
▼肩
肩を上げることで、少し前のめりな印象になります。
▼手
口元に手を持って行くことで、驚きの度合いを上げています。
少し上品な印象のふるまいから、女の子の性格を感じさせることも狙えます。
▼髪
表情は同じでも髪に動きをつけることで、体がビクッと動くほど驚いたような表現になります。
驚きをより強く表現しています。
※本記事は、『デジタルイラストの「表情」描き方事典 想いが伝わる感情表現53 (デジタルイラスト描き方事典) 』からの特別版抜粋記事です。
キャラクターの想いが伝わる表情を描くために知っておきたい知識を、感情表現ごとに事典形式で分類して解説します。
笑った顔や怒った顔などの基本的な表情から、さまざまな感情が混ざった表情まで幅広く紹介します。
作例を870点以上掲載し、コメントをしっかりと入れて、さまざまな魅せ方・考え方のアイデアが得られるようにまとめました。
気に入った表情をまねてみたり、全体を読んで表情を描く上でのヒントにしたりと、多様な使い方でご利用いただけます!
『デジタルイラストの「表情」描き方事典 想いが伝わる感情表現53 (デジタルイラスト描き方事典) 』(SBクリエイティブ)