作品の中に便利なキャラを用意する!赤坂アカ先生のキャラクター講座
”巧みな心理戦"が大人気の新感覚ラブコメ「かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜」の作者・赤坂アカ先生が、新人作家三人の質問に答える!「キャラクターがストーリーの中で動いてくれない…」という新人作家のお悩みには「ある役割」を持ったキャラクターが効果的! 具体な作品を例にキャラクター作りの秘訣を伝授してくれます!
キャラクター作りの秘訣に迫る!
赤城: 自分のマンガはストーリーの軸にキャラクターがただ動かされてるだけのものになってしまうことが多いです。どうしたらいいでしょうか?
赤坂先生(以下、赤坂): キャラクターとストーリーには相性があるはずです。たとえば、萌えマンガによく登場するようなふんわりキャラが「世界の脅威」なるものに晒されたとします。
おそらく、そのふんわりキャラは振り回されるだけで、自分から何かをしたいなどと考えて動いてはくれないでしょう。
つまり、「話の軸に動かされないキャラクター」すなわち、「ストーリーの牽引役」を用意すれば解決するように 思います。
『涼宮ハルヒの憂鬱』のハルヒとか「天元突破グレンラガン」のカミナとか、ああいう「主人公のことを有無を言わさず引っ張っていく」キャラクター。
牽引役をどこかに用意することで、作者の思惑ではなく「キャラクターにキャラクターが動かされる」という構図に変わるので、非常に便利だと思います。
この作品だと、書記ちゃんがこの役割を担ってくれていますね。
要は作者の都合をキャラクターに押し付けるのではなく、作者の都合を兼ね備えたキャラクターを作品の中に用意して、そこに全部引っ張らせるということをすればよいのではないでしょうか!
▲第7話の最終ページ。確かに、かぐやと会長の心理戦を見事に”ぶっこわして”くれている。
新芽: キャラクターにセリフを言わせてしまっているというか、そのキャラクターが言いそうなセリフを作れないのですが…
赤坂: おそらく、原因はもうちょっと別のところにある気がします。
たとえば、その物語が持っている「説明しなくてはいけないノルマ」に対して、単純にページ数が少ないとか。
大前提として、絵で説明できるわけですから、絵で描いても足りない、それでもキャラに台詞を強制してしまうということは、設定に無理があるのかもしれません。もしかすると、設定をシンプルにした方が早いかも。
僕だったら物語をもうちょっとシンプルにするか、ページ数を増やすか、不要な部分を削って説明に充てると思います。
でも、説明に充てなきゃいけないということは、つまり設定過多であるから設定を減らすかな…。
上野: キャラクターを考える発想法ってなんですか…?
赤坂: 僕、「お話先行型」なんですよ。
松井優征先生の『暗殺教室』は、起立・礼・銃構えるシーンが最初に浮かんで誕生した、という話を耳にしたことがあります。
①まず最初にシーンが浮かぶ。
②そこに、どういうキャラクターをはめ込んだらそのシーンが最も格好良く見えるのかを逆算する。
そうして生まれてきたのが「殺せんせー」だったそうです。
実は僕も全く同じ意見で、思いついたシーンが活きるキャラクターを考えます。
そうすると、意外とクセのある良いキャラクターが浮かんできたりするので、最初から「変なキャラクター」を考えようとはしないですね。
新芽: 会長とかぐや様は、どのような着想から生まれたんですか…?
赤坂: 僕、前住んでた家で「燻製」を作っていたんですよ。「高校生の頃に戻りたいなー」とか思いながら(笑)。
「もし今高校生に戻れたら、女の子と二人で帰りたいなあ」「僕だったら超面倒くさく、会長みたいなこと考えて帰るんだろうなあ」なんて妄想していました。
そして「もし女の子側も同じように面倒くさいことを考えていたら面白いなあ」と。これが原点です。
▲とにかく面倒くさい二人。これも赤坂先生の内面から生まれているとは…!!
上野: コーヒーが好き、ずっと目の下にクマがある、というのは…?
赤坂: あ、それ僕ですね。
担当: 生徒会もね?
赤坂: あ、そうですね。確かに。
上野: 自分の内面や経験をキャラクターに反映することが多いですか?
赤坂: 基本的に嘘が無いキャラクターは内面からできているように思います。
確かに…今振り返ってみると、意外と自分の引き出しから出していますね!
まとめ
①「説明しなくてはいけないノルマ」を意識する。
② 作者の思惑ではなく、「キャラクターにキャラクターが動かされる」という構造に!
③ 自分の内面を上手に投影しよう!
<作家紹介>
赤坂アカ
2015年5月よりミラクルジャンプにて『かぐや様は告らせたい〜 天才たちの恋愛頭脳戦〜』を連載開始。
『IA-ARIA ON THE PLANETES-』のキャラクターデザインなども担当。
イラストレーターとしても大活躍中。
上野モウ(左)
2016年3月期シンマン賞で『サイアノタイプ』が期待賞+審査員特別賞を受賞。今回インタビューに初参加
赤城遼(中央)
2016年11月期シンマン賞で『人望ポーカー』が期待賞を受賞。苦手なキャラクター作りを打開できるか…?
新芽(右)
2016年1月期シンマン賞で『parasite girl』が期待賞を受賞。現在読切掲載を目指してネーム鋭意製作中!
※本記事は集英社週刊ヤングジャンプ公式サイト内の月例新人漫画賞【シンマン賞】特別企画、『人気漫画家に学ぼう!』赤坂アカ先生へのインタビュー第一週を特別掲載しました。
第2週~第4週でも引き続き赤坂アカ先生が新人作家の気持ちに寄り添った授業を展開します!気になる続きは(http://youngjump.jp/shinman/)をチェック!
(第37回 審査員:赤坂アカ 新人漫画家:上野モウ、赤城遼、新芽)
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