【人気漫画家に聞く】鈴木央流、絶対に役に立つ漫画上達術!!
『七つの大罪』を大人気連載中の鈴木央先生に、新人時代の練習法や体験談を伺いました!! 新人賞受賞を目指す新人作家の役に立つ漫画上達術を紹介します。 週刊少年マガジンの人気企画「漫画家への花道」からの特別掲載!!
最初は無茶苦茶でいい
――処女作『Revenge』で、いきなり「週刊少年ジャンプ」のホップ★ステップ賞を受賞した鈴木先生。ずばり、その秘訣はなんだったと思いますか?
描きたいものを素直に描いたことだと思います。今思えば、初めて描いた『Revenge』は無茶苦茶な話だった。
お姫様と結婚するため、ある王国にやってきた隣国の王子が、その国の奴隷制に怒って王様を殺してしまうという話。少年漫画らしくはないですよね。
「こんな作品、よく堂々と出してきたな!」と思われたかもしれない。
でも、「こういうのが受けるんでしょ?」なんて考えて描くよりは、熱量を持って、描きたいものを描く方がいいと思います。
▲これが『Revenge』の原稿だ。受賞の決め手は作家の熱量!!!
――週刊少年マガジン編集部は、まさにそういう少年漫画の枠から飛び出るような作品を求めています!
最初は描きたいものを描きたいように描くべきです! とにかく、描かないと始まらないですから。
僕なんて、最初は下描きすらしないで描いていましたから。下描きをしてからペン入れをする、という単純なことすら、わからなかったんです(笑)。
でも、描きたいものさえあれば、それでいいんです。たくさん描いてください。
――受賞後の話をお聞かせください。
僕の場合は『Revenge』が受賞したことをきっかけに担当さんがつきました。
高校卒業後に東京に出てきて、アシスタントに行ったりしながら、担当さんと頻繁に打ち合わせをしていました。
自分にどんなジャンルが向いているかとか、自分が描くものの方向性を考え始めたのは、担当さんがついてからです。当時は週に3、4回はネームを見せに行っていましたね。
鈴木央先生が高校生の時に描いた全31ページの処女作。
「週刊少年ジャンプ」でホップ★ステップ賞を受賞した。
【あらすじ】
キリア姫との政略結婚のため、ブラックサンド王国へやってきた隣国の王子リーベル。
リーベルは、この国が奴隷制をとっていることに激怒し、奴隷たちを逃がそうと決意する。
最終的に、リーベルは国王を殺し、自らが王位を受け継ぐことで奴隷制を廃止することに成功する。
鈴木央先生直伝!! ”一番の漫画の練習法”とは!?
――毎日のようにネームを持ち込んでいたんですね。
新人さんにおすすめしたいのは、とにかくたくさんネームを描いて、持ち込みをすることです。
それが一番の漫画の練習法だと思います。
描きたいもののネームを、とにかくたくさん描く。色々な種類のネームを作って持ち込みをする。
そうして意見をもらうことで、自分に向いているものが、わかるようになってきます。
といっても、言われた意見をただ鵜呑みにするわけでもなくて、ダメだと言われても自分で自信があるものだったら、何度も直して持っていったりもしました。
新人さんには、担当さんとたくさんやりとりをしてほしいですね。
――絵はどのように練習していましたか。
最初は人物のデッサンをちゃんとできるようにしたほうがいいです。
デフォルメから入るとリアルな絵は描けないけど、リアルなものが描ければ、デフォルメも描けますから。
新人さんは、イラスト的な絵を練習するよりは、まずデッサンから始めるのがいいと思います。
僕は幼いころから、人物を描いたり風景を描いたり、デッサンはよくしていました。
先生おすすめの漫画の入門書…それは「医学書」!?
新人時代には、人体の構造を勉強するため医学書を買って読んでいたという鈴木央先生。
なによりも、まずはリアルな人物を描けるようになることが大事だという。
皆も医学書を読んで、人間の関節の位置、筋肉の付き方、骨格を理解し、正確な人体を描けるようにすれば、鈴木央先生のような迫力あるバトルが描けるようになるはずだ!!
キャラクターの数を絞る
――新人賞は、50P以内の読み切り作品という規定がありますが、新人さんが読み切り作品を描くときに気を付けるべきことはありますか?
主人公を明確に決め、キャラクターの数を極力絞ることです。
なぜなら、限られたページ数で描ける内容は多くないからです。キャラクターを掘り下げ、魅力的に描くためにも、キャラクターの数は多すぎないほうがいいです。
理想は主人公側2人、ライバル1人くらいでしょうか。
あとは、描きたいテーマをちゃんと決めて、必要以上にネタを盛り込み過ぎないことですね。
――先生が『七つの大罪 —外伝— バンデット・バン』(※)という読み切りを描いたときのことを教えてください。
※『七つの大罪』第4巻に収録の特別読み切り。ファンの間で絶大な人気を誇る。
主人公であるバンを描く上で誰が必要なのか、ということから考え始めました。
そうすると、エレインは欠かせない。となると、魔神が必要だな、と。登場人物はこれで全てです。
ただ、2人の話に焦点をあてるために、魔神は最後まで出さなくていい。
キャラクターを絞れば絞るほど、キャラクターに何かをさせないと話が進まなくなりますよね。
そうしてキャラクターを行動させることが大事だと思います。
新人さんは会話劇になってしまうことが多い。でも、言葉でキャラクターを説明するのって格好悪いと思うんです。
絵と展開でキャラクターに興味を持ってもらえるようにしてほしいと思います。
弱点を克服するには”逆の極端”をやれ!!
――”会話劇になりがち”といった弱点を克服するためには?
“逆の極端”をやってみてほしいと思います。
つまり設定が多い人なら、設定をなくしてみる。会話が多い人なら、会話なしでやってみる。たとえば、片方はしゃべらないとか。しゃべらないと、行動するしかない。
何か指摘されたら、それをなくしてみてください。
そのためにも、まずはたくさん持ち込みをして、他人の意見を聞いてみてほしいですね。
▲読み切り『バンデッド・バン』の冒頭。目の前に現れた妖精エレインを無視し、お目当てのお宝「生命の泉」に目を向けるバン。行動でキャラクターを描いている。
――最後にマガジンで新人賞を目指す新人さんに一言お願いします!
最初は、とにかくあなたの描きたいことをぶつけてください! そして、たくさん描いて、たくさん持ち込みをすることです。
皆さん、がんばってください!
<作家プロフィール>
鈴木央
「週刊少年ジャンプ」にて、『Revenge』でホップ★ステップ賞を受賞。同誌にて、『ライジングインパクト』で連載デビュー。後に「週刊少年サンデー」で『ブリザードアクセル』、『金剛番長』を、「週刊少年チャンピオン」で『ちぐはぐラバーズ』を連載。
現在は「週刊少年マガジン」で『七つの大罪』を大人気連載中。
(C)鈴木央/講談社
※本記事は講談社「週刊少年マガジン」公式HP「マガメガ」内の新人賞企画「漫画家への花道」から特別掲載しています。