【人気漫画家に聞く】真島ヒロ流キャラ作り4つの極意!!
漫画家を目指す人、面白い漫画を描きたい人は必見! 空前のヒット作『FAIRY TAIL』の真島ヒロ先生に、個性豊かなキャラクターを生み出すためのキャラ作りのコツを伺います! 週刊少年マガジンの人気企画「漫画家への花道」からの特別掲載!
★極意その1:キャラはインパクト!
——魅力的なキャラを作るには、どうしたらいいでしょう?
真島先生(以下、真島): 僕が気をつけているのは、キャラの強烈なインパクトが作品を読んだ後に、残るようにすることです。
名前や容姿もそうだし、ナツみたいに元気いっぱいなキャラにしてみたり、ハッピーの「あい」っていうセリフみたいに、そのキャラだけの個性的な特徴を持たせるにはどうしたらいいか考え、キャラを立たせるようにしています。
——そのキャラの強烈な個性が『FAIRY TAIL』では、さらに増幅して感じられます。何か工夫があるのでしょうか?
真島: 登場シーンを大事にしています。初登場のインパクトは重要なので。
例えばナツの初登場は、いきなり乗り物に酔っているところから始めてるんです。
弱いと思っていたヤツが実は強かったってパターンですね。
乗り物酔いで弱っているナツを登場させて、読者に興味を持ってもらい、あとから強いシーンを見せることで、ナツというキャラに強烈な印象が出るようにしました。
ナツ初登場の場合
弱そうに見えて…
乗り物が苦手のナツがダウン中のシーン。とても強そうなキャラには見えない。
メチャクチャ強い!
乗り物酔いが治まればナツの本領発揮!初登場時の印象を払拭している。
最初と後での登場シーンでギャップを作ることにより、読者に意外性を感じてもらい、キャラの印象を強くしているのだ。
★極意その2:キャラの”絵面”を想像せよ!
——真島さんがキャラ作りで大事にしていることは?
真島: 僕はやっぱり絵面ですかね。
絵面というのはデザインではなくて、漫画にした時にキャラがどういうポーズがとれて、物語でどう動くかということです。
僕がキャラをデザインする時は立ったままの絵を描くことはないんですよ。
いろいろポーズをつけて、コマを割ったらどうなるか、物語に登場させたらどう決まるかを考えます。
キャラの考え方三か条~真島先生のキャラの考え方をご紹介!~
【ひと~つ】 キャラにセリフをつけてみよう!
真島先生は落書きが大好きで、仕事の合間や寝る前にも落書きをしている。
落書き段階で面白いセリフが思いついたら、キャラに一歩近づくのだそうだ。
▲一夜は、バカキャラの集大成と語る真島先生。「香り(パルファム)」というセリフからフキダシにまでこだわったキャラ。
【ふた~つ】 キャラが動いてる姿を描こう!
立ち姿だけでキャラを考えるよりも、実際に漫画に登場させた時、キャラがどう動くか、どんなセリフを喋るかなど、描きながらキャラを作ってみよう。
▲これは読み切り版『FAIRY TAIL』のナツの初期設定。初期のナツは精霊で、頭に角が生えていた。この初期設定だけ見ても、色んな表情のナツが描かれている。
【み~っつ】 設定は後から考える!
設定は見切り発車が多いという真島先生。
エルザを考えた時は「ナツより強いキャラ」という一番根本の設定だけを決め、あとはそのキャラのノリや他キャラとの掛け合いに委ねた。
その結果、義眼の右目からは、涙が流れないという設定が後から付け加えられたのだ。
▲エルザは奴隷時代に片目だけ義眼になってしまった。この哀しい設定がエルザという心が強いキャラの魅力をさらに深くしている。
★極意その3:読者の感情を掴むキャラ作り!
——読み手のツボを突くこと、意表を突くこと、どちらも巧みなキャラが多いですよね?
真島: 最初は自分の好き勝手から始まるんですけど、最後の調整をする時はこういうふうにしたら読者が喜ぶんじゃないかなとか、こういうのにしたら嫌がるかなとか考えて微調整します。
やっぱり、そこが第一ですからね。
それでも、実際にどう評価されるのか、わからないから難しいところです。
——読者を意識して、していることは?
真島: ナツって何しでかすかわからないぐらい、メチャクチャで元気なキャラなんです。
ナツが動くと読者に「コイツ迷惑だな」とか、「おもしろいことしたな」とか、笑ったり、驚いたりして欲しいと考えていたので、ナツの行動が読者にわからないようにするため、作中ではナツのモノローグが一切、入らないようにしています。
モノローグを入れない演出とは?
ナツが第三話でバルカンと戦っているシーン。
斧の刃を熱で溶かして脱出! 火の滅竜魔導士・ナツならではの脱出方法だ。
あえてナツのモノローグを外し、思考を見せないことで、危機的状態からどうやってナツが抜け出すのか、読者に期待感を持たせている。
★極意その4:まず、自分の一番好きな顔を描くこと
——見た目に特徴を持たせるにはどうしたらいいですか?
真島: まず、自分の描くフェイバリットの顔を持つんです。
そこから少しずつ顔を崩していき、服装などを色々考えて見た目に特徴をつけていくんです。
最終的にはルーシィみたいに、髪型を変えても同じキャラだとわかるようにします。
僕は女の子のバリエーションが少ないんで、気をつけないと可愛い娘はみんな同じ顔になるんですよね(笑)。
ナツの特徴をチェック!
シルエットになってもどのキャラかわかるぐらい、特徴をつけるのがポイントだ!
真島先生はシルエットでもわかるようにするため、ナツの髪型を何パターンも考えていたんだって。
——セリフで気をつけていることは?
真島: 一人称とか口調だとかを気をつけるようにしていますね。
『FAIRY TAIL』の登場キャラは二人称も全員決まっています。語尾もなるべくキャラによって変えようと意識しています。
▲ルーシィが持っている鍵のひとつ巨蟹宮の星霊・キャンサーの登場シーン。
語尾を「~カニ」と思わせといて「~エビ」という不意打ち。
語尾を上手く活かし、ギャグとキャラ立ての両方をこなしている。
——一言、全体的なアドバイスをお願いします。
真島: ゲームでも漫画でも映画でもなんでもいいので、いろんなメディアに触れてみてください。小説もおすすめです。
シーンを自分でイメージするので、小説を読みながら、登場してくるキャラを頭に描いて、実際に描いてみるのもいいと思います。
映画やドラマやゲーム等の視覚的に入ってくるものも、自分の中にストックしてみてください。
漫画だけじゃなく、様々なメディアに触れてアイディアの引き出しをいっぱい持てるようになると、自分だけのキャラが作れるようになると思いますよ。
——真島ヒロ先生どうもありがとうございました!
<作家プロフィール>
真島ヒロ
1998年、『MAGICIAN』で第60回新人漫画賞入選を獲得。
大ヒット作『RAVE』の連載等を経て『週刊少年マガジン』にて『FAIRY TAIL』を2006年~2017年34号まで連載。マガジンの看板作家の一人である。
週刊少年マガジンコミックス『FAIRY TAIL』は第1巻〜61巻まで絶賛発売中!
(C)真島ヒロ/講談社
※本記事は講談社『週刊少年マガジン』公式HP「マガメガ」内の新人賞企画「漫画家への花道」から特別掲載しています。