イラストレーターになるには？－仕事の心構え、指示書の読み方－

 

絵を仕事にするために必要なたった1つの心構え

 

「イラストレーター」という資格はない

イラストレーターは免許を取得するものではありません。

 

国内だとpixivやTINAMI、海外だとDeviant Artといったお絵描きサイトの普及により「絵師」「イラストレーター」を身近に感じる機会が増え、「自分もイラストを描きたい！イラストの仕事をしたい！」という方も多いのではないでしょうか。

 

ここでは「イラストレーターになるには」というテーマでお届けします。

まず“ファンアート”と“仕事絵”の違いについて考えてみましょう。

 

 

ファンアートと仕事絵の違い

 

お気に入りのキャラクターのイラストを、自分なりのテイストやアレンジで描いてみんなから評価されるのは嬉しいことですよね！

でも仕事絵の描き方の場合、事情は少し異なります。

 

「バトルゲームで新キャラクターを作る」

 

という仕事を受けたとしましょう。

たくさんのイラストレーターが参加するプロジェクトの場合一人のイラストレーターが自分のテイストを優先し、自由に描いてしまうと下記のような問題が起こります。

 

 

真ん中のキャラクターが他のキャラクターから浮いてしまいゲームとして、非常にアンバランスな仕上がりになってしまいました。

このようなことが無いように、仕事絵のレシピは

 

• 仕様書：ゲームの世界観、設定資料
• 指示書：キャラクターの詳細（性別、体系、スペック、ポーズ、属性など）

 

上記の2種類で出来ています。

 

事前に全てが揃っている場合もあれば制作の進捗に合わせて作っていく場合もあります。

その際に必要とされるのが「少ない最低限の資料から、依頼通りの作品に仕上げる力」です。

これは“クライアントの意図を汲み取る”というスキルでプロの現場では特に必要とされる技術の1つです。

 

 

先ほどのキャラデザを、他のキャラクターを参考に頭身、顔立ち、描きこみ要素を揃えて修正しました。

世界観に沿ったキャラクターになり、統一感が出ましたね。

 

• 良い作品＝自分が満足する作品

 

ではなく

 

• 良い作品＝クライアント、ユーザーの期待に応える作品

 

という点が“ファンアート”と“仕事絵”の大きな分かれ目と言えます。

 

この他にも、個人の絵柄をいかした『絵師指名』のお仕事も存在します。

しかし、この場合も「クライアント、ユーザーの期待に応える」点は一緒です。

また、画力を上げてどんなテイストにも揃えられるようになればお仕事の幅もより広がりますね。

 

是非、自分の好きなキャラクターのファンアートだけでなく色々なジャンル・テイストのイラストに挑戦して日頃からイラストの引き出しを増やしておきましょう！

 

 

「指示書」の読み解き方は“想像力”で決まる

 

イラストの仕事で頻出の「指示書」をモチーフに

誰でも名乗ることができる「職業：イラストレーター」という肩書き。

しかし、イラストを仕事にすることは非常に難しいですよね。

 

以下ではプロの現場でも使用されている、指示書の読み解き方について解説します。

 

イラストのレシピ：指示書

キャラクターの性別、体型、衣装などの詳細が書いてある指示書。

文字の情報をイラストに落とし込む思考プロセスを考えてみましょう。

 

例として「乙女ゲーム」と呼ばれる女性向けの恋愛シミュレーションゲームの指示書をご用意しました。

 

• 名前：海藤 類(かいどう るい)
• 性別：男
• 年齢：23歳
• 身長：170cm、中肉中背
• 職業：総合商社の営業
• 衣装：スーツ
• 甘え上手な後輩、可愛い見た目。
• 柔らかな物腰の自由気ままな猫タイプで、社内のアイドル。
• 実はライバル企業の社長の一人息子。潜伏して主人公の会社をリサーチする、したたかな一面を持つ。

 

 

連想は論理的に！

 

先ほどの指示書からキャラクターデザインを考えてみましょう。

 

ゲームのジャンルから連想する 

乙女ゲームのターゲットを考えましょう。

プレイヤーとして想定されるのは10代～30代の女性です。

この層が好むような男性像を考えると少女漫画で出てくるようなイケメンが想像できますね。

 

 

このように、ボリュームゾーンとなるターゲット層に『刺さる』、つまり人気が出そうなキャラクターになるように意図的に制作できると良いでしょう。

 

名前から連想する 

名前からキャライメージを考えてみることも有効です。

 

「海藤 類」 

• 名前が珍しい＝個性的
• 類＝女性とも男性とも取れる中性的な名前。

 

などの点から

 

• 個性的で不思議な雰囲気
• 男性的でない、美青年系

 

などの外見を連想します。

 

職業、年齢などのスペック

• 総合商社＝学生に人気の企業
• 営業＝人と接する仕事、社交的な性格

 

などの点から、明るく人に好かれるようなキャラクターであることを予想します。

 

「23歳＝社会人では一般的には若手層」

などの点から、新社会人のようなフレッシュさも加わると良いでしょう。

 

性格から連想する 

「甘え上手な後輩、可愛い見た目」 

という指示をいかして

 

• 甘える仕草として上目使いが映えるように、目が大きくする
• 髪型はパーマなどを取り入れ、柔らかく人懐っこいイメージ
• 可愛らしさを表現するため輪郭は丸みを帯びさせる

 

などのアイディアが使えそうですね。

 

「柔らかな物腰の自由気ままな猫タイプで、社内のアイドル」 

 

という記述から、スーツをきっちりと着ているのではなくジャケットを脱いでいたり、気崩していたりシャツのボタンを開けてネクタイを緩めるなど 着こなしにアレンジを加えていても良さそうです。

 

一癖ある参考設定のいかし方

「実はライバル企業の社長の一人息子。潜伏して主人公の会社をリサーチする、したたかな一面を持つ。」

 

この情報により、今までの明るくフレッシュだったイメージが仮の姿、作為的に作られたキャラクターである可能性が出てきました。

口元だけ不敵な笑みを浮かべる、目だけは笑っていない、ずる賢そうな表情などの演出がプラスされると、キャラクターの深みが出るでしょう。

 

 

指示書が的確に理解できれば仕事は面白い！

このように、キャラクターのポーズや顔だけでなく アイテムやスーツの着こなし方、表情などでキャラクターを特徴付けるとより個性の際立ったキャラクターが生まれます。
指示書という限られた情報から、最大限のパフォーマンスを発揮することを目指しましょう。

 

 

※本記事は、『いちあっぷ』（https://ichi-up.net/）から提供いただきました。