キャラクターの描き分け STEP.3 年配者の顔を描く【ペンタブ練習】
デジタルでのお絵描きやペンタブに慣れていない初心者の練習にピッタリ! マンガのキャラクターの描き分けができるようになるためのポイントを丁寧に紹介します。第3回は、特に描き分けが難しい年配者顔の描き方です。講座を見ながら手持ちのお絵描きソフト・アプリを使って練習してみましょう! (講師:平井太朗)
はじめに
何人ものキャラクター、と考えたときに「家族」というキーワードはとても重要。
おじいちゃんおばあちゃん、両親に兄弟。いろんな年代のキャラクターを描けるようになると「家族」を描けるようになります。
今回は、老人までのキャラクターの描き分けを説明します。
STEP2では自分の描いているキャラクターの「自分だけのバランス」を確認して、赤ん坊から成長する過程を見ました。
成長を終えて「年齢を重ねる」段階に達すると骨格ではなく皮膚など表面的な物にも大きな変化が現れてきます。
青年の頭部のバランス
1.青年の顔のバランス
高校を卒業して、大学生や新社会人として活躍し出す頃の年代です。この辺りから身長も伸びが完全に止まります。
頭部もこれ以上大きくなることはなく、唯一変化するのはアゴの部分でしょう。
女性のアゴはあまり変化がありませんが、個人差はありますが男性はこころもちアゴがしっかりしてきます。
高校生との違いはそれほど顕著に出てくる年代ではないので決め手は「服装」や「髪型」です。
一般的には、高校生<大学/専門学生<社会人の順番で使えるお金の額が増えていきますので(あくまで一般論として)、年齢に合わせて髪型をセットしてあげたり、高そうな服を着せてあげたり、といった工夫で年齢を感じさせることができるでしょう。
できれば、駅など人が集まるところで人間観察をしていろいろ視覚情報を集めるのもいいですよ。
あくまで公共の場所なので迷惑のない程度に。
2.青年の顔を描いてみる
もうほとんど違いはありません。今回は象徴的にアゴをしっかりと描いてみましたが、いつまでもアゴがシュッと細い男性だっています。あくまで参考程度に覚えておいてください。
普段自分が描いているキャラの目鼻や口の描き方で青年を描いてみましょう。
高校生の頃よりはちょっと人生経験も豊かになってきていますが、正直数年の違いではまだまだ顔に年輪が刻まれるほどではないので、これくらいの微妙な差が一番描き分けが難しいところです。
とにかく作者が「彼は23歳新社会人!」と思い込むことが大切です。本当です。
3.頬のポイント
少年から青年になっていく段階で、大きく変わってくる部分は「頬」です。
子供っぽさを出すには「頬」のラインを丸く。大人っぽさを出すには頬のラインを少しかたく(引っ込めて)描きます。
全く同じ顔でも輪郭の違いでずいぶんとイメージが変わってくるんですよ。
逆に「かわいらしさ」を出したいときは頬を丸く描くという手法もあるわけです。
平井太朗先生のコラム 「ちょっとの違いが難しい」
おじいちゃん、おばあちゃんを描こうと思うと、いっそ簡単だったりします。
「しわ」を描けばいいんです。簡単に雰囲気が出るでしょう。
主人公が高校生だった場合、そこにおじいちゃんが出てくる場合は「おじいちゃんとお年寄りらしく」描くことで、年齢差を演出できます。
でも、お兄さんやお姉さんが「大学生」や「社会人2~3年生」という世代の場合は、高校生との「差」は小さくなります。しわが刻み込まれた大学生はそれっぽく見えません。
さあ、困った!
技術的に少しずつ加齢していくように描き分けることはできます。
が、17歳と20歳の差は本当にわずかな物です。見ている人が気付かない差かも知れません。
現実でも、お姉さんより貫禄のある弟さんとか、お兄さんよりしっかりした姉御肌の妹さんとか、いますよね(笑)
そこで重要になってくるのは髪型や服装などのアイテムです。一般的には高校生より大学生の方が服装やお化粧にお金をかけます。まあ…例外もモチロンありますが。
もうこうなってくると力業です。
正直に言いましょう、僕の場合は高校生と大学生くらいなら服装とアイテム(雰囲気重視!)で描き分けます。あとはちょっとした表情。
若いほど元気いっぱいです。ならばちょっと年上は落ち着いた雰囲気にしてあげればいいんです。あくまでもキャラクターの基本的な性格付けの範疇内で。
2~3歳違いの年齢差なんて、キャラの顔の造形での描き分けは正直あきらめたって何とかなります。だって、見てる人が気付かないくらいの違いなんですもん。
例えば、高校の演劇部あたりで「先生役」を高校生がやっていたりしても、スーツを着せて、髪型をセットすればそれなりに見えたりします。そして、ここからが重要。
周りの登場人物がそのキャラクターを「先生」のように扱うんです。
バックグラウンドも含めて1枚で表現するイラストなんかとは違って、マンガ作品ではストーリーの内容や演出でそれを表現することができます。
思い出してみましょう。違うマンガ作品の同い年のキャラクターを集めてくると、「同い年に見えない」キャラのオンパレードなんてことはないですか?
マンガ作品は、作品の中に「世界を作る」ことも大切。その世界のなかでそれぞれのキャラクターを設定した年齢にしてあげればいいんです!
中年(前期)の頭部のバランス
1.中年(前期)の顔のバランス
中年という年齢層は定義が曖昧です。
30代は「青年」と呼ばれることもありますが、高校生くらいの人たちからすると「えー、30代は中年でしょ?」と軽くあしらわれたりします。
脅すわけではありませんが、30歳なんてあっっと言う間ですよ。ええ、とてもあっという間です。
ということで、ここでいう中年(前期)とは30代前半くらいをイメージしてください。
この年代、もはや成長することはあり得ません。そこで何が起こり始めるのか。…そうです、衰え始めるのです。
とはいえ30代は瞬発力をのぞけば体力は人生のピークを迎える頃です。骨格や筋肉はそれほど変化しません。一番わかりやすく衰えるのは「肌」なのです。
肌は弾力と張りのある状態から、だんだん伸びたゴムの様に弾力が無くなっていきます。
30代くらいでわかりやすい変化の部分は「目の周り」と「頬」です。この部分の弾力が無くなり膨らみが少なくなりはじめます。
この辺りで口の周りにほうれい線というシワを入れてみたくなるのですが、あまり激しく入れると急激に年老いて見えてしまうので、もっと年齢が上のキャラも作中に出したいときはバランスを考えておきましょう。
アウトラインだけ見ると、アゴがずいぶんとしっかりしているように見えますが、これは骨格が変化したのではなく、頬が痩せて重心が下に降りてきている状態です。
贅肉が付きやすくなってくるのもこの年代ですから。
2.中年(前期)の顔を描いてみる
普段自分が描いているキャラの目鼻や口の描き方で描いてみましょう。
中年になってくると上下のまぶたが少しくたびれてきます。目がくっきりぱっちりしたイメージは若々しさを、目元が落ち着いてくると大人びたイメージを感じさせられます。
3.頬のポイント
加齢と共に上下のまぶたが落ち着くと共に、もうひとつ「頬」の肉が落ちて丸みがだんだんと無くなっていきます。
中年を過ぎると、アゴのお肉もたるみはじめ、アゴのラインにも変化が見られるようになります。
中年(後期)の頭部のバランス
1.中年(後期)の顔のバランス
40代から50代を中年後期としておきましょう。そろそろ人生も折り返しです。
顔に人生の年輪が顕著に表れ始めます。中年(前期)の特徴を少し大げさにつけてみましょう。
頬の肉が少なくなり、アゴの肉がたるみます。ちょっと細かい所では、上唇も加齢につれ膨らみが失われていくので、口元が少し下がったように見えます。
口元のしわを「ほうれい線」と言いますが、この線を入れると簡単に「年老いて」見えます。
しかし、簡単にこのラインを入れてしまうと行き過ぎてしまうことも。
バランスを考えるときは、「目元」に重点を置いて、まぶたを少し降ろしたり、目の下のしわを描くことでも加齢の表現が可能です。いろいろ試してみましょう。
まぶたと頬のライン、そして口元のバランスを調整します。アゴの骨は成長したり移動しませんが「お肉」が重力に従って降りていっているのです。
2.中年(後期)の顔を描いてみる
普段自分が描いているキャラの目鼻や口の描き方ではそろそろ間に合わなくなってくるかもしれません。まぶたを落とした描き方を練習するとこの辺りの年代のキャラが描きやすくなっていきます。
ココでもシワをもっと描くかどうかは他のキャラとのバランスで調整しておきます。
3.頬のポイント
頬はどんどんやせこけていきます。アゴから首にかけてのラインも変化しています。目の描き方も少し変えてみましょう。
ちょっと目が小さくなったとしても、デフォルメの範疇だと思ってイメージ優先で!
壮年の頭部のバランス
1.壮年の顔のバランス
還暦(60歳)を越えて、70歳前後を壮年としておきましょう。
ここからは逆に描きやすい領域です。「年老いた」イメージをふんだんに盛り込めばいいからです。
顔には人生の年輪が深く刻まれ、たるんだ肌が垂れていきます。唇の膨らみなどもかなり少なくなっています。まぶたがたるんで目にかかってくるので、目は小さくなったように見えます。
シワは難しいなあ…と思ったら、お年寄りをよく見てみましょう。身近にモデルがいなければ外に出かければいいんです。
人それぞれいろんなシワが刻まれているので「ああ、割と自由に描いてもいいんだ」と自信を持てるはず!
2.壮年の顔を描いてみる
中には「若い頃、目が大きかったキャラが年老いたら目が小さくなるなんておかしい!」という悩みを持つ方もいらっしゃいます。
たしかに眼球そのものは変化はほとんどありませんが、まぶたが垂れてくることで相対的に目が小さく見えてきます。目の大きなキャラを描いている人も、小さくなった目をデフォルメしている、と考えればイメージ優先で自由に描いてもいいと思えるようになるかもしれません。
全体的にどんどん下がっていきます。アゴのラインが複雑になるのは頬の肉が垂れてアゴのラインに変化を与えるから。まぶたも下がってくるので、目も小さく見える様になります。
さあ、思いっきりシワを描いちゃいましょう。口の周りと目元の横と下の部分、そして額。この辺りが印象的にシワが入るところです。
もちろん自分のイメージで描いていいのでこの例に捕らわれすぎることはありません。
3.頬のポイント
とことん垂れていくものが垂れていっちゃっていますね。歳を重ねるとアゴのありかがはっきりしなくなってくるのは、あごに垂れてきた肉がついてしまうからです。
この例では目も少し変えてしまっていますが、らしく見えるのであればそれもアリでしょう。
(講師:平井太朗)
※この講座は、「ワコムクラブアカデミー」初級講座に掲載されていた内容を描きナビ編集部で一部抜粋・編集して掲載しています。