服のシワはどこにできる?身体の特徴と布の質感で描き分けよう!
「ワンピースのヒラヒラ感がでない」「なんだかダボっとした感じになる」など、洋服の描き方に苦戦していませんか? それは、服のシワがどこに生まれ、何を表現しているのか理解できていないからです。ポイントを押さえれば、さまざまな素材の服を表現することができます。そこで今回は「服のシワの描き方」についてご紹介します。
まずは、裸の人物に服を着せるところから
慣れないうちは、描こうとする裸の人体の上から服を着せるようにしましょう。
というのも、服は人体の凹凸に影響を受けるので、いきなり服を描き始めるより、裸体に着せた方が分かりやすいのです。
人体が苦手な人は、
『キーワードは○頭身!「比率」と「重心」を理解して理想のボディを描く方法』
も参考にしてみてくださいね。
余分な布が引っ張られてシワになる
例えば今、あなたはTシャツを着ていたとしましょう。もしピチピチのTシャツを着ていたなら、シワがほとんど見受けられないでしょう。
逆に、大きめのシャツを着ていたら、あちこちにシワが見られると思います。
つまり、服のシワは体の出っ張った部分には現れず、余った布がたれることで生じます。布は出っ張りにひっかかって、上から下に引っ張られるのです。
体の出っ張りと布の引っ張りを意識すれば、正しい位置にシワを描くことができます。では体の出っ張りごとにポイントを整理していきましょう。
■肩は脇から肩筋の終わりにシワができる
肩は出っ張りになりますので、シワはありません。逆に手を横に広げるとわかりますが、脇には袖の余った部分がたるんでいます。そのため、脇のあたりから肩筋にかけて細かいシワが走ります。
腕の入っている袖の部分は中身があるのでシワになりませんが、袖先の方に向かって引っ張られるようなシワができます。
■肘は曲がっている内側にシワができる
肘を曲げたとき、出っ張る部分は布が引っ張られるためシワがありませんが、曲がった内側に余った布が寄るのでシワが生まれます。この際には肘の出っ張りへ布が引っ張られるので、内側から外側へシワができます。
■胸は出っ張りのすぐ下に細かいシワができる
特に女の子を描く場合ですが、胸の出っ張りは布をひっかけるのでシワになりません。しかし、胸のすぐ下あたりは布が余るのでシワができます。
またウエストを締めるような服の場合、服がより引っ張られて体に密着するので、谷間をくっきり見せるような三角形の寄りシワが生じます。
■ズボンは股に向かってシワができる
足の入っている部分は布がつっぱるのでシワになりません。チャックとホックなどで留めるため、股に向かって布が引っ張られ、シワが生じます。
シワは質感を伝えている
「これでシワを上手に描けるぞ!」と言って、何でもかんでもシワを入れてはいけません。
というのも、シワは服の質感も伝えているのです。
厚手のブレザーやジャケットに細かい線がたくさん入っていると、ダボダボでシワだらけのジャケットになってしまいます。
体にぴったりした水着に大きなシワが入っていると、ユルユルの水着に見えてしまいます。ユルユルの水着では、泳いでいる最中に脱げてしまうかもしれませんよね。
厚手の服は「直線的で大きなシワ」、薄手の服は体の線を意識しながら「細かいシワ」、という具合に、服の素材によってシワの密度を変えるようにしましょう。
シワを描かなくても、人は描ける?!
チビキャラや、ギャグマンガなど、極端にデフォルメされたイラストを思い出してください。そんなにたくさんのシワは描かれていませんよね。
人体さえしっかり描けていれば、シワを忠実に描かなくてもビシッと決まる絵は描けるのです。
もちろん繊細な絵柄の服や体のラインをしっかり描きたい場合には、シワをしっかり描くことが必要です。
しかし人体をしっかり描けないと服のシワも上手に描けないので、まずは人体をしっかり描くように心がけましょう。
さまざまな質感で練習すべし
このように服のシワは、人体の出っ張りと布の引っ張りから生じ、服の質感を表現します。
練習する場合には自分でさまざまな質感の洋服を着て、どこにシワがあるのか確認すると良いでしょう。
特にスーツのジャケットは1日着て脱ぐと、肘や脇にシワが残っています。
後でどこにシワがついているか確認してみると、「あ、ここにシワがつくのか」と実感できるでしょう。
同様に、Tシャツやワンピース、ワイシャツ、厚手のニットなど多様な質感の布を実際に見て、着て、模写することで、シワの生じ方のパターンを学ぶことができます。
練習にデジタルツールを使用すると、下書きから線画、シワ入れをレイヤーに分けて描くことができるので、後から全体のバランスを見てシワを減らしたり増やしたり、調整や修正が楽にできます。
服のシワは苦手だと思っているかもしれませんが、絵に説得力を持たせるために必要な表現です。
日々の観察と練習で克服していきましょう!
(制作:ナイル株式会社)
(執筆:哀川 空)
(イラスト:武田ほたる)