光と影は表裏一体!絵の幅が広がる「影」の付け方
立体物を描く上で欠かせないのが「影」の存在。しかし、「陰影をつけたいけれど、なんだかパッとしない……」など、描くポイントをつかめていない方も多いでしょう。それは「光」の位置が理解できていないからなのかもしれません。今回は、漫画やイラストにおける影の付け方を紹介します。
光と影は表裏一体と心得よ!
「影の話をしているのに、なんで光の話?」と疑問に思うかもしれません。しかし、光がなければ影は生まれないのです。
■光が当たらないところに影ができる
光は直進するものです。光源が真上にあれば真下に向かって進み、左斜め上にあれば右斜め下に向かって進みます。
その光の進路を物体が遮ると、直進していた光は物体に反射されて進めなくなります。この結果として影が生まれます。
当たり前のことかもしれませんが、このことを理解すれば影を描く場所がおのずと分かります。
光が当たったときに、光を遮るものの下や、後ろに影ができますね。
たとえば太陽の真下に立っている女の子がいるとします。この女の子に影を描くなら、どこに描けばよいでしょうか。
まず足元には影ができそうですね。
他にも髪の毛の影が額にできるでしょうし、スカートをはいているならその下からのぞく太ももにも影ができそうです。
さらに顎の影が首元に、鼻の影が鼻の下になど、細かい影はたくさんできそうではありませんか?
■光源から離れれば、影は濃くなる
では、できた影を全部黒でベタ塗りすればよいかといえば、そういうわけにもいきません。影にも濃淡があります。
もし手元にスマートフォンでも懐中電灯でもあれば、試しに点灯してみてください。
拳に光を当てると、光の当たっている側は明るく、光の当たっていない裏側は暗く陰っていますよね。
その中間あたり、側面の影はどうでしょうか。薄暗い影になってはいませんか?
デフォルメされた絵では、光と影で線をきっちり区切っている場合があります。
しかし、実際の影にはグラデーションがあり、光源に近い影は薄く、光源から離れた影は濃くなるのです。
そのため、リアルな絵に近づけるのであれば影のグラデーションも意識しましょう。
影を入れるタイミングは?
「影って、どのタイミングで入れればいいの?」と疑問に思う方もいるでしょう。
使用するツールや、お絵描きのスタイルにもよりますが、多くの場合はアナログ絵とデジタル絵でタイミングが異なります。
■アナログ絵は線画後の色塗り中に
モノクロマンガの場合、影はトーンを貼って済ませているという印象があるかもしれません。
しかし、例えば暗い場所にいるなど、暗さを演出する場合には線画の時点で黒い影をベタ塗りすることがあります。
また、色鉛筆などを使う場合は光の当たる部分をあまり塗らず、影の部分を濃く塗ることで影の演出をすることがあります。
そのためアナログ絵の場合は影を影として塗るよりも、色塗り工程の一環として一気に塗ってしまうのが一般的です。
すでに塗った色の上から灰色や少し濃い色で塗る方法も有効です。
このように全体の色味を見ながら、自然で優しい色合いを出せるのはアナログ絵の強みといえるでしょう。
ただし塗っている最中に失敗しても取り返しがつかないので、慎重に塗ることが重要です。
■デジタル絵はベタ塗り後に影だけつける
デジタル絵の場合は、レイヤーをわけることができます。下書きから、線画、単色でベタ塗りした後に影や光をつけるのが一般的です。
下書きレイヤー、線画レイヤー、単色レイヤー、影レイヤーと、レイヤーを分けるので、失敗してもレイヤーごと削除すれば元に戻すことができます。
ただしレイヤー数が膨大になるので、どれが何に該当するのかわかりやすくしておかないといけません。
もちろん、人によってはラフ画や線画の時点で影を塗ってしまうケースもあります。人によってやりやすい方法は異なります。
そのため一番良いのは、色々試してみて、自分のやりやすい方法を見つけることです。
デジタル絵ならツールをフル活用できる
デジタルツールの場合、線を描く以外にもさまざまな機能があります。
レイヤーで分割して描けるので、レイヤーモードを変更して色塗りをすれば、幅広い印象を抱かせるような色塗りができます。
レイヤーの明度や彩度を比較しながら合成することができるため、コントラストや色味の調整が簡単に行うことができるのです。
他にも、ブラシツールといって、さまざまな質感の筆やペンで絵を描くこともできます。アナログ絵、デジタル絵、双方で演出方法が異なりますが、自分の得意なやりやすい方法を探してみてくださいね。
(制作:ナイル株式会社)
(執筆:哀川 空)
(イラスト:aom)