背景の半分は「建物」でできている!ビル・建物はこう描くべし
自然物は上手く描けても、きっちりとした線の建物が上手くいかないことはありませんか? そのような悩みを持つ場合に多いのは、建物の大きさの感覚や材質がつかめていないことが原因です。今回はイラストやマンガにおいて、ビルなどの大きな建物の描き方のポイントについてご紹介します。
スケールを人間に合わせるべし
「建物の大きさがよく分からない」と、ついつい建物を大きく描きすぎてしまったり、小さくしすぎてしまったことはありませんか?
建物は人間が中に入ることになります。つまり、自分の描いた人間の大きさを基準にしなければなりません。
人物の身長が150cmなら、腰の辺りにドアノブがあるでしょう。
ドアの高さも2mくらいはないといけません。大きすぎては奇妙ですし、身長ギリギリでは頭をぶつけてしまいます。
キャラクターの大きさによって、出入りが可能な大きさを心がけましょう。
むろん、人物を先に描くとは限りません。建物の大きさを強調したいなら建物を大きく、人物を小さく描くと迫力が出ます。演出にあわせて描き方を変える必要があります。
デジタルツールは拡大縮小ができるので、大きさのバランスは全体を見ながら調整することも可能です。自分の描き方のスタイルにあわせて、ツールは選ぶようにしましょう。
近くは太く大きく、遠くは小さく細く
大きさが分かったところで、今度は遠近感に注意しましょう。
基本は「近くは太く大きく」「遠くは小さく細く」です。
遠くの景色を見ると、大きな建物も小さく見えますよね。これを絵の中でも表現します。
「なぜ太さも関係あるのか」というと、はっきり見えるか否かの問題です。近いものの方が、輪郭もくっきりはっきり見えますよね。
大きさはもちろん重要ですが、より一層遠近感を出すためには線の太さも調整しましょう。
建物の質感を伝えるために
「線だけ描いたけど、それっぽくならない」という方は、質感をお忘れではありませんか?
建物は壁や柱、ガラス、扉、階段などなど、多くのマテリアルによって構成されています。色を塗り、影をつけるだけでは、それぞれの質感が伝わらないのです。
例えば木造の建物を描くなら、木の茶色はもちろんですが、木目がありますよね。建てられてから時間が経っていれば、汚れの一つや二つはあるものです。
ビルであればコンクリート造りもありますが、都心のオフィス街にはガラス張りのビルもありますよね。質感を描かないと、そのビルがどんな素材でできているのか伝わりにくくなってしまいます。
アナログ絵であればトーンを貼る方法もあるでしょう。デジタル絵であれば、テクスチャと呼ばれる素材があらかじめそろっています。
これは、木目であれば木目、コンクリートであればコンクリートの模様をベタ塗りすることができる便利な素材です。
他にもブラシやスタンプも用意されているので、自分の描きたいものにあわせて利用してみましょう。
線はフリーハンドと直線を使い分けるべし
便利なデジタルツールでは、まっすぐな線を簡単に描けますが、場合によってはフリーハンドで線を描きましょう。
というのも、無機質な印象になりやすいからです。
まっすぐな線はビル街やコンクリートを描くには良いですが、例えば建築されてから年月が経過している場合は表面が少し欠けたり、風化したりしていてもおかしくありませんよね。
描く建物をどんな建物にするのか決め、それにあわせて描き方も変えてみましょう。
絵のリアルさは細部に宿るもの
建物について、特に人工物の場合は頭の中で想像するより、実際の写真を見ながら描く方がよいでしょう。プロの漫画家でも参考資料を使っているものです。
何を描くにも言えることですが、リアルさは細部に宿るものです。
ムラや溝、反射光、木目などの模様、汚れ、ヒビ、立体感などなど、気にし始めればたくさんの部分を気にしなければなりません。
もちろん、絵は写真ではありませんから、デフォルメされるものです。
どこからどこまでをリアルにし、何を重要視するのか、自分の表現したいものと相談しながら描いてみてくださいね。
デジタル・アナログ双方で便利なツールがたくさんあります。使用する素材を選びつつ、練習して画力をあげていきましょう。
(制作:ナイル株式会社)
(執筆:哀川 空)
(イラスト:ゆうこ)