表現したい世界を描こう!Mika Pikazoさんがコンセプト&ラフ工程を解説!
視線を釘付けにするイラストを描くためには、コンセプトやラフをしっかり練ろう! 人気イラストレーターMika Pikazoさんがどのようにラフを描き起こしていくのかを解説します。 2016年4月21日発売の『表現したい世界を描く!CLIP STUDIO PAINT PRO イラストレーションテクニック』から特別掲載!
1.テーマをもとにイメージをふくらませる
「お絵描き少女」を絵のテーマとし、ファンタジー要素のある世界観を表現してみることにしました。
アレンジセーラー服と大きな帽子を被ったおしゃれな女の子が、ペットを連れているという設定でキャラクターのイメージを膨らませていきます。
2.ラフに描いて構図決め
構想がまとまってきたら、描き込む前に、ざっくりとラフに描いて構図決めをしていきます。
メインモチーフをどのように配置するかで絵の印象や与えるストーリー性が変わってくるので、いろいろ描いて試してみるのが良いと思います。
この構図はやや斜め上からパースをつけることで、躍動感やこれから物語が始まるような印象を与える効果を狙って描いてみました。
3.ラフ案を練る
他にも、ペンとスケッチブックを持った女の子を中心に、画材や家具、動植物が取り囲んでいるという案を数点描きました。
ラフ案を練るときは、「ここにあれを置いたらどうなるかな?」と思いつくままにガリガリと描いていきます。
時間をかけても納得するものができなければ、スパッと一から次のラフに向かうと気持ちの切り替えができ、別のすてきな案が浮かんできたりします。
上のラフ案は、女の子をメインとして背景にいろいろな画材やモチーフを散りばめ、抽象的で且つデザイン的な構成になるよう意識して描いたものです。
下のラフ案は、画材などに囲まれたおしゃれな部屋に女の子が座っていて、空間を感じる構成になるようにしてみました。
1枚絵の構成を練るときはこのように、空間を描いてストーリー性を盛り込むパターンと、敢えて説明的な要素を省き、キャラクターの個性を全面に出すパターンが考えられると思います。
今回はシーンを細密に描くのではなく、キャラ自身が前に出るようなインパクトのあるイラストを描きたいと思ったので、上のラフの構成を採用することにしました。
4.アイデアを落とし込む
方向性が決まったら、さらに最初のコンセプトに添うようなアイデアを、どんどんとラフ案に落とし込んでいきます。
今回は編集部から「全身を入れてほしい」というリクエストがあったので、ポーズを変えながらさらに二案描いていきました。
キャラクターのポーズは、背景が無くても、キャラ単体で見栄えの良いポーズにすることがポイントだと思います。
背景が白になっても、そのキャラの勢いや想いが伝わってくるような絵は、後から背景を描き加えるときにも悩みが少なく、サクサクと描くことができます。
最終的に、画材を背景にして、女の子が飛び出してくるような元気なポーズの構成でいくことにしました。
男女問わず好きになってもらえる絵になるように意識しつつ、当初のコンセプトでもあったファンタジー要素をプラスしています。
女の子を取り囲む背景は、画材がまるでそこにあるかのように立体的に描くか、ポスターのように平面的にポップに描くかの二択で迷いましたが、今回は平面的な構成を選択しました。
元々私がグラフィックデザインを勉強していて平面的な構図が好き、というのも理由の一つではありますが、カラフルな色を使った絵を描くときは、人物や素材そのままの色合いを活かすことができる平面的な構成を採用することが多いです。
5. キャラクターが一番目立って見えるような配色を探る
色もラフ絵の段階でざっくりと当てていっています。今回はキャラクターが一番目立って見えるような配色を探りながら全体の色を決めました。
キャラクターの配色を重めに設定し、はっきりとした色を組み合わせることで中心部分が目立つように意識しました。
モノクロな服装にマゼンタ、オレンジ、青を合わせ、シルエットでかわいいと思ってもらえるような飽きのこない衣装デザインを目指しています。
6.色決めのポイント
色決めのポイントは、この色をメインに置きたい! というキーカラーを決め、それ以外の色はあまり主張しすぎないようにすることが大切です。
例えば暖色の赤と寒色の青を組み合わせる際、赤を主張させたければ合わせる青は暗い色を選び、青を主張させたければ赤よりも明るい青を選ぶ、といった感じです。
暖色は暗くすると濁った色になりがちなので、寒色を目立たせたい場合は暖色を暗くするのではなく、暖色より明るい寒色を選択する、という方法にしています。
背景にも色を置いていきながら、全体的な印象はどうか、キャラが目立っているか、背景の小物が重くなりすぎていないか…などをチェックし、要素や余白を調整しています。
微調整ではありますが、印象的にはかなり重要な工程です。
CONCEPT & ROUGH
※本記事は初級者からもう一段レベルアップしたい読者に向けたイラスト技法解説書、『表現したい世界を描く! CLIP STUDIO PAINT PRO イラストレーションテクニック』(ビー・エヌ・エヌ新社)のからの特別版抜粋記事です。
記事内の構想から、この後どのようにして完成イラストを仕上げていくか気になる方はぜひ実際の書籍をチェックしましょう!
Mika Pikazoさんをはじめ、各作家さんが試行錯誤しながら培った、“描きたい絵を思い描いたとおりに仕上げるためのコツ”が満載です!
『表現したい世界を描く!CLIP STUDIO PAINT PROイラストレーションテクニック』