shichigoro-shingo先生(1)密度のある質感の描き方とそのコツ
「デジタルコンテンツEXPO2015」にて、イラストレーターshichigoro-shingo先生のライブドローイングが開催されました。今回は、ライブドローイングの作業の流れを確認しながらshichigoro-shingo先生の描き方、特に密度のある質感の描き方とそのコツに迫っていきたいと思います。
はじめに
shichigoro-shingo先生は、イラストレーターとしてファッションブランドや音楽レーベルとのコラボ、広告イラストなどを手掛けるなど幅広くご活躍されており、ASIAGRAPH 2011では、最優秀作品賞を受賞されています。モード学園のTVCMなどで、見覚えのある方も多いのではないでしょうか。
「デジタルコンテンツEXPO2015」内で開催された「ASIAGRAPH 2015 in TOKYO」では、招待作家として「idaten」を展示すると共に、「CGアートギャラリー」にてライブドローイングを4日間にわたり行っていただきました。
そしてこちらが、今回制作していただいた作品です。
朽ちた金属や汚しのある質感など密度が濃く重厚感、インパクトがある作品です。
このように密度のある質感、作品はどのようにして生み出されているのでしょうか。
デジタル作画の特徴を生かした描き方
今回の4日間にわたるライブペイントを拝見して、shichigoro-shingo先生の画力、発想力がすばらしいのは言うまでもないのですが、先生の描き方には一定の規則的な流れや型が存在しているのではないかと思いました。
特に、このような重厚な質感と密度を制作するコツは
デジタル作画の特徴を生かした描き方
にあるように感じました。
デジタル作画の特徴を生かした描き方とは?
それでは、一定の規則的な流れ、デジタル作画の特徴を生かした描き方とはどのようなものでしょうか。おおまかなに作業の流れを確認した後、その描き方をみていきましょう。
まず、この作品は「顔→髪→服→背景→アクセサリー→仕上げ」の順で制作されています。
そして、どの顔、髪などパーツでも若干の順序の前後はありますが、
「線画→テクスチャの適用→明暗の追加→カラーの追加→テクスチャの柄を生かした描き足し」
といったレイヤーを駆使したデジタルならではの作業を行っていました。
さらに、描き込みにもレイヤーを使用した
「新規レイヤーを作成→レイヤーの合成モードや透明度を変更→描き込み→ベースとなるレイヤーとの結合」
といったデジタルならではの作業を繰り返して、レイヤーを結合して整理しながら、描き込みを行うことで密度を上げていく方法がとられていました。
直感的な描き足し
レイヤーやレイヤーの合成モード、素材やツールの組み合わせや描き込みによって、現場で生まれた新たなイメージも、即座にテストできることがデジタル作画の特徴の一つかと思います。当然ですが、デジタル作画では作者のイメージと合致するまでトライ&エラーを幾度となく行えます。
今回のライブペイントでいえば、地のテクスチャレイヤーと描き込みを行ったレイヤーを掛け合わせながら新しいイメージを作りだし、別レイヤーで直感的に質感を描き加えています。shichigoro-shingo先生が、常にイメージを膨らませつつ作画を行っているように感じました。
作業の流れをまとめると下図のようになりました。
手順の前後や若干の差異はありますが、デジタルの特徴を最大限に使用して、常に新しいイメージを加えながら効率よく作品の密度を上げていることがわかるかと思います。
デジタル作画では、レイヤーをどのように使用するかが重要なポイントなんですね。
駆け足となりましたが、いかがでしたでしょうか。
今回は、ライブドローイングの作業の流れを確認しながらshichigoro-shingo先生の描き方、特に密度のある質感の描き方とそのコツに迫っていきました。
次回は、具体的な作業の流れを確認しながらshichigoro-shingo先生のデジタルの特徴を生かした描き方を学んでいきたいと思います。
Shichigoro-shingo
イラストレーター
1977年、神奈川県生まれ
2010年よりインターネットを中心に創作活動を開始。
機械と生命が融合した様な独特の世界感が好評を博し、
世界中のファッションブランドや音楽レーベルとコラボをするなど、
インターナショナルに創作活動を展開。
日本国内でも2015年に学校法人モード学園 TVCM・広告イラストを手掛け話題に。
ASIAGRAPH 2011 最優秀作品賞 受賞。
Web:http://shichigoro.com/
Twitter ID:@shichigoro756