同人誌のキホン⑤同人誌の原稿用紙は表紙と本文で違う?
表紙と本文でまさか同じ原稿用紙を使おうとしていませんか? 『同人誌のキホン』第5回では、同人誌を描くための表紙と本文の原稿用紙の違いや用語について解説します。
表紙用の原稿用紙
表紙用の原稿用紙は、第2回の「表紙と本文って?」でも説明したように、基本的には表紙と裏表紙を合わせて1枚の紙に描いていきます。
単色刷り・2 色刷りの表紙の場合には、本文に使う原稿用紙と同じように A5 や B5 の原寸サイズ+3 ~ 5mm(断ち切り部分)で表紙と裏表紙をそれぞれ1ページずつ作成することもあります。
1枚の紙に描くわけですから、単純計算すると通常の原稿用紙の 2 倍サイズが必要となります。そこに塗り足し(※)分の 3mm ~ 5mm を足したサイズが基本になり、さらにもう 1 つ必要なものがあります。
※塗り足し(断ち落とし)とは、表紙を印刷して裁断したときに多少ズレてしまっても白い部分が出ないように、あらかじめ塗り足しておく部分のことをいいます。
ポイントは「背幅」
紙を重ねて本にした場合に生じるのが、表紙と裏表紙の間の「背」です。単行本や書籍で作品名や著者名が書かれている部分です。紙の厚さとページ数によって変わりますが、20 ページの作品であれば背幅は2mm、40 ページであれば 4mm のように「10 ページにつき 1mm」が目安となります。つまり、表紙用原稿のサイズの横幅は「本文に使う原稿用紙の 2 倍」+「塗り足し×2」+「背幅」となります。
※背幅は紙の厚さによって変わるため「10 ページにつき 1mm」はあくまで目安です。
本文の原稿用紙
本文の原稿用紙は、通常は1ページ単位で制作していきます。
アナログで描く場合、画材店、文房具店、書店などで、画材屋さんなどで販売されている「漫画用原稿用紙」を使用するとよいでしょう。青く内枠やトンボなどがあらかじめ印刷されており、使いやすくなっています。
デジタルで描く場合、同人誌印刷所がCLIP STUDIO PAINTやPhotoshopなどのグラフィックソフトで使用できるテンプレートを配布しています。サイズや色に合ったものをダウンロードして設定しましょう。
以下は、アナログ・デジタルに共通する原稿用紙の基本です。必ず確認しておきましょう。
内枠(基本枠)
内枠の中に文字や絵を収めておくと、本を開いた際に絵や文字をきちんと読むことができます。内枠にセリフや重要なコマをすべて納めることを意識して描きましょう。紙の端までコマを切る「断ち切り」を使用する場合はノド(綴じ位置)に注意しましょう。
仕上がり枠
仕上がり枠は、できあがる本のサイズです(A5ならこの部分がA5、B5ならB5となります。詳しくは印刷会社のWEBサイトで確認してください)。製本した際に、絵や文字が綴じ位置に近いと読みにくくなります。
塗り足し・外枠・トンボ
トンボとは、仕上がりサイズに断栽するための目印となるもので、印刷の予約をする際、印刷会社からトンボ()を何mm取るか指定されます。一般的には3mm~5mmです。仕上がり枠からトンボの幅の間が塗り足しになります。トンボで裁断される枠がある場合は、これを外枠といいます。
ノンブル
ノンブルとはページ数を書いたもので、全てのページについています。印刷会社にデータ入稿する際、ノンブルが付いていることが必須条件となります。従来、アナログの場合は手で書いたり、レタリングシート(上からこすって紙に文字を転写できるシート)を使ったりします。
ノンブルを表示する場所は[内側]、[外側]、[中央]、[隠しノンブル]の4種類があります。
[隠しノンブル]は綴じ位置の近くにノンブルを入れることで、仕上がった本を開いた際にノンブルを見えなくします。ただし、[隠しノンブル]は印刷会社に製本を頼むときのミスの原因ともなり得ますので、避けた方が賢明です。どうしても[ 隠しノンブル]にしたい場合はトンボの位置に気をつけて調整しましょう。
作品制作で気を付けるポイント
ノド(綴じ位置)や内枠を常に意識して制作すると、見やすい同人誌に仕上がります。製本した際にセリフなどが切れてしまう恐れがある原稿などは、印刷会社から確認の連絡があるので注意しましょう。
作品全体のバランスやコマ割りが綴じ位置と合っているかを確認していくといいでしょう。例えば綴じ位置が右の場合、右側を断ち切りにしても多くの部分がノドに隠れてしまいます。効果的なコマ割りとしては、外側の部分を断ち切るといいですね。
また、印刷所には基本的に「完全原稿」を入稿します。印刷に支障がある不具合のある場合には印刷所から連絡が来ますが、内容については不具合なのか演出なのかなど描いた本人しかわからないことも多いため、そのまま印刷されてしまいます。ページの順番が合っているか、セリフが正しい位置に入っているか、など制作中から気をつけておきましょう。
POINT デジタル原稿を入稿する際のファイル形式
紙の場合には、描いた原稿をそのまま印刷所に送りますが、デジタル原稿の場合にはグラフィックソフトから書き出したデータを入稿します。多くの印刷会社はレイヤーを全て統合したPSD、もしくはEPSのファイルを指定しています。少数ですがTIFFの入稿を受け付けているところもあります。
解像度は元の原稿と同じ設定にします。600dpiが最適です。600dpiでPSD形式、もしくはEPS形式のデータなら色深度に気をつけて書き出せば特に問題なく入稿できるはずです。EPS形式で入稿する場合は、文字のアウトライン化を忘れずに行いましょう。
■PSD: Adobe Photoshopのファイル形式で、Photoshop、CLIP STUDIO PAINT、SAIなどの主なグラフィックソフトで対応しています。
■EPS: IllustratorやPhotoshop等の画像編集ソフトで保存・開くことができます。
■TIFF: 解像度や色数の制約が少なく、多くのグラフィックソフトがこの形式に対応しています。ただし、設定によっては他のパソコンやソフトでは開けなくなるので、注意が必要です。
■PDF: Adobe Reader用の形式です。マシン環境に左右されず、文章や画像等を元のレイアウトとほぼ同様の状態で表示できるので、ビジネス文書などによく使われています。
■JPEG :主にWebでの画像表示に使用される形式です。圧縮して容量を小さくするので、設定によっては画像が劣化することがあります。
保存形式については、『知っておきたい!ファイル形式にはどんなものがあるの?』で詳しく解説されています!
<同人誌のキホン講座一覧>
★第1回 同人誌と同人誌即売会について教えて!
★第2回 同人誌の形や印刷についての基礎知識
★第3回 同人誌を「本」にするための構成とは?
★第4回 同人誌表紙印刷の種類と特徴が知りたい
★第5回 同人誌の原稿用紙は表紙と本文で違う?
★第6回 同人誌をデジタルで作る理由
★第7回 同人誌の原稿を印刷所へ入稿する!
★番外編 コピー本の作り方を教えます!