デジタルでイラストやマンガを描くために知っておくべきこと【後編】

男の子のアイキャッチ画像

ペイントソフトはとっても簡単!初心者だからムリなんじゃない…?なんて心配はご無用。デジタルに不安を持っている初心者さんに、ペイントソフトの良い点や何ができるかをお伝えします。絵を描くときのお悩みによって、デジ絵の向き不向きがわかるかもしれません。

 

デジ絵は、具体的にどういう人におすすめ?

イラストを描くのはまったく初めてという人は、手描きである程度練習してからデジ絵を始めるのがいいかもしれません。
デジタルではキャンバス全体を表示したまま描くのが難しいので、通常は描きたい部分を拡大表示して線を引きます。そうやって部分部分を描くうちに、全体のバランスが崩れることがあるのです。

 

元々イラスト初心者はアナログでも描きたいところ(顔や手など)が極端に大きくなりがちですが、デジタルの場合はこの「拡大表示して描く」という特徴のせいでそれが顕著に出てしまいます。この「全体の見えにくさ」に気を付けなくてはいけません。

 

 

「どうしてもデジ絵だとデッサンがくるう」という人は、アナログで全体像がきちんと描ける段階になってから、デジ絵に移行するのがおすすめです。もちろん、はじめからデジタルでサクサク描けてしまう人は、アナログにこだわる必要はありません。

 

逆に、「アナログでどうしても上手く描けない」という人は、デジタルが向いているのかもしれません。
というのも、手描きだと絵が下手に見えるという人には、つけペン(Gペンや丸ペンなど)を使うのが苦手だという方が多いからです。「下描きの時はなんとなく上手く見えたのに、ペン入れしたとたんに無残な絵になった!」という人は、ペンの動かし方を手が覚えていないのではないでしょうか。
つけペンは一定方向にしか線が引けないので、ペンを動かすか紙を動かすかしないとキレイな線が引けません。その動かし方の感覚がわからないという人は、先にペンタブの感覚を覚えたほうが上手くなるのが早いのかもしれません。

 

デジタルもアナログも、どちらにしても道具のひとつですから「こっちが絶対にいい!」ということもありませんので、自分が使いやすいと思ったほうを使っていけばいいでしょう。

 

デジタル環境の普及率と現在の状況

2015年7月に行われた、一般財団法人デジタルコンテンツ協会による「マンガ制作・流通技術ガイド」(http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2015fy/000280.pdf)の報告会で、漫画家のデジタル制作普及率が発表されました。

 

発表によれば、カラー原稿では全体の44%、モノクロ原稿では「フルデジタル制作(作業工程のすべてをデジタル化しているケース)」、「トーン・仕上げのみデジタル制作」の2つのケースを合わせて、全体の45%がデジタル化しているそうです。

 

 

カラー原稿の場合、使用デジタルソフトの第1位は「Adobe Photoshop」でなんと63.3%!

次いで2位は「ペイントツール SAI」で10.2%、3位は「Adobe Illustrator」で9.2%だそうです。「CLIP STUDIO」も3%ありました。
モノクロ原稿の場合の使用ソフト第1位は、「Comic Studio」(CLIP STUDIOの前身ソフトで現在は販売終了)で66%、2位は「Adobe Photoshop」で30%、3位は「Adobe Illustrator」で4%だそうです。

 

いずれも、2012年度の調査を元に集計されていますから、現在のシェア率はここから変動していると思います。

とはいえ、デジタル化が確実に進んでいることを実感できる数字ですね。

 

 

報告会では、デジタル制作においての課題についても言及しています。

 

漫画家さんからは、

  • デジタル作画技術を習得する場所がない、相談できる相手がいない。
  • 手描きの味が出せない。
  • 独学なのでわからないことが多い。
  • アナログの質感が得られない。

 

編集者さんからは、

  • デジタルが苦手なので、本質が理解できていない。
  • デジタルの知識がないと対応できないことがある。
  • 知識不足、保存形式トラブル。
  • (編集者にソフトウェアの知識がないため)進行管理が難しい。

 

などといった声があるそうです。
アナログからデジタルへの移行では、プロの漫画家さんでも戸惑うケースがあるようですね。

 

また、漫画家さん、編集者さんそれぞれ、

  • デジタル技術の高いアシスタントが少ない。
  • デジタル作画ができるアシスタントの確保に困っている。

 

という、アシスタント問題があるようです。

 

しかしデジタル制作の場合は、在宅アシスタントを雇い遠隔で指示ができるというメリットがありますから、デジタル技術を向上させれば、たとえ遠方に住んでいても、憧れの漫画家さんのアシスタントに就ける可能性があるということです。

 

デジタル技術の習得が、アナログ時代にはなかった新たなチャンスを生むかもしれませんね!

 

 

このほか、漫画の流通に関して、電子書籍での海外配信版に向けた課題なども発表されました。

「ドドオオォォン!」などの描き文字を翻訳するため、漫画家さんは別レイヤーで作業しなくてはならない、などですね。

 

ペイントソフトという道具を得たことで、作業が部分的に複雑になることも、操作で迷うこともあるでしょう。

でも、これからの「漫画」の形として、新しい夢や希望になるといいですね。

 

 

ペイントソフトの将来性

紙の雑誌や漫画の出版状況は依然として減少傾向ですが、電子書籍版のダウンロード数は伸びています。comicoやマンガボックス、有名漫画雑誌のwebオリジナル版など、デジタル漫画が活躍する場は広がっています。

 

また、趣味で描くイラストにおいても、同人誌即売会に参加してみたり、pixivに投稿したり、自分のサイトやブログに載せたりなど、描いたイラストを発表する場所はたくさんあります。
こういった場で、今後ペイントソフトを使いこなす必要性はますます増えてくると思います。
ペイントソフトは、アップデートでどんどん成長するものでもありますから、もっともっと自由な表現ができるツールとなるよう、わたしたちが上手に使って育てていきましょう!

 

 

(制作:ナイル株式会社)
(執筆:いしだ わかこ)
(イラスト:アンディ♂)

 

 

 

  • twitter
  • LINE
  • Pinterest
  • Facebook
  • URL Copy
  • twitter
  • LINE
  • Pinterest
  • Facebook
  • URL Copy