『ONE PIECE』の絵の神髄はここに!思わず引き込まれてしまうイラストの描き方とは?
漫画雑誌で「はっ…!」と扉絵に見入ってしまうことがありませんか?そのようなイラストは、単に上手い以上の魅力を備えています。人の心をつかんで離さない魅力は、一枚の画面の中の一体どこにあるのでしょうか? 魅力的なイラストで有名なプロのマンガ家、尾田栄一郎氏のコメントをヒントに、その源を探ってみましょう。
尾田栄一郎氏とは?
尾田栄一郎氏の代表作は、もはや世界中で愛されるマンガとなった『ONE PIECE』。週刊少年ジャンプの扉絵を楽しみにしている読者の方々もいるかと思います。
試しに、単行本の表紙を思い出してください。
あの鮮やかな色使いと、表情豊かなキャラクター達は、絵の向こう側で生き生きとして見えますよね。見知らぬ海へ冒険に繰り出すルフィ達の姿に、ワクワクさせられた読者は数知れません。
尾田氏は絵を描く時、一体どんなことを意識しているのでしょうか?
プロのマンガ家が語る「魅力的な一枚絵のコツ」
尾田栄一郎氏はイラストを描く時に考えていることを、次のように述べています。
“こういう絵が描きたい、と思ったらやっぱり前後のストーリーみたいなものが必要。こんなシチュエーションに放り込まれたら、こいつら何をするだろう? と、必ず考えてから描き始めます”
(『マンガ脳の鍛えかた』より/集英社)
絵はある一瞬を切り取ったものですが、その前後のストーリーまで考えるというのは新鮮なアイデアですね。
例えば、画面に二人の男女が向かい合っていたとします。では、そこはどこで、彼らは今何をしているのでしょう。2人はどんな関係で、どういう風に相手のことを考え、この先どうなるのか。こういうことを考えると、ストーリー性が出せそうです。
さあ、私たちも実際にやってみましょう。
「じゃあ……ここはファミレス。2人は学生で、同じクラスメイト。女の子の方が一目惚れで、男の子は全然気づかない。最初に会ったのは多分、入学式の時で、ベタだけど廊下でぶつかったとか。一目惚れした理由は、昔いじめられていて、その時男の子に助けてもらった過去があった。今日はたまたまファミレスにいたら、男の子が相席を頼んできた」
…こんな設定ではどうでしょうか。今回はとても細かく、具体的に想像を膨らませてみました。
ここで注目していただきたいのが、「考えれば考えるほど、そのキャラクターに深みが出る」ということです。
少なくとも、この想像した中で少女は、「昔いじめられていた女の子が、男の子に助けられて一目惚れ。片思いを続けていた。高校入学時に、廊下でぶつかり偶然の再会。ファミレスで偶然相席になる」という人生のイベントにぶつかっているのです。見た目だけしか決まっていない時の状態より、情報量が一気に増え、表現の可能性がたくさんあるキャラクターになったと思いませんか?
彼女の考えていることがわかると、今後は表情の機微や、色使いなども変えた方が似合ってくるかもしれません。もっと憂いを帯びた表情にしたいなど、さまざまな細部への要求が生まれてきます。
このように、思い描いたシチュエーションでキャラクター達がどう動くのか一生懸命考えることで、細部をどのように仕上げるべきかの具体的なイメージが自然とうまれていくことでしょう。
まさにに、優れた一枚絵は「画面の向こうでキャラクター達が生きている」のです。
息づかいが聞こえる作品に、人は思わず見入ってしまう
一枚絵の魅力は、カラーの美しさや細密さ、絵の上手さだけでは決まりません。いきなりプロのようにはなれませんが、まずは今まで以上に「考えて」描くように気をつけてみましょう。
登場人物達の背景を考え、前後のストーリーを考えれば、人間味も増してきます。彼らの感情や息づかい、はしゃいだり怒ったりする声が聞こえるような絵になれば、それはおのずと読者を魅了する作品となっていくでしょう。
「もっと絵が上手くなりたい。画力を向上させたい」
「もっと魅力的なイラストを描きたい」
そんな風に思っているならば、ぜひ一度、プロの漫画家になったつもりで試してみてくださいね。
(制作:ナイル株式会社)
(執筆:哀川 空)
(イラスト:ゆうこ)